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承諾に代わる裁判所の許可の手続
(借地上の建物を売却する場合)|弁護士Q&A

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作成日:
コンテンツ番号:432

承諾に代わる裁判所の許可の手続
(借地上の建物を売却する場合)

質問 Bは地主Aから建物所有目的で甲土地を借り、建物乙を建築し、住んでいます。
しかし、建物乙を売りたいと思うようになり、地主Aに相談したところ、Aからは反対されてしまっています。
やはり、地主の許可はいるのでしょうか。

借地権を持った借地人が借地権を売却する際底地権を持った地主の許可が必要なのか?を表した図

地主の許可がなければ、建物を第三者に売却することはできません。

建物を売ると借地権設定契約はどうなる?

欧米では土地と建物は同一の不動産として扱われますが、日本では別個独立した不動産として扱われます。そして、建物は土地が無ければ当然存在しえません。そのため、建物の移転とともに当然に借地権も移転することになります。さて、民法には下記の規定があります。

民法612条1項:「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」

とあります。上記のように建物を売却すると借地権も伴って移転するため、賃貸人(A)の承諾を得なければなりません。承諾なく譲渡してしまうと、

民法第612条2項:「賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる」

契約の解除をされてしまうばかりか、債務不履行責任を負う可能性すらあります。賃貸人の承諾をしっかりと事前に得るようにしましょう。

地主の承諾がなかなか得られない場合

1. 地主に建物売却の相談を持ち掛けてもなかなか承諾してくれないケースもあります。

そのような場合どのように対処すればよいのでしょう。まずは、交渉に交渉を重ね承諾をもらえるように進めるべきです。承諾料を払えば認めてくれるのでは?という声も聞きますが、承諾料は支払う義務も無ければ、承諾料を提供したとしても承諾する義務も発生しません。
承諾するか否かは地主の自由なのです。しかし、承諾料を支払いますということで、地主が承諾してくれる可能性は高まる場合もあります。

2. 裁判所の許可を得ての譲渡

一向に地主が承諾してくれない。そうなった場合は、

借地借家法19条:「借地権者(※本件ではB)が賃借権の目的である土地の上の①建物を第三者に譲渡しようとする場合において、②その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者(※本件では地主A)がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。

同条2項:「裁判所は、前項の裁判をするには賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。

とあります。つまり、地主が承諾しなくても裁判所が代わりに承諾することで適法に賃借権(本件では借地権)を譲渡することが可能になります。

3. 具体的に必要な要件

それでは、裁判所に許可を求める際に必要な要件を整理していきましょう。

(1) 申立て時期は譲渡前

譲渡した後に裁判所に承諾を求めては遅く、譲渡前に裁判所に申し立てを行う必要があります。

(2) その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者(地主)に不利となるおそれがない

例えば、転貸になる場合でも、地主は従前と変わらない地代を回収できる等の場合は不利になるとは考えられません。すなわち、譲渡先の第三者に資力がしっかりあるのかが重要です。
また、第三者が暴力団関係者などの場合は地主の信用や安全に支障をきたす可能性があるため、不利と判断される可能性はあります。

(3) 借地権者の申し立て

借地権者自ら申し立てを行う必要があります。

(4) 裁判所による変更

裁判所が必要と認める場合は借地の条件の変更や、譲渡を認める代わりに地主に対して金銭を支払うことを命じる場合があります。

(5) 裁判所の考慮事項

裁判所は、許可を与えるか否かの判断をする際には、

  • 賃借権の残存期間

  • 借地に関する従前の経過

  • 賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情

こちらを考慮しなければならないとされています。借地権の更新を1か月前に行った場合には、許可は認められにくくなるでしょうし、逆に残存期間があとわずかであれば、許可される可能性は高くなると考えられます。また、地代をしっかり支払ってきたかなども重要な要素となります。

この記事の監修者

菅原 悠互スガワラ ユウゴ

弁護士

弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で借地非訟手続きや建物買取請求権の行使など今社会問題化しつつある借地権トラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。

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