借地権のリフォームや増改築に注意!地主へ承諾料を払うべき?
借地権のリフォームや増改築に注意!地主へ承諾料を払うべき?

目次
借地権付き建物の増改築を行う場合、原則として地主の承諾が必要であり、その際には承諾料の支払いが発生することがほとんどです。
一方で、借地権付き建物をリフォームする際には、地主の承諾は不要です。
しかし、増改築とリフォームの違いについて正しく理解していない場合、地主との認識違いが発生し、大きなトラブルになる可能性もあります。
この記事では、借地権のリフォーム・増改築における承諾の必要性や承諾料の相場、地主とのトラブルを避けるための注意点について、分かりやすく解説します。

リフォームと増改築の違いとは
一般的にリフォームと増改築は同じ意味合いに捉えられておりますが、似て非なる概念です。
リフォームは、建物の既存の構造を維持したまま、内装や設備などを新しくすることを指します。例えば、壁紙の張り替え、キッチンの交換、浴室のユニットバス化などが該当します。建物の延べ床面積や基礎・柱・梁といった主要構造に変更はありません。目的は老朽化箇所の修繕や機能向上、美観の回復です。
リフォームは主に小規模な工事が該当し、建築確認申請も不要です。なおかつ借地権付き建物の場合も地主の承諾が不要となるため、承諾料を支払う必要もありません。ただし、地主とトラブルにならないためにも事前に借地権付き建物のリフォーム工事を行う旨を伝えておくことをおすすめします。
一方、増改築は、建物の構造や規模に変更を加えることを指します。具体的には、増築(床面積を増やす) や、改築(既存の建物を壊して同じ規模・用途で建て直す) が含まれます。
「増築」と「改築」は建築基準法上では「建築行為」にあたるため、新築や建て替えなどと同様に建築確認申請が必要となり、完成後には法務局で「建物表題変更登記」が必要です。
借地権のリフォーム工事では建築確認申請が不要となりますが、増改築では建築確認申請の認可を得なければ工事を行うことができません。また地主からの承諾も必須に定められていることが多いため、承諾料を支払う必要があります。
つまり、規模や構造を変えるかどうかが大きな違いです。借地権の場合、この違いが地主への承諾の要否や承諾料に影響を与えるため、正確な理解が不可欠です。
借地権をリフォームする際の注意点
借地権の家をリフォームする際は地主の承諾が不要となりますが、以下の3点に注意する必要があります。
- 増改築禁止特約がないか確認する
- 増改築の規模を“あらかじめ”地主に共有する
- 慎重に資金計画を立てる
増改築禁止特約がないか確認する
借地権の家を増改築する際は、地主と締結した土地賃貸借契約書に「増改築禁止特約」が記載されていないか確認しておきましょう。
増改築禁止特約とは、地主の承諾なしで建物の増改築を禁止する規定のことです。借地上の建物の増改築が行われると建物の寿命が延びてしまい、借地権の期間が長くなることから、地主の立場としては土地の自由度が低くなるため、増改築を禁止している方もいらっしゃいます。
とはいえ、新法借地権が施行された1992年7月以前の契約は、増改築禁止特約がないことが多いため、契約書を確認してみましょう。土地賃貸契約書がない場合は、「特約付加されていない」と一般的には解されています。しかし地主が契約書を所有している場合もあるため、地主に契約書を見せてもらうようにしましょう。
また、借地権の家をリフォームする場合は地主の承諾は不要となりますが、増改築とリフォームを同じ行為に捉えている地主もいるため、あわせて地主に確認しておきましょう。
増改築の規模を“あらかじめ”地主に共有する
契約書に増改築禁止特約の記載がない場合は、地主の承諾は必要ありませんが、事前に「どれくらいの規模の増改築を行うのか」を地主に共有しておくことが大切です。
増改築禁止特約が契約書に明記されていなくても、地主の立場からすれば「勝手に増改築されている」と誤解され、トラブルに発展する可能性も高いです。
また増改築禁止特約が明記されていた場合にリフォーム工事を行う際も、「これくらいの工事規模であれば承諾が不要だ」と安易に判断するのは危険です。
一般的なリフォーム工事であっても地主は「この規模の工事でも増改築に該当するため承諾が必要だ」と一方的に解釈して、トラブルになるかもしれません。
そのため、どれくらいの規模の工事を行うのかを工事着手が始まる前に伝えておくことが大切です。
万が一反対された場合は地主と交渉する期間が必要となり、工事スケジュールが変わってしまう可能性も高いため、工事が決まった段階、もしくは工事の検討をしている段階で伝えることをおすすめします。
慎重に資金計画を立てる
借地権でリフォーム工事や増改築を行う場合、慎重に資金計画を立てることが大切です。リフォーム工事を行う際の資金を金融機関からの融資で対応しようと考える人は少なくないでしょう。しかし融資を受けるには借入額に対して十分な担保評価が必要です。
担保評価とは、万が一債務者の返済が滞った際、金融機関は不動産を差し押さえて売却し、残債務に充当できるほどの価値があるのかを表したものです。
借地権の場合、更地価格の60〜70%の担保評価となるうえ、借地権付き建物は自由度の低さから売却も困難です。そのため金融機関ではさらに厳しめの評価額として算出するため、ローンを組む場合、通常の不動産より若干ハードルが上がります。
また借地権の場合、土地所有者は地主なので、土地そのものを担保に入れることは地主の承諾なしではできません。地主も土地を差し押さえられる可能性もあることから一般的に土地に対する担保設定に応じることが少ないです。
そのため建物だけの担保評価で借入額が決まりますが、老朽化している建物は評価額が非常に低く、金融機関から借入するのが難しいとされています。
借地権をリフォームする際は、ある程度自己資金で対応しなければいけない状況か、担保不要で高金利のノンバンクなどで融資を受ける必要が出てくるため、慎重に資金計画を立てるようにしましょう。
リフォームや増改築の際に地主への承諾料は支払うべき?
結論から言いますと、リフォームの際は地主への承諾料は不要、増改築の際には、地主への承諾料が必要になります。
増改築承諾料とは
借地権付き建物において、「増改築承諾料」とは、借地人が借地上の建物を増築・改築する際に、土地の所有者である地主から承諾を得る対価として支払う金銭のことを指します。これは法律で明確に定められた費用ではありませんが、借地契約の慣習や判例に基づいて発生するケースがほとんどです。
増改築承諾料の支払いが必要とされる背景には、借地権と土地所有者(地主)の関係性、そして借地借家法の考え方があります。
借地権者が建物を増改築するということは、地主の土地をより長く、あるいはより大規模に利用することに繋がります。特に、建物の構造を木造(非堅固建物)から鉄骨造や鉄筋コンクリート造(堅固建物)に変更するような場合は、建物の耐久年数が大幅に延び、結果として借地権の存続期間が長くなる可能性が高まります。
借地権においては、建物の老朽化が進み、使用できなくなると借地権が消滅し、地主が土地を取り戻せるという側面があります。
しかし、増改築によって建物が新しくなったり、堅固になったりすると、その分、地主が土地を取り戻せる時期が遠のきます。増改築承諾料は、この「土地を取り戻す時期が遠のくことへの代償」や、借地人が増改築によって得る「経済的な利益の一部」を地主に還元するという意味合いが含まれます。
多くの借地契約書には、「増改築禁止特約」が盛り込まれています。この特約がある場合、借地人は地主の承諾なしに増改築を行うことができません。承諾を得るためには、この特約を解除・緩和してもらうための対価として、承諾料を支払うことが慣習となっています。
増改築承諾料の費用相場
増改築承諾料の相場は基本的に更地価格の3〜5%です。
更地価格は土地の時価を表しますが、「国土交通省の土地総合情報システム」で不動産取引価格情報検索で、実際に取引された価格を確認することが可能です。
ただし、あくまでも承諾料は地主と借地人との話し合いで決まります。
特に地主と普段から関係構築が十分にできていない場合は、借地人が直接交渉を進めると、地主とトラブルになる可能性があります。交渉が難航しそうな場合は、早めに借地権専門の不動産会社などの専門家に依頼することをおすすめします。
専門家の力を借りることで、適正な承諾料で増改築の交渉を進めることができます。
地主の承諾が得られない場合の対処法:借地非訟
増改築禁止特約が契約書に明記されていない場合、地主の承諾は不要ですが、地主は建物の建て替えに対して異議を述べることができるため、承諾してくれない場合も考えられます。またリフォームに関しても地主の承諾は不要であるにもかからわらず、地主から反対されて工事の着手ができない場合もあります。
その場合は「借地非訟」の制度を利用して裁判所の代諾許可を得る必要があります。
借地非訟とは、裁判所に借地人が申し立てを行い、双方の事情を確認し、審問したうえで、借地人は地主の代わりに裁判所から承諾を得ることです。

借地非訟にかかる費用
借地権に関するトラブルを裁判所で解決する「借地非訟(しゃくちひしょう)事件」では、以下のような費用が発生します。
- 弁護士費用(着手金・報酬金)
- 裁判所費用(実費)
1. 弁護士費用(着手金・報酬金)
借地非訟事件を弁護士に依頼する場合、主な費用は「着手金」と「報酬金」です。
弁護士費用は、弁護士が解決によって依頼者が得た「経済的利益の額」を基準に算出されるのが一般的です。借地非訟事件においては、この「経済的利益の額」の算定が通常の金銭請求事件と異なり、複雑になることがあります。
増改築承諾許可の申立てでは、裁判所が判断する承諾料の額が、地主が当初請求していた額より減額された場合、その減額分が経済的利益とみなされることがあります。
弁護士費用は、各弁護士事務所が自由に定めていますが、旧日本弁護士連合会報酬等基準が目安となることが多いです。具体的な金額は、事件の複雑さ、難易度、争点の多さによって変動します。
着手金は最低でも20万円~40万円程度、報酬金は得られた経済的利益の10%~20%程度が目安となることが多いです。
2. 裁判所費用(実費)
弁護士費用とは別に、裁判所に納める費用や手続きに必要な実費が発生します。これらは弁護士が代理で立て替える場合もありますが、最終的には依頼者が負担します。
申立手数料(収入印紙)
裁判所に申立てを行う際に支払う手数料です。
これは「目的物の価格」に応じて決まり、収入印紙で納めます。借地非訟事件の場合、「目的物の価格」は、原則として固定資産評価額を基準に算定されることが多く、一般的に数千円から数万円程度になります。
例:目的物の価格が500万円なら12,000円、1,000万円なら20,000円など。
郵券(郵便切手)
裁判所が当事者や関係者への書類送達などに使用する郵便切手代です。
申立て時に、裁判所が指定する額面と枚数の切手をまとめて予納します。相手方の人数や裁判所によって異なりますが、数千円から1万円程度が目安です。
不動産鑑定費用
借地非訟事件では、土地や建物の評価、賃料の相当性などを判断するために、裁判所の職権で不動産鑑定士による鑑定が行われることがあります。
この鑑定費用は、原則として裁判所の費用として扱われ、当事者が直接負担することはありません。ただし、弁護士が独自の判断で鑑定を依頼する場合は、その費用が別途発生します。
増改築の承諾料でお悩みならご相談ください
借地権付きの家をリフォームする際は、地主の承諾は不要となりますが、増改築する場合は承諾を得るために、増改築承諾料を支払う必要があります。増改築承諾料は更地価格の3%〜5%前後が相場と言われているものの、地主との交渉によって金額が確定します。
センチュリー21中央プロパティーは、借地権を専門に取り扱う不動産会社です。
「地主から高すぎる承諾料を請求されている」「無断で増改築したため、契約解除すると言われている」など、増改築やリフォームに関するトラブル相談も受け付けております。
借地権に詳しい弁護士が常駐しているため、法的な視点から最善の対処法をご提案させていただきます。
よくある質問
Q. 小規模なリフォームであれば、地主の許可は不要なのでしょうか?
リフォーム工事に関しては、その規模や内容によっては、地主の承諾が必要になる場合があります。
リフォーム工事については、簡単な雨漏り修理など小規模なものであれば、地主の承諾が必要な『増改築』に当たらないが、大規模な修繕工事になる場合は、『増改築』に該当し、地主の承諾が必要だと考えられています。
とはいえ、地主からすると、行われているリフォーム工事が小規模か大規模かの判断は難しく、実際は小規模なのに大規模な工事だと誤解して、無断増改築を理由に契約解除を言い出す可能性もありますから、小規模なリフォーム工事であったとしても、どういう工事をするかを事前に地主に伝えておく方が安全です。

この記事の監修者
弁護士
弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。借地非訟、建物明渡、賃料増額請求など借地権や底地権をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。