借地権の売却相場と売却にかかる税金|借地権を売却する方法|借地権関連

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借地権の売却相場と売却にかかる税金

借地権付き建物は売却が可能です。しかし、一般的な不動産とは異なる事情があるため、注意が必要です。

当記事では、借地権付き建物の売却に関する基礎知識から具体的な売却方法、売却するときの流れや相場金額まで詳しく解説します。売却するときの4つのポイントも紹介しているため、借地権の売却で悩んでいる人はぜひ参考にしてください。

 

1.借地権の種類

借地権とは、土地を借りて建物などの敷地に利用する権利のことです。借地権は大きく「地上権」と「貸借権」の2つに分かれています。地上権と貸借権の違いは以下の通りです。

名称 内容
地上権
  • 民法上の物権に当たる強い権利
  • 地主の許可なしで売却や転貸ができる
  • 抵当権を設定可能
貸借権
  • 民法上の債権に当たる権利
  • 売却や転貸には地主の許可が必要
  • 抵当権は設定できない

借地権付き建物など住宅関係の場合は、一般的に上記のうち貸借権が利用されています。そのため、借地権付き建物での「借地権」はあくまで債権に当たり、地主の許可なしでは売却ができません。言い換えれば、地主の許可さえあれば、借地権付き建物として売却が可能です。

また、借地権には契約更新の有無により、「普通借地権」と「定期借地権」の2つの種類があります。

種類 内容
普通借地権
  • 契約の更新により、土地を借り続けることができる
  • 最短の契約期間は30年
  • 1回目の更新後の契約期間は20年以上、2回目以降は10年以上
定期借地権
  • 契約の更新はなく、契約期間終了後に更地にして返還する
  • 一般定期借地権、事業用借地権、建物譲渡特約付借地権の3つの種類がある

借地権付き建物を売却するときには、借地権の種類にも注意してください。

なお、上記の内容は、旧借地法、旧借家法(旧法)の廃止後に施行された借地借家法(新法)によるものです。旧法による借地権を「旧法借地権」、新法による借地権を「新法借地権」と呼ぶ場合もあります。

借地借家法は1992年(平成4年)8月に施行され、施行後に新しく結んだ契約には借地借家法が適用されています。

 

2.借地権付き建物の売却方法は?

借地権付き建物の売却には、いくつかの選択肢があります。ここでは、「地主に売却する」「第三者に売却する」など具体的な項目に分けて売却方法を解説します。

ただし、すべての方法で地主の許可が必要です。借地権付き建物における売却の前提として覚えておいてください。

 

2-1.地主に売却する

借地権付き建物を土地の地主に買い取ってもらう方法です。借地権付き建物の売却では一般的によく採用される方法となります。

地主は借地権付き建物を購入することで、「完全所有権」と呼ばれる「借地権」と「底地権」の両方を所有した状態になります。結果、土地の資産価値が上がり、地主にとってもメリットのある取引となります。

ただし、すべての地主が借地権付き建物の購入を希望するわけではありません。地主に借地権付き建物を買い取ってもらえなかった場合は、第三者や買取業者などへの売却を検討する必要があります。

 

2-2.第三者に売却する

借地権付き建物を第三者に売却する場合は、地主に許可を得るとともに、地主へ「譲渡承諾料」を支払うことが一般的な取引慣行となっています。

譲渡承諾料は一般的に借地権価格の10%ほどが相場です。ただし、譲渡承諾料は法的に定められているわけではないため、地主と借地権者との間で交渉することになります。

出典:公益社団法人 不動産流通推進センター「借地権譲渡の承諾料等に関する地主との条件交渉の方法」

そのほか、第三者へ売却するときは、売却後の借地料など地主とのさまざまな交渉が必要です。専門家のいる不動産会社へ仲介を依頼すると、地主との円満な取引をサポートしてくれます。

 

2-3.買取業者に売却する

買取業者への売却は、手続きを始めてから売却するまでのスピード感が特徴です。買取業者はさまざまな物件の買取実績を豊富に持っており、借地権付き建物の売却に必要な手続きを速やかに進めてくれます。地主との交渉を行ってくれる点もメリットです。

一方、買取業者への売却は、売却価格が相対的に安くなりやすいデメリットがあります。したがって、売却時に価格よりもスピードを重視する人におすすめの方法です。

 

2-4.底地と併せて第三者に売却する

借地権付き建物を売却するときには、借地権付き建物単体で売却するだけではなく、底地と併せて売却する方法もあります。底地と併せて交渉すれば、物件の資産価値が高まるため、より高い価格での交渉も可能となります。

ただし、底地と併せた売却では地主に底地を手放してもらう必要があるため、地主との事前交渉が必要です。地主を説得する、売却で得た金額の取り分を交渉するなどの工程があるため、ほかの方法と比較するとハードルが高い方法です。

 

2-5.等価交換によって売却する

等価交換とは、その名称の通り価値が等しいものを交換する行為のことです。借地権付き建物の取引では、底地権を持つ地主と借地権を持つ借地権者が底地権と借地権を交換し、それぞれに完全所有権のある土地を持つことを等価交換と呼びます。

底地権と借地権が異なる人に帰属する場合、権利関係が複雑となるため、売却先も簡単には見つかりません。等価交換は土地の権利関係を整理し、不動産価値の向上につながる方法です。

完全所有権を得た土地や建物は、自由に売却できます。ただし、土地の価格を調べるための測量や所有権移転登記の手続きが必要となり、それぞれに費用がかかる点には注意してください。

 

3.借地権付き建物を売却するときの流れ

借地権付き建物を売却するときには、第三者への売却も地主への売却でも、不動産に関する専門的な知識が必要となります。そのため売却の際には、借地権付き建物の取引実績がある不動産会社への仲介依頼がおすすめです。以下では、不動産会社の選択から土地の引き渡しまでの流れを解説します。

 

3-1.数社の不動産会社に査定依頼する

借地権付き建物の売却では、まず、数社の不動産会社へ査定依頼を出しましょう。物件への評価は、評価する人や重視するポイントにより異なる場合があります。複数の会社へ査定を依頼することで、物件の大まかな相場を把握できます。

査定を依頼する中で、その不動産会社が借地権付き建物の取引実績が豊富か、売却までの流れを分かりやすく説明してくれるかも確認してください。仲介を依頼するときの判断材料になります。

 

3-2.売却依頼する会社を決める

次に、査定を依頼した会社の中から、仲介を依頼する会社を決定します。査定金額だけでなく、信頼できるかどうかも重要なポイントです。

なお、不動産会社は地主との交渉も行ってくれます。したがって、地主との交渉で混乱がおきないよう、依頼する会社は1社に絞っておきましょう。

 

3-3.地主の承諾を得る

先述の通り、借地権付き建物の売却では地主の承諾が必要です。売却するときには地主と相談し、事前に承諾を得る手続きを済ませます。併せて譲渡承諾料の相談も行います。

地主との交渉は、譲渡承諾料の金額や物件の売却方法など専門的な知識が必要です。のちのトラブルを避けるためにも、専門家を交えた交渉をおすすめします。

なお、地主が借地権の売却を拒否する場合には、譲渡等許可申立の手続きを裁判所に行い、裁判所から代替許可を得る制度もあります。

 

3-4.買主を探す

地主との交渉を終え条件が固まった後は、買主を探す段階です。不動産会社はポータルサイトに物件情報を載せたり、会社のネットワークシステムに登録したりして、幅広く買主を探してくれます。

買主探しをしている最中は、不動産会社から定期的に経過報告が入ります。報告の目安は、不動産会社と専属契約を結んでいる場合なら1週間に1度、専任契約を結んでいる場合なら2週間に1度です。

 

3-5.売買契約を結ぶ

条件に合う買主が見つかったら、次は買主との間で借地権付き建物の売買契約を結びます。

なお、借地権付き建物の売買契約は地主の譲渡許可が出て初めて効力を発揮するため、売買契約を結んだ時点では効力を発揮しません。地主の譲渡許可については次項で解説します。

 

3-6.地主と借地権譲渡承諾書を交わす

借地権譲渡承諾書とは、具体的にいうと「借地権を売買してもいい」という旨を記載した承諾書のことです。「借地権譲渡に関する合意書」という名称の場合もあります。借地権用途承諾書は、借地権付き建物の取引に欠かせない書類です。

借地権譲渡承諾書には、地主との交渉で決定した譲渡条件が記載されています。地主から借地権譲渡承諾書を受け取ることにより、地主の譲渡許可が確認され、借地権付き建物の売買契約が成立します。

 

3-7.引き渡し

引き渡しは借地権付き建物の売買における最終段階です。売買契約が正式に成立した後に、売却金額の決済が行われ、借地権付き建物が買主の手に移ります。

建物部分の所有権が買主に移る場合には、所有権移転登記の手続きが必要です。所有権移転登記が行われないと、買主における建物の所有が認められないため、忘れずに手続きを行うようにしてください。

 

4.借地権の相場金額は?

借地権の評価額は地代の設定や地主の条件などさまざまな要因に加えて、物件の状況もかかわるため多種多様です。そのため、借地権の売買価格相場を一概にいうことはできません。

ただし、借地権の価値を算出する基本的な計算方法は存在します。以下では、普通借地権と定期借地権の場合に分け、基本的な計算方法を解説します。

 

4-1.普通借地権の場合

普通借地権の場合の基本的な計算方法は「公示価格×借地権割合」です。公示価格は、不動産鑑定士により地価を基準として計算されます。公共事業や民間の土地取得の際の基準ともなる価格です。

公示価格は路線価の8割程度といわれているため、路線価が分かる場合にはその金額の80%が目安となります。また、公示価格は「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」で確認が可能です。詳細な公示価格を知りたい場合には、下記URLを参考にしてください。

参考:国土交通省「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」

借地権割合は、土地の評価額に対して借地権がどれくらいの価値を占めているかの割合を示すものです。一般的に、借地権取引の多い都市部ほど高い割合が、借地権取引の少ない郊外ほど低い割合が割り当てられる傾向にあります。借地権割合は、下記のURLより確認できます。

参考:国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」

 

4-2.定期借地権の場合

定期借地権の場合、普通借地権と異なり契約の更新がありません。契約終了時には土地を更地にして地主に返却する必要があります。そのため、契約の更新により土地を長く利用できる普通借地権と比較すると、売却価格が低く、需要も少ない傾向にあります。

定期借地権の相場は、財産評価基本通達が規定する内容に沿って決められることが一般的です。財産評価基本通達の基準を参考にした定期借地権の相場は、以下のようになっています。

定期契約の残存期間 定期借地権の相場
5年以下のもの 土地の価格の100分の5
5年を超え10年以下のもの 土地の価格の100分の10
10年を超え15年以下のもの 土地の価格の100分の15
15年を超えるもの 土地の価格の100分の20

出典:国税庁「(貸宅地の評価)」

定期契約の残存期間により価格が変動します。

 

5.借地権付き建物を売却するときにかかる税金

借地権付き建物を売却するときには、売却益に対して譲渡所得税の納税義務が発生します。譲渡所得は給与所得などと異なり、ほかの所得と区別する分離課税である点に注意してください。

譲渡所得の計算方法は「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)」です。取得費と譲渡費用の内容は以下のようになっています。

費目 内容
取得費
  • 借地権付き建物を購入したときの代金
  • 仲介手数料や更新料なども含まれる
譲渡費用
  • 借地権付き建物を譲渡するときの仲介手数料や測量費など
  • 建物を取り壊すときはその費用も含まれる

譲渡所得税の税率は、短期譲渡所得か長期譲渡所得かによって異なります。借地権付き建物を売却した年の1月1日現在で、所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得、所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得です。それぞれの税率は以下のようになります。

所得名 所得税 住民税
短期譲渡所得 30% 9%
長期譲渡所得 15% 5%

出典:国税庁「土地や建物を売ったとき」

譲渡所得税では、上記のように短期・長期それぞれで所得税と住民税がかかることを覚えておきましょう。また、2037年12月31日までは、確定申告の際に復興特別所得税として基準所得税額に2.1%をかけた金額を納付する必要があります。

なお、マイホームを売却した場合には特別控除を受けられるケースがあります。特別控除が適用されると、短期譲渡所得・長期譲渡所得のどちらのケースでも最高3,000万円の控除が可能です。

例えば、4,000万円の借地権付き建物を売却したケースなら、譲渡所得から3,000万円の特別控除が差し引かれ、残った金額に譲渡所得税が課される仕組みです。

ただし、特例の適用を受けるためには、要件を満たし、必要書類とともに確定申告をする必要があるため、注意してください。

出典:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」

 

6.借地権を売却するときのポイント4つ

借地権付き建物を売却しようと思っても、希望する金額で売却できるとは限りません。場合によっては、相場よりも安い価格になることもあります。ここでは、本来の価格に近い金額で取引するためのポイントと注意点を解説します。借地権付き建物を売却する際の参考にしてください。

 

6-1.地主さんと良い関係性を築いておく

借地権付き建物の取引では、地主との交渉が必要不可欠です。もし地主と良好な関係が築けていなければ、売却手続きの途中で交渉が思うように進まない恐れがあります。買い手側も売主と地主の関係が悪いと取引の進捗に不安を感じやすく、結果として買い手がつきづらい状況に陥りかねません。

また、地主と交渉して地代や更新料などの諸経費を安くしてもらうことができれば、それだけ買い手も見つかりやすくなります。したがって、日頃から地主と良好な関係を結んでおくことはとても重要です。

 

6-2.土地や建物の状態を確認する

借地権付き建物を売却する際には、事前に土地や建物の状態を確認しておきましょう。一般的な物件と同様に、借地権付き建物は条件により価格が変動します。例えば、日当たりが悪い、駅から遠いなどの条件がある場合、借地権付き建物の価格が希望より安く評価される可能性もあります。

日当たりの問題は建物のリフォームにより解消できることもあるため、希望する価格に近い金額で売却したいときは、事前のリフォームも1つの手段です。ただし、リフォームには地主の許可が必要なため、地主と相談しつつ進めてください。

 

6-3.ローン承諾許可を取っておく

買い手が借地権付き建物に抵当権を設定し、それを担保にローンを組んで購入する場合は、地主の承諾が必要です。地主の承諾がなければローンを組むことができず、買い手は現金で購入しなければなりません。そのため、ローン承諾許可のない借地権付き建物は、ローン承諾許可のある物件に比べ、価格が低くなる傾向にあります。

物件をできるだけ高い金額で売却したい場合は、事前に地主と交渉し、ローン承諾許可をとっておく必要があります。

なお、地主からローン承諾許可が下りないときは、業者への売却も選択肢です。個人よりも資金的な余裕のある業者なら、抵当権設定の問題を回避できる可能性があります。

 

6-4.借地権の取扱いに慣れた不動産会社を選ぶ

借地権付き建物の売却では、借地権の扱いに慣れた不動産会社を仲介に選ぶことが大切です。借地権付き建物は権利関係が複雑な場合も多く、売買の際には適切な対応が求められます。借地権について知識のない不動産会社を選んでしまった場合、相場よりも安い価格で査定される恐れもあります。

借地権のノウハウを持ち、取引実績の多い不動産会社であれば、地主や買い手との交渉や法律関係の手続きも比較的安心して進められます。借地権付き建物の売却に失敗しないためにも、信頼でき、借地権物件の実績の多い不動産会社を選んでください。

 

まとめ

借地権を売却するときには、地主との交渉が必要となります。借地権付き建物の売却には地主への売却のほか、第三者や買取業者へ売却する方法もあるため、状況に合わせて選択してください。また、売却益には譲渡所得税が課されます。

借地権、底地の売却をご検討の方は、ぜひ中央プロパティーにお問い合わせください。借地権や底地の問題に通じた経験豊富な専門家のもと、条件・状況に合ったサポートを提供いたします。無料相談のサービスも提供しているため、お気軽にご相談ください。

この記事の監修者

松原 昌洙マツバラ マサアキ

代表取締役 /
宅地建物取引士

CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。借地権を始めとした不動産トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。

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