地代値上げ通知の書き方とタイミング。拒絶されない交渉の鉄則
目次
「固定資産税が上がったので、借地人に地代の値上げをお願いしたいが、どう伝えればいいのか?」
「勝手に決めて通知を送っても、法的に問題はないのだろうか?」
土地の所有者(地主)にとって、長年据え置かれた地代の改定は切実な課題です。しかし、地代の値上げは単なる「お願い」ではなく、借地借家法で認められた正当な権利である一方、手続きを一歩間違えると泥沼のトラブルに発展するリスクも孕んでいます。
本記事では、地代改定の実務に精通した視点から、「借地人が納得せざるを得ない通知書の書き方」や「有利に進めるための交渉術」を具体的に分かりやすく解説します。
地代の値上げに「通知」は必須!知っておくべき法的根拠
地代の値上げを検討する際、まず理解すべきなのは「いつから増額が有効になるか」という点です。
「請求した日」がすべての基準になる
裁判などで最終的に増額が認められた場合、「値上げを請求した時点」まで遡って差額を請求することが可能です。
そのため、「いつ通知を送ったか」という証拠が極めて重要になります。
口頭ではなく、必ず内容証明郵便で通知を送り、法的な証拠を残しましょう。
また、借地借家法第11条では、租税の増減や経済事情の変動により地代が不相当となった場合、当事者は「将来に向かって地代の増減を請求できる」と定めています。
これは地主の正当な権利ですが、一方的な押し付けではなく、あくまで「適正な価格への是正」のための提案というスタンスで臨むのが、交渉のコツです。
地代値上げ通知の書き方(5つの必須項目)
借地人に納得してもらうための通知書には、以下の5項目を必ず盛り込みましょう。
①現在の地代と改定後の地代
曖昧な表現を避け、「月額○○円を○○円に変更する」と明確な金額を提示します。
②改定の実施時期
即時の値上げは反発を招きます。通知から1〜3ヶ月程度の猶予期間を設けるのが一般的です。
③具体的な増額の根拠
なぜ値上げが必要なのか、客観的な数値を添えます。
- 固定資産税・都市計画税の増税額
- 地価公示価格の上昇率
- 前回の改定から経過した年数
④回答の期限
検討の時間として、2週間〜1ヶ月程度の期限を設定します。
⑤誠実な協議の申し入れ
「一方的な決定」ではなく「協議の場を持ちたい」という体裁をとることで、借地人の心理的な拒絶反応を和らげます。
地代値上げ通知を送るタイミングはいつが有利?
地代の増額請求は、法的な正当性はもちろんのこと、借地人の「納得感」をいかに醸成するかが鍵となります。
同じ内容であっても、送付するタイミング次第でその後の協議の円滑さは劇的に変わります。
1. 固定資産税の納税通知書が届いた直後(4月〜6月)
最も客観的かつ反論の余地がないタイミングです。
地代増額の正当な事由(借地借家法第11条1項)の一つである「公租公課の増減」を直接的な根拠として提示できます。
納税通知書という公的書類をエビデンスとして即座に提示できるため、地主の主観的な要望ではなく「経費増に伴う不可避な是正」であることを印象づけられます。
2. 借地契約の更新時期
契約の節目は、条件全体を見直すための絶好の機会です。
更新料の交渉や契約条項の確認と並行して地代改定を行うことで、借地人側も「次の更新までの条件確定」という意識を持ちやすくなります。
更新合意書の中に新地代を盛り込むことで、別途の合意書を作成する手間を省き、法的な安定性を一気に高めることが可能です。
3. 周辺エリアの再開発やインフラ整備が進んだ時期
土地の利用価値が物理的に向上したタイミングを見逃してはいけません。
借地借家法に定められた「近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったとき」という要件を、視覚的・体感的に説明しやすい時期です。
近隣の成約事例や公示地価の上昇だけでなく、「駅の改修」「商業施設のオープン」といった誰もが認める事実を背景にすることで、増額への心理的ハードルを下げられます。
4. 数年スパンでの「定期的」な見直し提案
「長期間据え置いてから一気に上げる」のではなく、小刻みな改定を行う戦略です。
例えば10年分を一度に上げようとすると、上げ幅が大きくなりすぎて供託や調停に発展するリスクが高まります。3年〜5年ごとの定期改定を慣例化します。
借地人にとって「定期的な物価スライド」としての認識が定着し、一度の負担額が抑えられるため、感情的な対立を回避しつつ、常に適正な収益性を維持できます。
借地人に納得してもらうための4つの交渉ポイント
1. 「お願い」ではなく「提案・通知」の姿勢
地代増額請求は、借地借家法第11条に認められた「形成権(一方的な意思表示で法的な効果が生じる権利)」に近い性質を持つ正当な権利行使です。
過度に「お願い」という低姿勢をとると、借地人に「応じなくても実害はない」という誤認を与え、かえって解決を遅らせる原因となります。
感情を排除し、固定資産税の推移や近隣相場との比較データに基づいた「事務的かつ客観的な提案」を貫くことで、法的な正当性を印象づけます。
2. 「供託」の可能性を想定しておく
交渉が難航した際、借地人が支払いを停止するリスク(債務不履行)への備えが必要です。
増額に反対であっても、借地人は「従前の地代(現在の金額)」を支払う義務があります。
もし受領を拒否した場合は、法務局への「供託」を促すことで、賃料不払いによる契約解除リスクを回避しつつ、最低限の収益を確保させます。
協議が平行線となった場合でも、暫定的に従前の地代を受け取りつつ「不足分は後日精算する」旨を明文化しておくことで、将来的な遡及請求権を保全します。
借地人が値上げを拒否しても、現在の地代すら支払わなくなると「賃料不払い」による契約解除のリスクが出てきます。
相手が供託(法務局に地代を預けること)を行う可能性も視野に入れ、法的な対応準備を整えておきましょう。
3. 段階的な値上げの検討
一括での大幅な値上げに心理的・経済的な抵抗がある場合、柔軟な改定スケジュールの提示が有効です。
最終的な目標額(適正地代)に到達させることを優先し、例えば「1年目は30%増、2年目は60%増、3年目に100%増」といった段階的合意を目指します。
即時の満額回答を得るよりも、早期に「増額そのものへの合意」を取り付けることで、長期化による紛争コスト(弁護士費用や調停費用)を抑制する戦略です。
4. 第三者(専門家)のサポートを受ける
個人的な利益追求ではなく、外部の客観的な評価であることを強調します。
「税理士による資産評価の結果」や「不動産鑑定士の簡易査定」など、専門家の氏名や肩書きを出すことで、主張の客観性を高めます。
「税務署や顧問税理士から、親族間取引でない以上、適正賃料を収受しないと贈与税等の税務リスクを指摘された」といったコンプライアンス上の理由を添えることで、借地人側の「断りづらさ」を創出します。
必要に応じて、借地権に詳しい専門家のサポートを検討しましょう。
【無料相談】地代に関するお悩みはお任せください!
地代の値上げは、法的な根拠に基づいた正当な手続きですが、当事者同士では感情的な対立が起こりやすい問題です。
「通知の書き方がわからない」「借地人と話がまとまらない」とお悩みの方は、専門家への相談を検討してみてはいかがでしょうか。
センチュリー21中央プロパティーでは、借地権・底地の専門家が、適正な地代の算出から交渉のサポートまで幅広く承っております。まずは無料相談をご利用ください。

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この記事の監修者
弁護士
エルピス総合法律事務所 代表弁護士/宅地建物取引士
東京大学法学部を卒業後、20年以上にわたり不動産法務の最前線で活躍するスペシャリスト。東京弁護士会に所属し、弁護士資格に加え宅地建物取引士の資格も有することで、法律と不動産実務の両面から深い専門知識と豊富な経験を持つ。
特に借地権における紛争解決においては、業界屈指の実績を誇り、借地権更新料問題、地代増減額請求、借地非訟事件、建物収去土地明渡請求など、複雑な案件を数多く解決に導いてきた。
著書に「事例でわかる 大家さん・不動産屋さんのための改正民法の実務Q&A」がある。メディア出演やセミナー登壇実績も多数。