借地権徹底解説
~存続期間から対抗力まで~|借地権とは|借地権関連|法律・税金
借地権徹底解説
~存続期間から対抗力まで~
目次
今回は借地権のすべてを徹底解説!この記事を読めば、借地権について理解できること間違いなし!

借地権の基礎知識
そもそも借地権とはどのような権利を指すのか、根拠法となる借地借家法の規定を見てみましょう。
(定義)
借地借家法2条:「この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。一借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。」
「建物所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう」とあります。「借地権」という概念の中には「建物所有を目的とする地上権」「建物所有を目的とする土地の賃借権」の2つがあるということになります。
(1)「建物所有を目的とする地上権」
地上権は物権であり、非常に強力な権利です(地主に許可なく第三者に賃借権を譲渡できる)。そのため、実務上賃借権に基づいた借地権が利用されることはほとんどありません。
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基本的には「建物所有を目的とする土地の賃借権」を中心に考えて頂ければ問題ありません。
(2)「建物所有を目的とする土地の賃借権」
通常の賃借権はこちらがほとんどになります。建物を建てるために、土地を借りて、その上に建物を建てるケースがこれにあたります。
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本記事内ではこの借地権を中心に解説して行きます。
(3)借地権の存続期間
次に借地権の存続期間についてみていきましょう。借地権の存続期間について、根拠となる条文を見てみましょう。
(借地権の存続期間)
同法3条:「借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。」
とあるように、借地権の存続期間は「30年」になります。契約でこれより長い期間(例えば、50年や60年)とした場合はそれが優先されます。ただし、ここで注意が必要なのが、「旧」法との関係です。「旧法」と「新法」の関係ですが、
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借地借家法は1992年8月1日の施行前に生じた事項にも適用される(附則4条本文)
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施行前に設定された借地権に関する契約の更新に関しては従前の例による(附則6条)
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施行前にされた建物賃貸借契約の更新拒絶通知及び解約申入れに関しては従前の例による(附則12条)
このように一部の事項については旧借地法・旧借家法が適用されます(※施行後に更新された場合も旧借地法・旧借家法が適用される)。
そのため、借地権の契約を結んでいる場合の多くは、旧法によることになります。新法の適用をしたい場合には、当事者間で契約の結び直しが必要で、更新される際に自動で新法には変わらない点には注意が必要です。
(4)借地権の対抗力について
さて、次に借地権の対抗力についてのお話です。
通常、不動産については、「登記」をしなければ、第三者に対して自己の権利を主張することができません。参考条文を見てみましょう。
民法177条:「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」
民法の条文を原則的に解釈すると借地権についても、登記をしなければ第三者に対して自己の借地権を主張できないことになってしまいます。そうすると借地権について登記ができない借地人は地主が勝手に借地権の譲渡をした場合、第三者に自己の借地権を主張できなくなってしまうという不都合が生じてしまいます。
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基本的には賃貸人(地主)は賃借権についての登記に応じてくれることはほとんどありません。そこで、特別法である、借地借家法では下記のように修正しています。
(借地権の対抗力等)
同法10条:「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。」
借地権自体に登記がなくても借地上の建物の登記があれば、その借地権は第三者に対抗(主張)することができるとしています。借地権の登記に地主が反対していても、借地権について対抗力を備えることができるようにしています。
これはあくまで、借地権に関することであり、通常の賃貸借(駐車場経営目的で借りる等、建物所有目的ではない場合)は適用されないので注意が必要です。建物所有の場合には、特別法で手厚く保護されているのです。
(5)建物買取請求権
借地権の期間も過ぎ、そろそろ借地権の契約満了が近づいてきました。借地権を返すのにはどうしたらよいのか、建物を更地にして返さなければならないのか。
原則として賃貸借契約は現状回復して貸主に返却するのが原則です。事務所やアパートも現状回復して大家さんに返却しますよね。それと同じように、土地も借りた時の状態=「更地」にして返却しなければなりません。
ただ、借地権の場合には借地借家法で「建物買取請求権」という制度があり、賃貸人(地主)に現に存在する建物を「時価」で買い取らせることを認めています。
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地主側に拒否権はありません(形成権)
(建物買取請求権)
借地借家法13条:「借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。」
ただし、下線部にもあるように、建物買取請求権が行使できるのは借地権の存続期間が「満了」した場合にのみ権利を行使でき、契約期間内の借地人からの都合での解除や賃料不払いによる債務不履行による解除の場合には、建物買取請求権は行使できず、原則通り土地を更地にして地主に返却する必要があります。
借地権の売却について
借地権の存続期間は最低でも30年と長いです。その間に相続が起きたり、予期せぬ事情で借地権がいらなくなり「処分をしたい!」と思うケースも出てくるかと思います。借地権の契約期間が残っている場合に、地主側が買い取ってもらうことも考えられます(この方法がオススメ)が、買い取ってくれるとも限りません。
実は借地権自体を第三者に譲渡(売却)することができるのですが、借地権を譲渡するには、ずばり、地主の許可が必須です。地主の許可なく第三者に譲渡や転貸をしてしまった場合には、解除原因となり、契約そのものを地主から解除される可能性があるだけではなく、損害賠償請求をされてしまうケースもあります。借地権の譲渡は慎重に行いましょう。
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
民法612条1項:「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
同条2項:「賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。」
引用元: より
ただし、地主が借地権の譲渡に応じてくれない場合には、裁判所に代わりに許可を求めることで、地主が許可したと同じような効果をもたらせる制度があります。
(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
借地借家法19条:「借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。」
この裁判所の許可は、借地人が申し立てればほとんどの場合、認められます(※裁判にかかる期間としては半年程度が平均といわれています)。借地権の譲渡に関するトラブルでこの借地権の譲渡に関する承諾がもらえない、このような悩みが非常に多くあります。
承諾に関するものでいうと家を建てる際のローンについても同様です。借地上の建物の住宅ローンを組む際は地主の承諾がいります。金融機関から地主から許可があるという承諾書を求められます。
こちらの場合は裁判所が変わって許可をしてくれるような制度はないので、根気強く地主を説得するか、最悪の場合、残念ながらローンを組むのを諦めなければなりません。

借地権のよくあるトラブル
さて、地主の「承諾」以外のよくあるトラブルについて、ここでは解説して行きます。
(1)増改築の許可
借地条件の変更や増改築(リフォーム等)にも借地人側は基本的には地主の許可が必要です。借地条件の変更やリフォームは地主にとって不利になってしまうケースがあるため、地主の許可が必要とされています。
上述した借地権の譲渡に地主が応じない場合に、裁判所の許可を得て売却することができると同じように、借地条件の変更及び増改築についても、地主が承諾してくれない場合には裁判所の手を借りて変更することが可能です。
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もちろん、絶対に許可してくれるとは限りません。
(借地条件の変更及び増改築の許可)
借地借家法17条:「建物の種類、構造、規模又は用途を制限する旨の借地条件がある場合において、法令による土地利用の規制の変更、付近の土地の利用状況の変化その他の事情の変更により現に借地権を設定するにおいてはその借地条件と異なる建物の所有を目的とすることが相当であるにもかかわらず、借地条件の変更につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、当事者の申立てにより、その借地条件を変更することができる。」
(2)地代
次に地代についてみていきましょう。地主が「地代を上げたい!」といってくるケースです。
契約期間中、固定資産税が高くなったといった理由で、地主から「地代を上げたい」と言われることがしばしばあります。
「え、地代を上げたくない…」と当然借地人は思うかもしれませんが、このとき、契約締結段階で「地代を増減しない」という特約がない限り、基本的には値上げに応じなければならなくなります。参考条文を見てみましょう。
(地代等増減請求権)
借地借家法11条:「地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。」
周辺の地代よりもあまりに高い場合の要求であれば、承諾する必要はありませんが、適正な値上げと判断できる場合には地主からの値上げ交渉には応じなければなりません。この時のポイントは、周辺地域の路線価になります。
(3)相続
借地権に相続が発生すると、法定相続分に応じて相続人の共有になるケースが出てきます。共同所有になってしまうと借地権を処分する等には相続人全員の同意が必要になってしまい、「意見がまとまらない!」=処分も何もできない、なんてことも多くあります。そのため、相続が発生した際に、「とりあえず共同所有にしておけばいいや。」というようなことは避けた方が良いです。
仮に共同所有としてしまった場合で、なかなか意見がまとまらず何とかしたい!ということであれば、自己の共有持分のみを売却することも可能です。また、借地人側に相続が発生すると、地主側から名義変更料を請求されるケースもあるようです。逆に、地主側に相続が起き、誰が地主かわからず地代を誰に払ってよいのかという問題が出てくることもあります。このような場合には、ひとまず供託制度を利用することで、「地代の不払いがある」と主張されなくするようにすることができます。
供託制度とは、簡単に言うと債権を誰に支払ってよいかわからなかったり、債権者がどこにいるかわからなかったりする場合に供託所に支払うことで、債務を免れることができる制度です。
地代で言えば、供託をすることで「地代を支払った」と同様の効果が発生します。
借地権の売却は専門仲介業者がオススメ
トラブルがある借地権の売却をしたい、借地権の共有持分のみの売却をしたい、借地権を売却する際には、自ら買い手を探すのは難しため、専門業者を利用することになるかと思います。
借地権を専門に扱っています!という業者は多いですが(インターネットで検索してもかなり出てきます・・・)、専門業者は大きくは2つのパターンに分かれます。
(1)買取専門業者
一言でいうと借地権付きのマンションや一戸建て安く仕入れて、第三者に高く転売し、その差額を利益とする不動産業者です。「早く買い取ります」と謳っている業者の多くはこの、買取業者であることが多いです。 安く仕入れができれば、その分利益も出るため、借地権付きのマンションや一戸建てをなるべく安く買い叩こうとします。
(2)仲介専門業者
一方の仲介業者であれば、第三者の立場(客観的立場)から借地権付きの不動産を買い取ってくれる人とを仲介してくれるので、買取業者のように買い叩かれることはまずありません。買取までに要する時間も買取業者と比較し極端に遅いということもありません。むしろ、買取業者が買い取ってくれないような借地権でも仲介業者であれば、買い取ってもらえることもあります。
当社の場合、投資家らとの強いネットワークがあり、これが強みです。他社では買い取ってもらえないような物件でも買い取ってもらえるケースは多くございます。もちろん、絶対に買い取り先をご紹介できますということはできませんが、相談頂いたお客様からは、まさか売却できるとは思っていなかったという声を沢山頂いております。
是非、豊富な解決事例をご参考下さい。実際には売却したい不動産の状況によってそもそも売却できるのか、金額はいくらになるのか、注意点は何かが大きく異なってきます。
借地権でお困りの方や売却を検討している方は、是非当社にご相談ください。借地権のプロ集団があなたのお悩みの解決をサポート致します!!

この記事の監修者
弁護士
弁護士。早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。地代滞納、建物明け渡しなど借地権・底地権の案件へ積極的に取り組む。主な著書に「一番安心できる遺言書の書き方・遺し方・相続の仕方」「遺言書作成遺言執行実務マニュアル」など。