【2022年5月施行】借地借家法の改正ポイントまとめ
【2022年5月施行】借地借家法の改正ポイントまとめ

目次
2022年5月の借地借家法改正で、オンライン契約が可能になったのは、主に居住用建物の定期借地権設定契約(借地借家法第22条)と定期建物賃貸借契約(借地借家法第38条)です。
本記事では、2022年5月に実施された借地借家法の法改正が借地人や地主にどのような影響を与える可能性があるのか、具体的な事例を交えながら詳しく解説します。
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借地借家法とは
借地借家法(しゃくちしゃっかほう)は、土地(借地)と建物(借家)の賃貸借契約に関する基本的なルールを定めた日本の法律です。
簡単に言うと、
- 土地を借りて建物を建てたい人(借地権者)
- 建物を借りて住みたい・使いたい人(借家人)
- 土地を貸したい人(借地権設定者・地主)
- 建物を貸したい人(賃貸人・大家)
これらの関係において、契約の内容や期間、更新、権利、義務などを明確にし、弱い立場になりがちな借地権者や借家人を保護することを主な目的としています。
借地借家法ができた背景
かつての民法では、土地や建物の賃貸借に関する規定が少なく、契約内容が曖昧だったり、地主や大家に有利な条件になりやすかったりする問題がありました。
そこで、借地権者や借家人の権利を強化し、長期的な利用を保護するために、特別法として借地借家法が制定されました。
借地借家法の主な内容
借地借家法は大きく分けて「借地」と「借家」に関する規定を設けています。
借地に関する主なルール
- 借地権の種類と存続期間
普通借地権(更新可能で借地権者に有利)と定期借地権(更新なしで期間満了により終了)の2種類があり、それぞれ存続期間が定められています。 - 借地契約の更新
普通借地権の場合、借地権者が更新を希望すれば、地主に正当な理由がない限り更新を拒否できません。 - 借地条件の変更
借地条件が借地権者に不利な場合、裁判所が変更を命じることがあります。 - 借地権の譲渡・転貸
原則として地主の承諾が必要ですが、承諾が得られない場合は裁判所の許可を得られる場合があります。 - 建物買取請求権
借地契約が満了した際、借地権者は地主に対して建物を時価で買い取るよう請求できる権利があります(定期借地権には原則なし)。
借家に関する主なルール
- 借家契約の更新
期間満了時、賃貸人に正当な理由がない限り更新されます。定期建物賃貸借(更新なし)という例外もあります。 - 借賃の増減額請求権
借賃が周辺相場などに比べて不相当になった場合、賃借人・賃貸人のどちらからでも増減額を請求できます。 - 建物の修繕義務
原則として賃貸人が建物の必要な修繕を行う義務を負います。 - 借家権の譲渡・転貸
原則として賃貸人の承諾が必要です。 - 定期建物賃貸借
更新がなく、契約期間満了により確定的に終了する賃貸借契約で、公正証書などの書面で契約する必要があります。
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【2022年施行】借地借家法の改正点とは
2022年の借地借家法改正により、これまで書面が義務付けられていた一部契約において、電磁的記録(電子データ)の利用が認められました。
オンライン契約が可能になったのは、主に居住用建物の定期借地権設定契約(借地借家法第22条)と定期建物賃貸借契約(借地借家法第38条)です。
定期借地権では、更新しない旨の特約が電磁的記録で行われた場合、書面とみなされます。ただし、事業用建物の定期借地権契約(借地借家法第23条)は引き続き公正証書が必要です。
定期建物賃貸借契約も電子契約が可能となり、更新がない旨の事前説明書の交付も、賃借人の承諾を得れば電磁的方法で実施できます。
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オンライン契約が可能になった2つの契約
2022年5月の借地借家法改正により、これまで書面での契約が義務付けられていた特定の契約が、オンライン上でも手続き可能となりました。
その対象となるのは、以下の2種類の契約です。
- 定期借地権契約(居住用建物)
- 定期建物賃貸借契約
①定期借地権契約(居住用建物)
2022年5月の法改正で、 居住用建物の定期借地権において、更新をしない旨の特約が電磁的記録(電子データ)で行われた場合、書面によるものと見なされ、オンラインでの契約締結が有効となりました。
ただし、借地借家法第23条第3項により、事業用建物を目的とする定期借地権設定契約は、改正後も引き続き公正証書による作成が必要です。
改正前: 借地借家法第22条第1項後段において、「定期借地権を設定する旨の特約は、公正証書による等書面によってしなければならない」と規定されていました。これにより、更新のない定期借地権を設定する特約は、書面での締結が義務付けられていました。 改正後: 同条に第2項が追加され、「前項の特約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その特約は、書面によってされたものとみなして、同項 1 の規定を適用する」とされました。 |
②定期建物賃貸借契約
2022年5月の法改正により、定期建物賃貸借契約自体が電磁的記録(電子データ)で締結できるようになったほか、更新がないこと等の事前説明書の交付も、賃借人の承諾を得れば電磁的方法(メール添付など)で可能となりました。
改正前: 借地借家法第38条第1項において、期間の定めがあり、更新がないこととする建物の賃貸借契約(定期建物賃貸借契約)は、書面で行う必要がありました。 また、同条第3項では、賃貸人は契約締結前に、更新がないことなどを記載した書面を交付して説明する義務がありました。 改正後: 同条第2項が追加され、「前項の規定による建物の賃貸借の契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その契約は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する」とされました。 さらに、同条第4項では、「賃貸人は、第三項の規定による書面の交付に代えて、その承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によっては認識することができない方式であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものを用いる方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって国土交通省令で定めるものをいう。)により提供することができる」とされました。 |
今回の改正に伴う変更点の詳細は法務省の資料にまとめられていますので、こちらもチェックしてみてください。

【画像引用】「借地借家法等の改正の概要」(法務省)
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借地借家法の改正による地主や借地人への影響は?
借地借家法の改正で、地主や借地人は、以下のような影響を受けることが推測できます。
- 契約締結がスピーディになる
- 紙を紛失したりするリスクがなくなり、契約内容の透明性が高まる
- 遠方でも迅速に契約締結が完了する
借地人のメリット・影響
- 契約手続きの簡便化
- 事前説明のオンライン化
- コスト削減の可能性
- 契約内容のデータ管理
オンライン契約で手続きが簡便・迅速化し、借地人にとっては、契約に伴う時間や場所の制約が軽減されることは、大きなメリットと言えます。
また、訪問して契約する場合の交通費や移動コストも削減できます。
借地契約は、契約期間が長期のため、契約書を紛失してしまうリスクもあります。オンラインでの管理によって、記録保管も容易になる点もメリットです。
地主のメリット・影響
- 契約手続きの効率化
- 事務コストの削減
- 契約管理の容易化
- 新たな顧客層へのアプローチ
地主の最大のメリットは、契約情報をデータで一元管理でき、更新時期などの管理が容易になる点と言えます。
また、契約者の居住地に囚われることなく、広範囲の顧客層にアプローチできる可能性もあるでしょう。
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オンライン契約を行う際の注意点
オンライン契約は、すべての契約に対して認められているわけではありません。一部の契約については従来通り書面による契約が求められるので注意しましょう。
オンライン契約を活用するためには、事前にしっかりと法的要件を確認し、必要な手続きを理解しておくことが不可欠です。契約の際には、最新の法律情報を参考にすることや、専門家への相談もおすすめします。こうした準備を怠ることなく、適切に契約を進めることで、オンライン契約の利便性を最大限に活用できるでしょう。
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まとめ
2022年の借地借家法改正により、借地借家契約に関する手続きの一部が簡素化できるようになり、より現代のニーズに合ったものに変わりました。
特に、電磁的記録の利用拡大により、契約手続きがオンライン化され、手続きにかかっていた時間や手間が削減できるようになりました。
センチュリー21中央プロパティーでも、オンラインによる借地権の売却相談を受け付けています。
当社は、借地権専門の不動産仲介業者として、契約書類の作成から登記手続きまで、すべて丸投げ・ワンストップで対応しています。
借地権の売却でお悩みの方は、センチュリー21中央プロパティーへご相談ください。

この記事の監修者
代表取締役 /
宅地建物取引士
CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。借地権を始めとした不動産トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。