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借地権を相続放棄する方法と注意点をわかりやすく解説|借地権を相続した方

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借地権を相続放棄する方法と注意点をわかりやすく解説

借地権を相続放棄する方法と注意点をわかりやすく解説

相続件数は年々増加傾向にあります。

しかし、マイナス財産や価値の少ない不動産などの相続に不安を感じ、相続放棄を検討する方が増えているのが実情です。

本記事では、借地権を相続放棄する方法と注意点に関して、借地権に強い弁護士監修のもとわかりやすく解説します。

借地権を相続放棄することは可能?

借地権を相続放棄することは、可能です。

但し、相続放棄とは、相続した財産のプラス・マイナスにかかわらず、すべての遺産の相続権を放棄する制度です。

つまり、様々な相続財産のうち、借地権だけを相続放棄することはできません。

借地権を相続放棄する=すべての遺産を相続放棄にする、ということを認識したうえで、慎重に検討しましょう。

借地権を相続放棄する方法

借地権を相続放棄するのであれば、「誰が」「いつまでに」「どこで」というポイントを確認しましょう。

慣れない相続放棄の対応では、書類の不備や期限などのミスが起こりやすいため注意が必要です。

また、放棄可能な期限は決まっているため、なるべく早めの対応をおすすめします。

借地権の相続放棄は誰がおこなう?

基本的には、相続放棄したい本人がおこないます。親・子ども・兄弟などの親族であっても、相続人本人の代わりに相続放棄はできません。法定相続人が未成年の場合は、親などの法定代理人が代わりに申述可能です。

相続人が複数人いる場合に、たとえ全員が相続放棄すると決断しても、まとめてではなく、各々で手続きを進める必要があります。

ただし、本人の申請が困難な場合は、弁護士や司法書士のような専門家へ相続放棄を代行してもらうことも可能です。手続きが面倒・難しいと感じる場合には、検討してください。

費用や対応範囲は異なるため、複数の弁護士や司法書士に話をきき、費用を比較してみましょう。

借地権の相続放棄の期限はいつまで?

相続放棄をする場合は、相続の事実を知った日から3ヵ月以内と決められています(民法915条)。3ヵ月が経過すると、相続放棄をしたくてもできないので、期限内に十分に検討する必要があります。

期限の考え方としては「相続の事実を知った日から」であるため、被相続人が死亡した日とは限りません。

相続人それぞれが、被相続人の死亡の事実を知った日からになります。そのため、相続人が複数いる場合は、各相続人によって、3ヵ月の考え方が異なるケースもあるでしょう。

相続放棄をするにしても、まずは被相続人の遺産をすべて把握する必要があります。遺産の内容が複雑な場合など、全財産の把握に時間を費やす場合など、3ヵ月では時間が足りないケースも少なくありません。

このような場合の措置として、相続放棄の期間延長の申し立てが認められています。延長する場合には、相続放棄の期限3ヵ月以内に、対象の裁判所に申し立てをする必要があります。

ただし、すべての申し立てで、期間延長が認められるとは限りません。例えば「仕事が忙しいから」などの個人的な理由では認められない可能性があります。

認められるケースとしては、以下のような場合です。

  • 遠距離に住んでいるため、必要書類を集めるのに時間がかかっている
  • ほかの相続人と連絡がつかず、遺産分割協議が進められない
  • 遺産が多い・または内容が複雑で調査に時間がかかっている など

上記のような場合に、期間延長が認められやすいので、不安な方は無理せずに申し立てをしましょう。

参考:裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」

借地権の相続放棄の手続きはどこでできる?

相続放棄は、被相続人の所在地を管轄する家庭裁判所で手続きをおこないます。

相続人の所在地ではないため、注意が必要です。被相続人と離れて暮らしている場合は、郵送での申請も可能です。

借地権を相続放棄する流れと注意点

相続放棄は期限が決められているため、事前に流れを把握しておくのが重要です。必要な書類や相続放棄までの流れを詳しく解説しているので、参考にしてください。

借地権の相続放棄に必要な書類

借地権の相続放棄に必要な書類は以下の通りです。

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の住民票の除票または戸籍附票
  • 被相続人の戸籍謄本
  • 相続放棄をする人の戸籍謄本

被相続人と相続人、両方の戸籍謄本が必要であったり、「所在地」と「本籍地」で指定されていたりと、間違えやすいのでしっかり確認してください。

また、本籍地や所在地から遠距離に住んでいる場合は、書類の取得までに時間がかかるので、早めに行動を開始しましょう。

借地権の相続放棄の流れ

借地権の相続放棄の流れは、以下の通りです。

  1. 相続財産の対象を調査する
  2. 相続放棄するかどうかを決める
  3. 書類の提出先となる管轄の裁判所を確認する
  4. 必要書類を集める
  5. 相続放棄申述書を作成する
  6. 管轄の家庭裁判所に書類を提出する
  7. 裁判所からの照会書へ回答する
  8. 相続放棄申述受理通知書が届く

※1~6までの手続きを相続発生を知った日から3ヶ月以内に行う必要があります

まずは、相続財産の調査をおこない、全財産の把握と相続放棄をする必要があるのかを確認します。

預貯金や不動産、株式、借金など、財産が複数に分かれているケースも多く、正確に財産を把握するのに時間がかかります。期限もあるので、なるべく早く財産の確認をしましょう。

裁判所からの照会書とは、以下のような相続放棄に関する確認をおこなうための書類です。

  • 被相続人の死亡を知った経緯
  • 相続放棄をする理由
  • 自らの意思で相続放棄するのか など

照会書を返送し相続放棄の申述が受理されると、相続放棄申述受理通知書が届き、相続放棄の手続きがすべて完了となります。

借地権の相続放棄ができないケース

借地権の相続放棄ができないケースは、以下の3つです。

  • 相続放棄の期限である3ヵ月を超えた場合
  • 相続放棄前に遺産を使い込んでしまった場合
  • 単純承認が成立した場合

3ヵ月を超えた場合は、当然に相続放棄ができなくなります。つまり、法定相続人として、プラス財産とマイナス財産の相続が決定するわけです。

また、遺産を売却したり使い込んだりした場合も、相続したものとみなされ相続放棄ができなくなります。

単純承認とは、すべての遺産を相続することです。具体的には、以下のケースが単純承認に該当します。

  • 遺産の一部またはすべてを使った場合
  • 不動産の所有権移転をおこなった場合
  • 相続放棄の期限(3ヶ月)を過ぎた場合
  • 相続放棄後に遺産を隠していた場合

相続開始の事実が判明した場合、遺産の取り扱いに関して個人で判断するのではなく、借地権に強い不動産業者や弁護士などの専門家への相談をおすすめします。

相続人全員が借地権を相続放棄した場合

相続人全員が借地権を相続放棄する可能性も考えられます。

全員が放棄してしまうと、借地権の権利所有者はどうなるのでしょうか?

相続されなかった財産は、最終的に国庫に納められる決まりで、納めるまでの管理者として家庭裁判所が相続財産管理人を選任します。

ただし、相続財産管理人が選出されるまでは、相続人には遺産の管理義務があります(民法民法940条)。

つまり「相続放棄したから、自分はもう関係ない」は通用しないのです。

借地権を相続放棄するメリット・デメリット

借地権の相続放棄に関するメリットとデメリットを事前に確認し、正しい判断ができるようにしましょう。

借地権を相続放棄するメリット

借地権を相続放棄するメリットには、以下の4つがあります。

  • ①地主とのトラブルを防げる
  • ②ほかの相続人とのトラブルを防げる
  • ③地代や税金を負担しなくてよい
  • ④借地を管理するコストや手間がかからない

それぞれ詳しく解説します。

① 地主とのトラブルを防げる

借地権を相続すると相続人と地主の間で、地代や立退料に関してトラブルに発展するケースがあります。

被相続人と地主が良好な関係を築いていても、借地権の内容を聞かされていない相続人が権利を引き継いだ場合に、トラブルになることは少なくありません。

② ほかの相続人とのトラブルを防げる

相続時の遺産分割協議では、相続人の間でトラブルが発生するのは珍しくありません。

特に不動産のような簡単に分割できない財産は、所有権や持分に関して話がまとまらないと相談に来られる方もいます。

相続放棄をすると、ほかの相続人とのトラブルも避けられます。

③ 地代や税金を負担しなくてよい

相続放棄すると、地代や相続税、固定資産税などの負担が不要になります。

被相続人と地主が、借地権の地代の支払いや期間について取り交わしていても、相続放棄をすれば支払い義務はなくなります。

また、土地を返還する際の解体費用も必要ないため、費用面において大きなメリットがあります。

④ 借地を管理するコストや手間がかからない

借地を相続すると、借地を管理し続ける必要があります。自ら管理する場合は、時間や労力を費やす必要があり、管理会社に委託するとコストがかかります。

相続放棄をすると、これらのコストや労力がかからないメリットがあります。

借地権を相続放棄するデメリット

借地権を相続放棄するデメリットは、以下の3つです。

  • ①プラスの遺産も相続できなくなる
  • ②金銭的な利益は得られない
  • ③後順位の相続人とトラブルになるケースがある

それぞれ詳しく解説します。

① プラスの遺産も相続できなくなる

相続放棄は、すべての遺産を相続できないため、預貯金などのプラス財産も手放す必要があります。

借地権だけを考えて安易に相続放棄を選んでしまうと、損をする可能性もあります。相続放棄を検討する場合は、全遺産をしっかり確認したうえで決断しましょう。

② 金銭的な利益は得られない

借地権を手放すのは、将来的に得られる可能性がある利益を手放すことです。

借地権の建物を所有していれば、賃貸収入や売却益を得られます。それらの利益を手放すのは大きなデメリットになるでしょう。

③後順位の相続人とトラブルになるケースがある

第一順位の相続人が相続放棄をすると、相続人としての地位は後順位である第二順位(親などの直系尊属)の相続人に移ります。そして第二順位の相続人が相続放棄をすれば、次は第三順位の相続人(兄弟姉妹)へと相続権が移っていきます。

事前に後順位の者に相談していなかったために、トラブルに発展するケースは少なくありません。相続人間・親族間でのトラブルを防ぐためにも、相続放棄について事前に相談しておきましょう。

まとめ

借地権の相続放棄は専門的な知識を必要とするため、自ら判断できない場合は迷わず専門家を頼りましょう。

中央プロパティーは、借地権を専門に取り扱う不動産仲介会社です。借地権に関するお悩みやトラブルでお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。

この記事の監修者

塩谷 昌則シオタニ マサノリ

弁護士

弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。借地非訟、建物明渡、賃料増額請求など借地権や底地権をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。

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