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国(財務省)や東京都
(地方公共団体)が底地人になった場合|弁護士Q&A

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コンテンツ番号:581

国(財務省)や東京都
(地方公共団体)が底地人になった場合

質問 現在、私は底地を多数保有しておりますが、1. 妻や子等相続の対象になる人がおりません。その際、私が死亡してしまったら、底地はどのようになってしまうのでしょうか。
また、2. 国や地方公共団体が底地人になった場合はどのようになるのでしょうか。借地人が仲の良い友人の為、その点も気になっています。教えて頂けたらありがたいです。

詳細解説

1. 相続対象がいない場合について

(1)相続の原則

(相続の一般的効力)

民法896条:「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」

とあるように、相続が発生すると被相続人に属した一切の権利義務を相続します。債権者としての地位も、債務者としての地位も基本的には「全て」の権利義務を相続人が相続します。

  • 妻や子、や親が代表的な相続人の例になります。

  • 但し書きの「被相続人の一身専属権利又は義務」とは、例えば、扶養請求権のような特定人に専属し他の者に移転しない性質の権利を言います。

本件では、相続人になる人は存在しないようですが、そのような場合にはどのようになるのでしょうか。次の項目で詳細解説して行きます。

(2)相続人がいない場合

相続人がいない場合、その財産はどうなるのか。結論からすると最終的には国庫に帰属(国の所有物)になります。ただ、そうなるのは最終的な話で、段階を踏むことにはなります。相続財産の帰属先の順序ですが、相続人→特別縁故者→国という順序になります

相続人なく死亡→相続財産管理人の選任申し立て→相続財産管理人が選任される→相続債権者・受遺者の確認→相続人創作の公示→相続人不在が確定→特別縁故者からの相続財産分与の申し立て→【認めれれる】特別縁故者へ財産分与、【認められない】国庫に帰属する事を表した図

本件では相続人はいないとのことですので、特別縁故者、国の順で解説して行きます。

特別縁故者について

(特別縁故者に対する相続財産の分与)

民法958条の3第1項:「前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。」

特別縁故者については、上記のような規定があります。相続人がいないからすぐに国庫へ帰属させます!とするよりも、被相続人の生前中に貢献してくれた人がいるのであればそちらに財産を渡すべきですよね。ただ、当然、無制限に認めるわけにはいきませんので、一定の条件のもとに制限をしています。

条件
  1. 被相続人と生計を同じくしていた者

  2. 被相続人の療養看護に努めた者

  3. その他被相続人と特別の縁故があった者

  4. いずれかの者からの請求で家庭裁判所が相当と認めるとき

被相続人の介護を献身的にしていた内縁の妻等が典型例です。このように被相続人に相続人がいない場合でも直ちに国庫へ帰属するようなことにはならず、相続させてしかるべき人へ財産を分配するような仕組みになっています。

遺産イメージ
国について

(残余財産の国庫への帰属)

民法959条:「前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。…」

特別縁故者もいないような場合、相続財産は国庫に帰属(国の所有物)になります。

  • なお、遺産の相続人が不在で国庫に納められた財産の総額が、2017年度は約525億円を超えたとも(毎日新聞2019年1月8日)

2. 国や地方公共団体が底地人になった場合について

(1)法律関係

それでは、上記のように特別縁故者もおらず、相続財産が国庫へ帰属した場合には従前の借地権設定契約はどのようになってしまうのでしょうか。こちらに関しては、従前のままの契約条件が引き継がれます。契約の残存期間も地代の条件も基本的にはすべてそのまま引き継がれます。

  • 都道府県・市区町村に物納された場合も、同様になります。

(2)借地等の売却について

次は国等が底地人の借地権の売却についてです。国が底地人というケースであっても、借地人が借地権を売却したいという場合が出てくると思いますが、その場合はどうなるのでしょうか。個人(法人も)が地主さんの場合には、条件が合えば、借地権の買い取りの申し出により地主さんが借地権を買取る可能性はあります。

ただ、底地を国(財務省等)が所有している場合は、残念ながら借地権の買取は一切行っておりません。そのため、国等が地主の場合に借地権を売却したいとなると、第三者に売却する方法しかないのです。

  • なお、借地人への払い下げ(国が底地を借地人に売ること)には基本的には応じてくれます。
    ただ、国との手続きは複雑なことが多く、やり取りする書類も多くなり非常に煩雑になります(その分時間も要してしまいます)。

当社では国や地方公共団体との交渉についても経験豊富なスタッフが多く在籍しておりますので、まずは一度ご相談してみて下さい。

この記事の監修者

塩谷 昌則シオタニ マサノリ

弁護士

弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。借地非訟、建物明渡、賃料増額請求など借地権や底地権をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。

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