地代増額調停を有利に進めるには?地主が勝つための準備と進め方
目次
「固定資産税が上がっているのに、地代は数十年変わっていない」
「周辺の相場と比べて明らかに安いが、借地人が値上げに応じてくれない」
地主様にとって、先祖代々の土地を適切に管理し、正当な収益を得ることは権利であり義務でもあります。
しかし、個人間の交渉では感情が対立し、話が進まないことも珍しくありません。そこで検討すべきが「地代増額調停」です。
本記事では、地主側が調停を有利に進め、正当な増額を勝ち取るための戦略的な準備と進め方を徹底解説します。
地代増額調停とは?
地代増額の法的根拠は、借地借家法第11条にあります。
借地借家法第11条では、以下の事由がある場合に、地主は将来に向かって地代の増額を請求できるとしています。
- 土地に対する租税公課(固定資産税・都市計画税)の増減により、地代が不相当となったとき
- 土地価格の上昇その他の経済事情の変動により、地代が不相当となったとき
- 近隣の土地の地代と比較して不相当となったとき
ここで重要なのが「相当地代」という考え方です。調停や裁判では、地主の希望額が妥当かどうかではなく、「客観的に見て相当な地代はいくらか」が判断基準になります。つまり、感覚や不満ではなく、合理的な根拠が不可欠です。
裁判と調停の違い
調停は裁判と異なり、裁判官と調停委員が間に入って話し合いを進めます。
- 手続きが比較的柔軟
- 早期解決が期待できる
- 人間関係を完全に破壊せずに済む
といった特徴があり、地主にとってはコスト・時間面でメリットがあります。一方で、準備不足のまま臨むと、低い増額で妥協させられるリスクもある点には注意が必要です。
地代増額調停で地主が「勝つ」とはどういう状態か
調停では、請求した地代が満額認められるケースは多くありません。
そのため、「勝ち」とは
- 一定の増額が認められる
- 増額時期や遡及について有利な合意を得る
といった現実的な成果を得ることを意味します。最初から100点を狙うのではなく、70点〜80点の着地を目標にする姿勢が重要です。
調停委員・裁判所が重視する判断ポイント
調停委員や裁判所が重視するのは、客観性と合理性です。
- 数値で裏付けられているか
- 第三者が見ても納得できるか
感情的な主張や、借地人への不満を前面に出すと、かえって心証を悪くします。調停は「正しさ」ではなく「妥当性」を競う場だと理解しましょう。
地代増額調停で地主が不利になる3つのパターン
失敗する地主には共通する特徴があります。
①根拠資料が不足しているケース
「近くの不動産屋がこれくらいだと言っていた」という口頭の証言だけでは不十分です。
公的なデータや書面がない限り、調停委員は増額を促す根拠を持てません。
②増額理由が曖昧・主観的なケース
「孫の学費が必要になったから」といった個人的な理由は、借地借家法上の増額事由には当たりません。
また、固定資産税が上がったとしても、それが微増であれば「受忍限度(我慢すべき範囲)」内と判断されることもあります。
③事前交渉を軽視しているケース
調停に至るまでの交渉履歴も重視されます。
一度も話し合いをせずいきなり調停を申し立てたり、逆に強引な取り立てのような交渉をしていたりすると、調停の場での心証が悪くなります。
【準備編】有利に進めるための「勝てる証拠」の集め方
調停の成否は、申し立て前の準備で8割決まります。
- 固定資産税等の納税通知書(過去5年〜10年分)
土地の維持コストがどれだけ増えたかを時系列で示します。
「税金がこれだけ上がったのだから、地代据え置きでは地主の持ち出しが増える一方だ」という主張を数値で裏付けます。 - 周辺の地代相場データの収集
近隣の成約事例や、近傍類似地の地代データを用意します。
自分一人で集めるのが難しい場合は、地元の不動産業者に「意見書」を書いてもらうのも有効です。 - 不動産鑑定士による「継続地代鑑定書」
これが最強の武器です。- 理由: 国家資格者である鑑定士が、複数の算定手法を用いて割り出した価格は、裁判所も無視できない高い証拠能力を持ちます。
- 費用対効果: 数十万円の費用がかかりますが、増額幅が月数万円変われば数年で回収可能です。「本気度」を相手に見せる効果もあります。
- 過去の改定履歴の整理
「過去30年間、一度も値上げを求めてこなかった」という事実は、逆に言えば「地主が十分に配慮してきた」証拠になります。
契約書や過去の領収書を整理しておきましょう。
【実践編】調停を有利に進める5つの戦略
地代増額調停は、単なる話し合いの場ではなく、法的根拠に基づいた「交渉の場」です。地主側が主導権を握り、有利な結果を引き出すための戦略を解説します。
① 「賃料増額請求」の起算点を確定させる
増額を検討した段階で、速やかに内容証明郵便による「賃料増額請求通知書」を送付してください。
調停や裁判で増額が認められた場合、増額の効力は「請求が相手方に到達した時点」まで遡及します。
この通知が遅れると、その期間分の差額を受け取る権利を失うことになるため、実務上、意思表示の証拠を残すことは最優先事項です。
② 調停委員の心証を掌握する
調停委員会(裁判官1名・調停委員2名)は中立の立場ですが、実質的に借地人を説得するのは調停委員の役割です。
地主側が「強欲な値上げ」ではなく「経済合理性に基づいた正当な権利行使」であることを印象付けることが重要です。
清潔感のある身なりと理知的な受け答えを徹底し、「公租公課の負担増により、このままでは土地の維持管理が困難である」といった切実かつ論理的な背景を共有し、調停委員を味方に引き入れる姿勢が求められます。
③ 許容限度額(ボトムライン)を事前に策定する
調停は譲歩のプロセスです。場当たり的な判断を避けるため、「希望額(目標)」「妥協額(着地点)」「離脱額(デッドライン)」の3層を事前にシミュレーションしておきましょう。
一度合意し、調停調書が作成されると裁判の確定判決と同じ効力を持ちます。
安易な妥協は、次回の改定時(通常数年後)までの収益を毀損し続けることになるため、冷静な出口戦略が必要です。
④ 継続賃料の算定手法を熟知する
調停の場では、以下の継続賃料を算出する手法が議論のベースとなります。
- スライド法:
直近の賃料合意時点からの物価変動(消費者物価指数)や地価変動率を、現在の賃料に乗じて算出する手法。 - 利回り法:
土地の価格(基礎価格)に、継続賃料としての期待利回りを乗じて算出する手法。 - 差額配分法:
実際の賃料(支払賃料)と、現在の相場賃料(新規賃料)の差額を、地主と借地人で一定の割合で配分する手法。
これらを理解しておくことで、調停委員から提示される「調整案」の計算根拠を即座に分析し、反論の可否を判断できるようになります。
⑤ 弁護士・不動産鑑定士によるバックアップ体制の構築
借地人が法人である場合や、対象地の面積が広く増額規模が大きい場合、個人での対応は極めて困難です。
法的な主張・書面作成を担う「弁護士」と、鑑定理論に基づき適正賃料を立証する「不動産鑑定士」のサポートを受けることをおすすめします。
特に、不動産鑑定士による「継続賃料鑑定評価書」は、調停委員の判断を決定づける強力なエビデンスとなります。
弁護士をつけた方がいい3つのケース
地代改定交渉において、専門家による介入が不可欠となるのは以下のケースです。
①高額地代・事業用借地権の場合
商業地や大規模な事業用借地の場合、わずか数パーセントの改定率の差が、契約期間全体で数百万円から数千万円の収益格差を生みます。
投資利回りの最大化を狙う場合、精緻な法的ロジックとエビデンスを構築できる弁護士の存在が、最終的な経済的利益に直結します。
②借地人側の主張が強固な場合
相手方が増額を断固拒否している場合や、相手側に顧問弁護士が介入している場合、素人による交渉は極めて困難です。
法理に基づかない主張は、調停委員からの信頼を失うだけでなく、かえって相手方に反論の余地を与えるリスクがあるため、対等な専門知識を持つ代理人を立てるのが定石です。
③平日の調停期日への出頭が困難な場合
民事調停は原則として平日の日中に開催されます。
弁護士を選任することで、本人の代理として期日に出頭し、全ての主張・立証を代行させることが可能です。
多忙な地主様にとって、時間的なコストを削減しながら、法的手続きの正確性を担保できるメリットは計り知れません。
地代増額において最も回避すべき事態は、「実態に即さない不利な和解案を受諾してしまうこと」です。
一度調停が成立し、「調停調書」が作成されると、それは確定判決と同一の法的効力を持ちます。
後日、条件の不当性に気付いたとしても、既判力(判決を覆せなくなる効力)によって合意内容を撤回することは法的に不可能です。
将来にわたる収益基盤を守るためには、合意に至る前の慎重な法的チェックが欠かせません。
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地代増額調停を有利に進め、大切な資産を守るためには、単に「地代を上げたい」という意思表示だけでは不十分です。
増額を認めてもらうためには、固定資産税の増税や地価の上昇といった地主側の事情だけでなく、周辺相場との乖離を示す客観的なデータや、専門家による鑑定書といった「複層的な証拠」を戦略的に組み合わせる必要があります。
判例や実務の流れを見ても、現代の調停・裁判では「その増額がいかに合理的で、社会情勢に即しているか」が厳しく問われます。
準備不足のまま安易に交渉を始めてしまうと、借地人との対立が深まるだけでなく、解決までに数年を要し、その間の増額チャンスを逃し続けるという大きな損失を招きかねません。
- 「自分の主張に正当な根拠があるか不安」
- 「適切な増額幅や、妥当な落としどころが分からない」
- 「借地人との直接交渉が精神的に辛く、話が進まない」
こうしたお悩みを抱えている地主様は、決して一人で抱え込まず、専門知識と豊富な解決実績を持つプロの手を借りるのが賢明な判断です。
地代・借地・底地の複雑な問題は、ぜひセンチュリー21中央プロパティーへご相談ください。専門のコンサルタントが、弁護士と連携しながら、あなたの権利と大切な資産を守るための最適な解決策をご提案いたします。

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この記事の監修者
弁護士
エルピス総合法律事務所 代表弁護士/宅地建物取引士
東京大学法学部を卒業後、20年以上にわたり不動産法務の最前線で活躍するスペシャリスト。東京弁護士会に所属し、弁護士資格に加え宅地建物取引士の資格も有することで、法律と不動産実務の両面から深い専門知識と豊富な経験を持つ。
特に借地権における紛争解決においては、業界屈指の実績を誇り、借地権更新料問題、地代増減額請求、借地非訟事件、建物収去土地明渡請求など、複雑な案件を数多く解決に導いてきた。
著書に「事例でわかる 大家さん・不動産屋さんのための改正民法の実務Q&A」がある。メディア出演やセミナー登壇実績も多数。