先取特権 とは｜賃料債権の場合はどうなる？

地主には、地代債権をより確実に支払ってもらえるよう、借地人が保有している一定の財産について、法律上、「先取特権」が与えられています。
「先取特権」とは、法律に定める「特別な債権」を有する者が、債務者の一定の財産により優先弁済を受けることのできる法定担保物権になります。

と種類はありますが、ここでは賃貸借関連にしぼって解説します。

賃貸人が敷金を返還している場合、敷金相当部分については賃貸人は先取特権を主張できません（大判昭12年7月8日民集16巻1132頁）。

目的物が不動産の場合

目的物が不動産の場合担保不動産競売に代えて、またはそれとともに担保不動産収益執行の方法によることも可能　

目的物が動産の場合には、

先取特権には物上代位性が認められます。

「物上代位」とは、担保部県の目的物が「売却、賃貸、滅失または損傷」によって債務者が金銭その他の物を受け取ることになった時は、担保権者はその「代償物」に対しても権利が行使できるというものです。

物上代位を行使するには、「払い渡しまたは引き渡し」の前に「差し押さえ」をする必要があります（民法304条1項但し書き）。

目的物が第三者に払い渡され、引き渡しがあった場合には物上代位を行使することはもはやできません。
いつまでも行使できるとすると安定性に欠けるためです。

占有改定とは自己の占有物を「以後本人のために占有する」という意思表示によって、本人にその物の間接占有を取得させることを意味する。例：AさんがBにパソコンを譲渡したとして、その際、パソコンをBさんのために占有しますとすることで、Aさんがパソコンを持っていてもBさんのために占有している状態です。

第三者から見ると占有状態に変化はないのですが、判例（大判大6年7月26日民録23、1203頁）はこのような場合も引き渡しに含まれるとして認めています。

法は「差し押さえ」を要件としています。これは第三債務者を保護するためと言われています。
目的物を譲渡された者（第三債務者）は、誰に対して支払えばよいのか分からなくなり、2重弁済の危険性にさらさらされてしまいます。それを防止するために、「差し押さえ」を必要としました。

物上代位の権利の行使は担保権の実行の一方法となるので、「担保権の存在を証する文書」を提出したときに限り開始します（民事執行法193条1項後段）執行裁判所の差し押さえ命令により再建執行として開始されます（民事執行法193条2項）。