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地代の消滅時効(時効の中断)|底地の売却・相続

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作成日:
コンテンツ番号:1395

地代の消滅時効(時効の中断)

質問 先日借地人からの地代が1年間だけ支払われていないことが分かりました。
期間は1980年の5月分から1981年の4月分までのちょうど一年です。
かなり昔の話ではありますが、最近、借地人もそれを認め一部の弁済をしてくれていました。
しかしながら、消滅時効で未払い地代は支払う必要なないと主張されてしまっています。
ただ、消滅時効にかかっているかもしれないと妻から言われましたがどうでしょうか。

消滅時効とは

消滅時効とは、一定期間行使されない場合、権利を消滅させる制度のことです。
「請求できるのに何もしないで放置しておくような、権利の上に眠る者は保護しない」という考え方が根底にはあります。

(消滅時効の進行等)

民法166条:「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。」

(債権等の消滅時効)

民法167条1項:「債権は、十年間行使しないときは、消滅する。」

同条2項:「債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。」

とあり、債権の消滅時効は原則として「権利を行使することができる時から10年経過」すると成立します。

  • 債権の種類によって10年より短期の消滅時効が条文にはありますが、賃料債権は10年の消滅時効なため、割愛します。

本件では1980年の5月~1981年の4月分が未払いということで請求しようとしていますが、
10年以上経過しているため、原則として地代の請求をしても消滅時効の主張をされたら、地代の回収をすることはできません。

地代を支払って欲しいのに10年前のは時効です!と言い張っている図

時効の中断

本件では未払いの時点から現在までの詳細は分かりませんが、消滅時効には中断という制度があります。
中断というのは、消滅時効の進行がSTOPするということです。

(時効の中断事由)

民法147条:「時効は、次に掲げる事由によって中断する。

一  請求

二  差押え、仮差押え又は仮処分

三  承認

1号の請求とは、債権者が債務者に対して債務の履行を請求するということです。
この請求には、裁判上の請求と裁判外の請求があります。

裁判上の請求

  1. 支払督促の申立て

  2. 訴訟の提起

  3. 民事調停の申立て

  4. 即決和解の申立て

  5. 任意出頭による訴え

  6. 破産手続き参加

  7. 更正手続き参加

  8. 再生手続き参加

裁判外の請求

裁判外の請求は催告、内容証明郵便によります。この際、国による中断の期間は6ヶ月ですので注意が必要です。3号の承認とは債務者が弁済することを認める場合です。下記の3つがこれに当たります。

  1. 債務承諾書(支払約束書)

  2. 一部弁済

  3. 支払猶予の申入れなど

本件では借地人が未払いの事実を認めてはいますが、これが消滅時効が完成する前であれば、消滅時効は完成していないことになります。消滅時効完成前に借地人が債務の承認をしている場合は、しっかりと書面などに残すようにしておくとよいでしょう。

時効消滅後の弁済

本件では一度借地人が消滅時効を知らずに地代の未払いがあることを認め一部弁済しています。そのような場合どのようになるのでしょうか、参考判例を見てみましょう。

♦参考判例:最大判昭和41年4月20日判決

判旨:「債務者が、自己の負担する債務について時効が完成したのちに、債権者に対し債務の承認をした以上、時効完成の事実を知らなかつたときでも、爾後その債務についてその完成した消滅時効の援用をすることは許されないものと解するのが相当である。けだし、時効の完成後、債務者が債務の承認をすることは、時効による債務消滅の主張と相容れない行為であり、相手方においても債務者はもはや時効の援用をしない趣旨であると考えるであろうから、その後においては債務者に時効の援用を認めないものと解するのが、信義則に照らし、相当であるからである。」

としています。時効が完成したのちに、債権者に対し債務の承認をした場合、仮に時効完成の事実を知らなかったときでも、その後、その債務についてその完成した消滅時効の援用をすることは許されません。一見、消滅時効が完成しているため、酷な話と思うかもしれません。

しかし、債務は弁済するのが原則であり、また、一度債務を承認したのだから、債権者としても弁済する意思があると理解します。
そのため、時効完成を知らずに承認をした場合は、その後にやはり消滅時効により、弁済はしないという主張は許されないようにしています。

本件の場合、借地人が時効完成を知らずに、一部の未払い地代を支払っているため、時効が中断しており、未払い地代の請求はできる可能性が高いと思われます。

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この記事の監修者

菅原 悠互スガワラ ユウゴ

弁護士

弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で借地非訟手続きや建物買取請求権の行使など今社会問題化しつつある借地権トラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。

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