正当事由の判例から学ぶ!地主が立ち退き要求を通すための条件|借地人とのトラブル
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正当事由の判例から学ぶ!地主が立ち退き要求を通すための条件

地主様にとって、長年貸してきた土地や建物を取り戻すプロセスは非常に大きなストレスと困難を伴います。特に「正当事由」という言葉は抽象的で、どこまで準備すれば認められるのか不安を感じている方も多いでしょう。

本記事では、過去の裁判例(判例)を分析し、地主側が立ち退き要求を通すために必要な具体的条件を分かりやすく解説します。

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正当事由とは?【地主がまず理解すべき基礎知識】

地主が「契約を終わらせたい」と思っても、法律の壁が立ちはだかります。まずはその基本を整理しましょう。

正当事由が必要となるケース

日本の法律、特に「借地借家法」では、借主(借りている人)の権利が非常に強く守られています。以下のタイミングで、地主側には「正当事由」が必須となります。

  • 借地借家法が適用される場合:
    建物の所有を目的とする土地の賃貸借や、建物の賃貸借全般。
  • 更新拒絶・解約申し入れ時に必要:
    契約期間が満了しても、地主が更新を拒むには正当事由が必要です。これがない場合、契約は「法定更新」され、自動的に継続してしまいます。

法律上の正当事由の判断要素(借地借家法28条)

正当事由は、以下の要素を天秤にかけて判断されます。

  1. 建物使用の必要性:
    地主と借主、どちらがよりその場所を必要としているか。
  2. 賃貸借の経緯:
    なぜ貸すことになったのか、賃料は適正か、これまでの信頼関係はどうか。
  3. 建物の現況・利用状況:
    建物がどれくらい古いか、借主が実際にどう使っているか。
  4. 立ち退き料などの財産給付:
    立ち退きの対価としていくら支払うか。

正当事由は「これがあれば100%OK」という単独の要素ではなく、これらを総合的に判断する「総合判断」です。

よくある「正当事由が否定」される地主側の主張

以下のような主張は、地主側がよく陥る「正当事由として弱い」パターンです。

  • 「老朽化している」だけ:
    直せば住める程度なら、解約理由としては不十分です。
  • 「建て替えたい」だけ:
    具体的な計画や、建て替える必要性が証明できなければ認められません。
  • 「相続したから使いたい」だけ:
    「なんとなく自分で使いたい」程度では、借主の生活基盤を奪う理由にはなりません。

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【判例解説】地主の立ち退き要求が認められたケース

実際の判例から、どのようなポイントが評価されるのかを見ていきましょう。

判例① 自己使用の必要性が強いと判断された事例


学校法人が、大学病院設置のため借地上の建物収去・明渡しを請求した事件で、借主側の事情も切実と認められたものの、地主側の自己使用の必要性が借主の事情を上回ると判断され、立退料の支払いを条件に明渡しが認められたケース。

評価ポイント:借主の生活基盤への影響が大きい中でも、地主側の具体的な使用計画が強い事情として評価された好例です。

判例② 建物老朽化+建て替え計画が評価された事例


建物が老朽化し耐震性が問題となっていたため、具体的な建て替え計画・資金計画を提出した地主の請求が認められたケースです。

評価ポイント:

  • 通常の築年数だけでなく、耐震診断など客観証拠が評価された
  • 建て替えの実現可能性が高いことが裁判所で重視されました

※同様の老朽化・耐震性重視の判例は複数あり、裁判所は社会的な安全性を判断材料にしています。

判例③ 高額な立ち退き料が決め手となった事例


地主側の使用必要性は限定的だったものの、相場より高額の立ち退き料(財産上の給付)を提示した点が評価され、正当事由として認められたケースです。

評価ポイント:

  • 正当事由自体が弱い場合でも、立退料を含む補完事情が裁判所に評価される例
  • 金銭的補償が裁判官の判断を左右する典型例と言えます

判例④ 老朽化と地域再開発計画が評価された事例


都心再開発の一環としてビル建物の明渡しを求めた事案。地主側は老朽化したビルの高度利用と再開発計画を提示し、立退料を支払うことで正当事由として認められた判決です。

評価ポイント:

  • 単なる老朽化だけでなく、「地域の再開発計画」が合理的と評価された
  • 立退料額が裁判所により補償額として相当と認められ、請求が認容されました

判例⑤ 老朽化・耐震性+合理的事業計画が評価された事例


建物が築50年以上で耐震性に重大な欠陥があるとされた上で、地主側が建替え+合理的な事業計画を提出し、立退料を含めて正当事由と認められたケースです。

評価ポイント:

  • 客観的な建物の安全性(耐震診断結果)、
  • 老朽化が顕著で修繕をしても有効利用が困難な点が評価され、正当事由認定につながっています。

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判例から導く!地主が立ち退き要求を通すための5つの条件

① 自己使用・建て替えの「具体的準備」

単なる「使いたい」という主意だけでなく、「その土地でなければならない客観的理由」と「事業の実現可能性」が厳格に問われます。

判例では、地主が他に代替不動産を所有していないことや、既に建築資金の融資証明、建築確認申請書、具体的な事業計画書を具備しているかといった、後戻りできないレベルの具体性が高く評価されます。

② 借主側の「依存度」を上回る必要性

「生活の拠点(居住)」「収益の源泉(商売)」としての依存度を、地主側の必要性が上回る必要があります。 

借主が近隣に代替物件を確保可能である、あるいは借地上の建物を既に自身で利用せず第三者に転貸している、あるいは居住実態が希薄であるといった「借主側の土地利用の必要性が低い事実」を立証することは、相対的に地主側の正当事由を強める有力な武器となります。

③ 客観的な「建物安全性」の立証

「老朽化」は主観に左右されるため、判例では一級建築士による耐震診断結果や、物理的・経済的耐用年数の限界を示すデータが重視されます。

単に「古い」だけではなく、「大規模修繕をしても経済合理性がなく、放置すれば第三者への不法行為責任(工作物責任)が生じかねない」という社会的・公共的リスクを強調することが、正当事由を補強します。

④ 立ち退き料による「不足分の補完」

実務上、地主側の事情だけで正当事由が100%認められるケースは稀です。

そこで判例では、不足している正当事由を「財産上の給付(立ち退き料)」によって補完することを認めています。これは単なる「引越し代」ではなく、借地人が失う「借地権という財産価値」を金銭で買い取る性質を持つため、相場を踏まえた適切な提示が解決の決定打となります。

⑤ 信頼関係の履歴と適正なプロセス

判例では「これまでの契約経過」も注視されます。

地道な交渉の記録や、借主の義務違反(軽微な地代滞納や無断改築等)の積み重ねは、地主側の主張を後押しします。

一方で、強引な立ち退き要求や不当な催告は、裁判官の心証を著しく悪化させます。「誠実な交渉を尽くしたが決裂した」という経緯を証拠(議事録や書面)で残すことが、最終的な勝利を左右します。

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立ち退きで失敗しないために地主が取るべき3つの対策

立ち退き要求は、最初の一歩を間違えると解決まで数年かかることもあります。

1. 徹底した「証拠固め」と事前調査

立ち退き要求は、感情ではなく「客観的な事実」に基づいて進める必要があります。

  • 権利関係の精査:
    契約書が古い場合や紛失している場合、これまでの地代の支払い履歴や更新の有無を再確認し、現在の法的地位を明確にします。
  • 利用実態の把握:
    借主が実際に居住しているか、他人に貸していないか(無断転貸)、あるいは建物の維持管理を放置していないか。
    これらの事実は「借主側の必要性」を否定する重要な証拠となります。
  • 建物の「物理的・経済的」劣化の記録:
    写真撮影に加え、必要に応じて簡易的な耐震診断や修繕見積もりを取得します。「直せば住める」と言わせないための、修繕費用の高額さを示すエビデンスが重要です。

2. 「最初の通知」は戦略的に

立ち退きを求める際、いきなり高圧的な「立ち退け」という通知を送るのは下策です。

  • 内容証明郵便の重要性:
    借地借家法上の「更新拒絶」には期間の制限(満了の1年前から6か月前まで)があるため、証拠が残る内容証明での通知が必須です。
  • 文面のコントロール:
    最初の通知で「売却したいから」といった地主都合の理由を強調しすぎると、後の裁判で「正当事由が弱い」と不利に働くリスクがあります。
    法的要件を網羅しつつ、相手の感情に配慮した文面作成には専門家の知見が欠かせません。

3. 弁護士・専門家に相談すべき「2つのタイミング」

① 交渉の「方向性」を考える前(事前準備段階)

最も推奨されるタイミングです。自分のケースで「どれくらいの正当事由があるのか」「立退料の落とし所はどこか」という着地点の予測(シミュレーション)を持ってから交渉に臨むことで、無駄な紛争を避けられます。

② 交渉が「平行線」を辿り始めた時

借主が「絶対に出ない」と拒絶した場合や、法外な立退料を要求してきた場合、地主様が直接交渉を続けると精神的な負担が増すだけでなく、不用意な発言が法的リスクを生みます。

専門家が「第三者の代理人」として介入することで、法的なロジックに基づいた冷静な協議が可能になります。

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まとめ|借地人とのトラブル・交渉のお悩み受付中

立ち退き要求において「正当事由」を認めてもらうためには、地主側の個人的な事情だけでなく、建物の老朽化度合いや具体的な活用計画、そして適切な立ち退き料の提示といった、複数の要素を戦略的に組み合わせる必要があります。

判例からも明らかなように、現代の裁判実務では「地主と借主のどちらがよりその土地を必要としているか」が厳しく問われます。安易な交渉はかえってトラブルを長期化させ、解決までに数年を要するケースも珍しくありません。

  • 「正当事由が認められるか不安」
  • 「立ち退き料の妥当な金額が分からない」
  • 「借主との直接交渉が精神的に辛い」

こうしたお悩みを抱えている方は、決して一人で抱え込まずに、専門知識と豊富な解決実績を持つプロにご相談ください。

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この記事の監修者

塩谷 昌則

弁護士

エルピス総合法律事務所 代表弁護士/宅地建物取引士
東京大学法学部を卒業後、20年以上にわたり不動産法務の最前線で活躍するスペシャリスト。東京弁護士会に所属し、弁護士資格に加え宅地建物取引士の資格も有することで、法律と不動産実務の両面から深い専門知識と豊富な経験を持つ。

特に借地権における紛争解決においては、業界屈指の実績を誇り、借地権更新料問題、地代増減額請求、借地非訟事件、建物収去土地明渡請求など、複雑な案件を数多く解決に導いてきた。

著書に「事例でわかる 大家さん・不動産屋さんのための改正民法の実務Q&A」がある。メディア出演やセミナー登壇実績も多数。

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