借地上の家の解体でよくあるトラブル・費用相場を解説!|トラブル事例

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借地上の家の解体でよくあるトラブル・費用相場を解説!

「地主から借地を更地にしてから返還するよう求められた」
「借地の上に建てた家は誰が解体するのだろうか?」
「解体費用はどれくらいかかるのか?」

このように、借地権の設定された土地に建築した家の解体で困っている方は多いのではないでしょうか?

解体費用は建物の所有者である借地人が負担するケースが多いものの、地主との交渉も可能です。また、借地上の建物を解体する以外にもいくつか手放す方法があるため、必ずしも借地人が解体費用を支払うわけではありません。

そこで本記事では、借地上の建物の解体について、費用相場やよくあるトラブルとその解決方法、解体費用を抑えるコツなどを詳しく解説します。

借地上の建物解体費用で金銭的にトラブルを抱えている方や、地主と折り合いが付かず悩んでいる方は、ぜひ最後まで読み進めてください。

1.借地上の家を解体するケース

借地上に借地人が家を建てた場合、契約期間の満了にともなって、借地を地主に返還するか、もしくは借地契約を更新するか、どちらかを選択することになります。

地主へ返還する際に問題なのが、借地上に建てられた家の存在です。

原則、借地は借りる前の状態に戻す必要があります。もし更地の状態で借りた場合は、家を解体して更地に戻さなればなりません。

ただし例外として、地主の都合で借地を返還するケースでは借地人が解体費用を払わなくてもよい場合があります。

そこで本章では借地上の家を「借地人の都合で解体するケース」と「地主の都合で解体するケース」に分けて紹介します。

まず借地人の都合として挙げられる具体的なケースは以下の3つです。

図1_借地人の都合で解体するケース

(図1_借地人の都合で解体するケース)

次に、地主の都合で建物を解体するケースとは、図2のように借地人が契約の継続・更新を希望しても、地主の事情によって契約を終了する場合です。

図2_地主の都合で解体するケース

(図2_地主の都合で解体するケース)

地主に正当な理由があると認められた場合は、地主から借地人に対して「立ち退き料」を支払い、建物の解体費用を地主が負担して更地に戻します。

まずは、どちらの都合で借地返還へと至っているのかを確認してみましょう。

「建物を解体すると借地権が消滅するのでは?」と不安に感じている方もいますが、実際には消滅しません。ただし、新規で借地権を設定した際の上限期間である30年を超えた場合は、地主によって借地権の解除が認められています。

借地権の消滅については、以下の記事を参考にしてください。
▶︎【底地-4】登記していた借地権建物が無くなったとき借地権は消滅するか

2.借地上の家の解体費用

建物の解体費用は安くないため、どちらが費用を負担するかでトラブルに発展することは少なくありません。

法的な定めはありませんが、費用負担の考え方を理解しておくとトラブル防止にもなります。

ここでは、以下のポイントから解体費用についてみていきましょう。

  • 解体費用は誰が払う?

  • 【家の種類別】解体費用の相場はいくら?

それぞれ詳しく解説します。

2-1.解体費用は誰が払う?

家の解体費用は原則、建物の所有者である借地人が支払います。

ただし「借地上の家を解体するケース」で解説したように、地主都合で契約解除される場合は、地主側の負担です。

また、お互いで協議し合意があれば、地主が解体費用を全額または一部を負担する場合があります。例えば地主が借地としてではなく、所有権として自由に土地を使いたいと考えるケースです。

普段から借地人と地主とで良好な関係を築き、解体費用はお互いが納得できるように話を進めましょう。

2-2.【家の種類別】解体費用の相場はいくら?

図3_解体費用の比較

(図3_解体費用の比較)

例えば、総面積が35坪ある二階建ての家の解体費用は、木造であれば105万〜140万円、鉄骨造であれば140万〜210万円、RC造であれば175万〜280万円です。

このように、解体費用は建物の構造によって変わります。構造の強度が上がるほど、特殊な重機を使用したり、廃材処分に費用がかかったりするためです。

さらに建物全体の大きさや基礎部分の面積、建物までの道などによっても金額が変わります。建物が大きくなると、警備員や作業員の数が増えます。また、重機やトラックが道路の幅や立地によって侵入できず、小型重機や手作業によって解体を進めるしかなく、予定よりも時間がかかる場合もあります。

このような場合には、費用が上乗せされる可能性があるため注意しましょう。

解体費用の詳細については、以下の記事を参考にしてください。
▶︎借地の家の解体費用|払えない場合に取れる手段や費用の相場も解説

3.借地上の家の解体でよくあるトラブル

借地上の家の解体では、隣人や解体業者、地主との間でトラブルが起こる可能性があります。

それぞれで発生する可能性のあるトラブルを詳しく解説します。

3-1.隣人とのトラブル

隣人との間で多いのは、以下のトラブルです。

  • 騒音や振動の被害がある

  • 隣人宅を破壊してしまう

  • ホコリやゴミの被害がある

  • 作業車が路上駐車をしてしまう

  • 朝早くや夜遅くまで作業してしまう

解体工事の現場では、騒音や振動が起きやすく、ホコリやゴミの飛散でも隣人に迷惑をかけることがあります。解体工事は騒音や振動、ホコリの飛散は避けられないため、時間帯や対応によって隣人からクレームが入るかもしれません。

また工事業者によっては、早朝や夜間まで工事をして問題になるケースもあります。

隣地の住宅の塀を壊したり外壁を傷つけたりといったトラブルもあります。

3-2.解体業者とのトラブル

解体業者との間で多いのは、以下のようなトラブルです。

  • 解体業者の認識違いがある

  • 業者都合で工事の遅延が起こる

  • 無断で追加工事をされて追加費用を請求される

  • ずさんな整地作業で終了される

解体業者とは、事前に打ち合わせをしますが、打ち合わせ内容での認識違いがあり、壊すべきではない場所まで壊すケースがあります。

また、見積書と請求書で大きな金額差があったり、無断で追加工事費用を請求されたりなどの金額面でのトラブルも多い傾向にあります。

3-3.地主とのトラブル

地主とのトラブルで多いのは、以下の2つです。

  • 解体費用の負担の認識違いがある

  • 借地権の売却で地主から多額の承諾料を要求される

借地契約が終了すると、借地人は借地上にある建物を解体して更地で返還しなければなりませんが、その必要性についてはあまり知られていません。

地主と借地人の間で借地の取り扱いに関する認識違いが、トラブルを招くことになります。

また、借地権の売却に関してもトラブルになりやすいポイントです。

借地権付き建物は、借主である借地人が売却できます。しかし、借地は地主にとって収益であるため、売却されると収益源が途絶えてしまい困ります。そのため、借地権の売却では、地主からの承諾と、地主への承諾料の支払いが必要です。

承諾料とは、地主に売却を承諾してもらう費用です。承諾料は法律で金額が定められていないため、高額な承諾料を請求されるトラブルがあります。

ただし、建物を売却する時、地主からの許可の必要性は、借地権が地上権なのか賃借権なのかによって変わります。地上権の場合は、地主からの許可なしに借地権を売却できますが、賃借権の場合は、許可が必要です。

承諾料については、以下の記事を参考にしてください。
▶︎借地権の名義変更料とは?支払うタイミングと借地相続の流れを解説

4.借地上の家の解体トラブル解決方法

本章では、借地上の家の解体トラブルを解決する方法として、解体工事前にやるべき対策を詳しく解説します。合わせて、解体費用を抑える2つのコツを解説するので参考にしてください。

4-1.解体工事前にやっておくべき対策

隣人とのトラブルを未然に防ぐためにやるべきは、近隣住民への挨拶です。事前に、解体によって迷惑をかけること・工事の期間・工事の時間などを伝えると、クレーム発生防止になりトラブルを未然に防ぐ対策になります。

また、解体工事では避けられない騒音やホコリなどは、防塵シートや養生で被害が軽減できます。解体業者の作業内容に、防塵シートや養生の設置が入っているか確認しておきましょう。

解体業者とのトラブルを防ぐには、以下のような方法が有効です。

  • 複数者に見積もり依頼をする

  • 解体実績や口コミを確認する

  • 会社のホームページを確認する

  • 追加工事に関する規定を確認する

解体業者とのトラブルでは、費用や作業内容に関するものが多いため、細かく確認しましょう。また複数の業者に見積もり依頼をして、比較するのもおすすめです。口コミでほかの利用者の意見を参考にする方法も対策になります。

地主とのトラブルを防ぐには、まずは賃借権について改めて理解することです。そのうえで双方での話し合いが難航する場合は、弁護士への相談を検討しましょう。

本記事で解説しているトラブルとそれぞれの解決法を以下の表にまとめたので、参考にしてください。

トラブルの種類 トラブルの内容 トラブルの解決法

隣人とのトラブル

・騒音や振動の被害がある
・隣人宅を破壊してしまう
・ホコリやゴミの被害がある
・作業車が路上駐車をしてしまう
・朝早くや夜遅くまで作業してしまう

・解体前に挨拶にいく
・防塵シートや養生の設置を必ず行う

解体業者とのトラブル

・解体業者の認識違いがある
・業者都合で工事の遅延が起こる
・無断で追加工事をされて追加費用を請求される
・ずさんな整地作業で終了される

・複数者に見積もり依頼をする
・解体実績や口コミを確認する
・会社のホームページを確認する
・追加工事に関する規定を確認する

地主とのトラブル

・解体費用の負担の認識違いがある
・借地権の売却で地主から多額の承諾料を要求される

・借地権を理解する
・弁護士へ相談する

4-2.解体費用を抑えるコツ

解体費用を抑えるコツには、「建物買取請求」と「借地権売却」の2つがあります。

それぞれ詳しく解説します。

4-2-1.建物買取請求権

建物買取請求権とは、借地人が地主に対して、建物を買い取るように請求できる権利です。

しかし、建物買取請求権が行使できるのは、図で解説しているように一定の要件があります。

図4_建物買取請求権の行使に必要な条件

(図4_建物買取請求権の行使に必要な条件)

本来、借地人が解体費用を負担して返還するところを、地主に買い取ってもらうため、売却益を得られます。建物買取請求権はメリットが大きいように感じますが、いくつか満たすべき要件があるため注意が必要です。

建物買取請求権の詳細については、以下の記事を参考にしてください。
▶︎第三者からの建物買取請求権

4-2-2.借地権売却

費用を抑えるコツとして、第三者に対して借地権ごと建物を売却する方法もあります。

建物を買い取ってもらえば、解体する必要がないため、費用を抑えることが可能です。

ただし、借地権を売却する場合、地主に対して「承諾料」の支払いを行います。建物のリフォームを前提として売却するのであれば、「建替承諾料」や「増改築承諾料」が別に必要です。

さらに、買主が住宅ローンを組めるように、地主に対して建物や借地が担保になることを承諾してもらう必要があります。

費用を払えない場合の対処法に関しては、以下の記事を参考にしてください。
▶︎借地の家の解体費用|払えない場合に取れる手段や費用の相場も解説

まとめ

本記事では、借地上に建っている家の解体費用やトラブルに関して、詳しく解説しました。原則として、借地上の建物の解体費用は借地人が支払います。しかし、法律で決まっているわけではなく、地主への交渉も可能です。また、要件を満たしていれば地主へ建物を買い取ってもらう「建物買取請求権」を行使したり、第三者への借地権の売却によって解体費用を抑えたりする方法もあります。しかし、借地上の建物の売却は「地主が許してくれない」などのトラブルに発展するケースがあります。『CENTURY21 中央プロパティー』は、借地権など特殊な不動産を専門に取り扱う不動産仲介会社です。中央プロパティーでは、借地権に強い専任の社内弁護士が初回のご相談時から同席しお客様のトラブル状況をしっかり把握します。もちろん、弁護士相談費用は無料ですので、お困りの際は、ぜひ相談してください。

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この記事の監修者

松原 昌洙マツバラ マサアキ

代表取締役 /
宅地建物取引士

CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。借地権を始めとした不動産トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。

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