借地権の譲渡承諾料とは?必要なケースと承諾料の相場を解説|借地権を売却する方法

更新日:
作成日:
コンテンツ番号:13194

借地権の譲渡承諾料とは?必要なケースと承諾料の相場を解説

借地権を第三者に譲渡・売却する際に、地主から譲渡承諾料を求められます。譲渡承諾料は払う必要があるのか、相場はどの程度なのか気になる方もいるでしょう。また、借地権を持っている場合、譲渡のとき以外にも地主に承諾料を支払わなくてはならないことがあります。

当記事では、借地権の譲渡承諾料の必要性や相場とともに、その他にかかる承諾料についても解説します。借地権の譲渡・売却を検討している方はぜひご覧ください。

1. 借地権の譲渡承諾料とは?

借地権とは、建物の所有を目的として土地を借り、利用する権利のことです。借地権を持つ人を借地人と呼び、借地人は地主と賃貸借契約を結んだ土地に住宅や店舗を建てて使用できます。

しかし、借地権を別の人に譲渡する、つまり借りている土地や建物を誰かに売りたい場合には、土地の所有権を持つ地主の許可が必要です。地主側の承諾が得られなければ、裁判所で手続きを踏んで許可が下りない限り、借地権を譲ることはできません。

借地権を第三者に譲渡する際、地主の許可をもらうために支払うお金が、借地権の「譲渡承諾料」です。別名で「名義変更料」とも呼ばれます。すべての土地に当てはまるわけではありませんが、借地権の譲渡を承諾する条件として、土地の権利を持つ地主から譲渡承諾料を求められます。このお金が地主に支払われることで、借地権譲渡のスムーズな実行が期待されます。

1‐1. 借地権の譲渡承諾料の相場

借地権の譲渡承諾料の相場に法的な定めや根拠はないものの、一般的に借地権価格の10%程度とされています。借地権価格とは、借地権の評価額(売買価格)のことです。この借地権価格を基に、譲渡承諾料の相場が計算されます。

例えば、借地権価格が1,000万円の場合、譲渡承諾料の相場は1,000万円の10%である100万円です。ただし、この相場はあくまで目安であり、実際の譲渡承諾料は地域や土地の条件、地主との関係性などに応じて異なります。最終的な譲渡承諾料は、地主との交渉や契約内容によって決まるため、十分な情報収集と交渉力が必要となるでしょう。

2. 借地権の譲渡承諾料は必要?

土地の形状や立地、地主の意向によっては、借地権の譲渡承諾料が高額となるケースがあります。本当に支払いが必要かどうかを見極めるために、支払いが必要なケースと不要なケースを把握しておきましょう。

2‐1. 譲渡承諾料が必要なケース

譲渡承諾料が必要になるのは、借地権という権利を別の人に譲渡するために地主の許可が必須のときです。具体的には、以下のような場合が挙げられます。

譲渡(売却)の場合

借地人が、その権利を第三者に譲渡(売却)する場合です。金銭の授受がなくとも、借地権の権利移転には地主の許可が必要なため、譲渡承諾料が発生します。

贈与の場合

親族や友人などに、借地権を無償で贈る場合も、名義の書き換えには地主の許可が必要です。この際も、譲渡承諾料が原則必要になります。

遺贈の場合

遺言によって借地権を譲る場合も、地主の許可が必要です。相続とは異なり、遺贈の際には譲渡承諾料が発生する可能性があります。

上記のケースでは、借地権を処分する際に地主から譲渡承諾料を求められることが一般的です。

2‐2. 譲渡承諾料が不要なケース

譲渡承諾料が不要となるのは、主に以下の2つの状況が該当します。

借地権が地上権の場合

地上権とは、土地を借りている人が自由に土地を使用できる権利です。地上権の場合、建物を売却する際に借地権の譲渡(物権移動)が発生しないため、地主の許可や譲渡承諾料は不要となります。

相続の場合

相続人が借地権を受け継ぐ際は、通常、地主の許可や譲渡承諾料が必要ありません。相続の場合は契約内容、および賃借人の立場もそのまま引き継がれるためです。

ただし、いずれのケースでも、借地権や地上権の契約内容によっては、地主の許可が必要になる場合があります。そのため、実際の手続きを行う前に契約書を確認し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けましょう。

3. 借地権にかかわるその他の承諾料

借地の場合、権利の移動にともなう譲渡承諾料以外にも、さまざまな場面で地主の許可が必要であり、地主の承諾を得る対価として、お金の支払いが発生します。

ここでは、借地権にかかわるその他の承諾料を5つ解説します。

3‐1. 建て替え承諾料(増改築承諾料)

建て替え承諾料とは、借地上の建物を建て替える際に、地主に支払うお金です。別名で増改築承諾料とも呼ばれています。借地上の建物の耐用年数が経過した場合や、建物を新しくしたい場合などに地主の許可が必要となり、対価として建て替え承諾料(増改築承諾料)を要求されます。

建て替え承諾料は、木造(非堅固建物)が更地価格(土地の時価)の5%程度、鉄筋(堅固建物)なら8~12%程度が相場です。ただし、契約内容や地主の意向によっては、建て替え時の許可や承諾料が不要な場合もあります。建て替えを検討する際は、契約内容や地主との関係を確認し、必要に応じて専門家に相談するとよいでしょう。

3-2. 条件変更承諾料

条件変更承諾料とは、借地契約の条件を変更する際に、地主に支払うお金です。木造などの非堅固な建物から、鉄筋など堅固な建物へ建て替えを行う場合、それに伴って契約期間が変わります。このような借地契約の契約内容を変更する際には地主の許可が必要になり、条件変更承諾料を求められます。

条件変更承諾料の相場は、更地価格の10%程度が一般的な目安です。具体的な相場は契約内容や地域によって異なるため、実際に契約条件を変更する際には契約書と周辺の相場を確認しておきましょう。

3‐3. 転貸承諾料

転貸承諾料とは、借地人が所有する、借地権自体を第三者に転貸する際に、地主に支払うお金です。事前の取り決めがない限り、又貸しを行う場合は地主の許可が必要となり、その許可を得るために転貸承諾料が発生することがあります。借地権付きの建物を第三者に貸して家賃をもらう行為は、地主の許可が不要ですが、借地権の権利自体を転貸する場合は地主の許可が必要です。

たとえば、地権付きの建物を解体して、第三者の名義で新しい建物を建て第三者がそこに住む場合は借地権の転貸にあたります。この場合、借地契約を地主と借地人の名義で締結しているものの、実際に住んでいる人と建物の名義は第三者という関係になります。

【借地権の転貸にあたる例】

借地人Aと地主Bは20年前に借地契約を結び、地主Bの所有している土地に借地権を設定した。

借地権Aは土地に建物を建てて暮らしていたが、急遽アメリカに10年ほど移住することに。住んでいないのに地代を払うのももったいないが、10年後日本に帰ってくるので借地権を売却するつもりはない。

そこで知人のCに借地権自体を一定期間又貸しすることをに決定。(借地権の転貸)

借地契約はそのままで、地主に承諾をとって知人Cに借地権を又貸しする。

借地権の地位が一時的にAからCに移行し、借地権の地位を得ることになった知人Cは借地人Aの建物を地主の承諾を得て増築して、そこに住む。

3‐3. 転貸承諾料

転貸承諾料の相場は一概には決まっていません。一般的には、転貸による借地権価格の10%程度とされていますが、実際の金額はケースバイケースです。契約内容や土地の立地条件、地主との交渉によって変わります。

3‐4. 更新料

更新料とは、借地権契約の存続期間が終了し、契約を更新する際に借地人が地主に支払うお金です。更新のある借地権の場合、契約期間が終わるたびに、借地人は地主の許可を得て契約を更新する必要があり、その際に更新料が発生します。

更新料の相場は、一般的に更地価格の3~5%程度です。ただし、契約の条件や地域、土地の立地条件によっては更新料の基準が異なる場合もあります。また、更新料の有無や金額は借地人と地主の合意によって決まるため、必ずしも更新料が発生するわけではありません。

しかし、契約書に更新料の支払いが明記されていなくても、過去に更新料を支払っていた場合は、更新料の支払いを地主から求められる可能性が高いです。更新料の支払いは義務ではありませんが、契約更新をスムーズに行うため払っておいた方が良いケースもあります。

4. 地主が譲渡を承諾してくれないときは?

借地権の譲渡や建物の売却などを行う際には、地主の許可が必要です。地主に無断で取引や工事を行うと、借地権の契約解除や賠償請求をされかねません。しかし、地主との関係性が良くない場合や、金額に納得できない場合などは、許可を出してくれないことがあります。

地主が合理的な理由なく譲渡を拒否した場合、裁判所に借地非訟という申立てを行って、地主の代わりに許可を得ることが可能です。借地非訟により裁判所が「地主に正当事由なし」と判断されれば、地主の承諾が得られなくても、第三者への売却は可能になります。もっとも裁判所が定めた承諾料を地主に払うことが前提となります。

4. 地主が譲渡を承諾してくれないときは?

また、不動産会社に相談し、地主との交渉を依頼する方法もおすすめです。弁護士など専門家と提携している不動産会社であれば、地主との交渉代行や仲介、トラブルの解決策を見つける手助けをしてくれます。

出典:最高裁判所「第1 借地非訟とは」

まとめ

借地権を譲渡するときは、地主に承諾を得る対価として、譲渡承諾料を支払う必要があります。借地権を売却・贈与・遺贈するときも同様に承諾料が必要であることが一般的です。承諾料の金額は地主との関係性や契約内容によっても異なり、地主と条件や金額について交渉をしなければならないケースもあります。地主との交渉がうまくいかないときは、裁判所で借地非訟の手続きを申立てたり、不動産トラブルに強い弁護士が常駐している不動産会社に相談したりすることをおすすめします。中央プロパティーでは、社内弁護士が常駐のうえ、初回の相談から売却後のトラブルまで一貫してサポートする他、借地権の高価売却も可能です。借地権の譲渡・売却を検討している方は、ぜひ一度中央プロパティーにご相談ください。

この記事の監修者

松原 昌洙マツバラ マサアキ

代表取締役 /
宅地建物取引士

CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。借地権を始めとした不動産トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。

この記事のタグ

おすすめの記事はこちら