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非堅固建物から堅固建物に
用途変更した場合の地代について|弁護士Q&A

更新日:
作成日:
コンテンツ番号:2904

非堅固建物から堅固建物に
用途変更した場合の地代について

質問 Bさん(借地権者)はAさん(借地権設定者・地主)から建物所有目的で甲土地を借りています。しかし、木造アパートが劣化し、建て替えようと考えました。今度は鉄筋コンクリートのマンションを建築し、家賃収入を考えています。この場合、AB間の借地権設定契約、特に賃料(地代)に変更は必要なのでしょうか?

Aさん(借地権設定者・地主)からBさん(借地権者)は建物所有目的で甲土地を借りています。Bさんが木造アパートを鉄筋コンクリートのマンションに建て替えを行なった図
同じ土地の戸建て→ビルに

地代増額の可能性があります。

詳細解説

原則

まず、契約内容は原則、当事者が自由に決めることができます(契約自由の原則)。地主・借地人両者で従前の地代で同意が出来れば、建物を建て替えても、地代への影響はありません。地代については、法律の関するところではないため、当事者間での合意がそのまま反映されることになります。

次に、一般的にはどう考えるべきかを考察していきましょう。底地権者である地主の立場になって考えてみましょう。非堅固建物である木造アパートから堅固建物である鉄筋コンクリートのビルに変更されると、丈夫な建物に変更されるわけですから、建物の寿命は大幅に伸び、土地が返ってくる可能性が低くなり、また、建物買取請求権を行使された場合には、建物を買い取る金額も高騰することが考えられます。

そうなると、地主としては地代を上げてもらわなければ納得がいかないと思います。非堅固建物から堅固建物に用途変更した場合一定の合理性が認められ、地代は上がるものと考えていいでしょう。

増改築禁止特約について

借地権契約締結の際、契約条項の中に増改築を禁止する特約(増改築禁止特約)をする場合があります。これは、建物の変更があると存続期間が延長してしまうことなどを防止するために当事者間で結ばれる特約になります。

一般に増改築禁止特約がある場合、建物の変更に制限を加えることになるので、通常より地代が安めになっていることが多いです。増改築禁止特約がある場合には、地主側は、改築を承諾する代わりに、地代の値上げの申出をすることは可能です。

【木造】条件変更の有無で建て替え承諾料の金額は変動。①木造を取り壊し木造など(条件変更なし)の場合の建て替承諾料は更地価格の0〜5%程度②木造を取り壊しコンクリートなど(条件変更ありの場合の建て替承諾料は更地価格の10〜15%程度)と示した図

話し合いがまとまらない場合には、借地人(借地権者)は裁判手続をとることが考えられます。

借地借家法17条1項「建物の種類、構造、規模又は用途を制限する旨の借地条件がある場合において(増改築禁止特約)、法令による土地利用の規制の変更、付近の土地の利用状況の変化その他の事情の変更により現に借地権を設定するにおいてはその借地条件と異なる建物の所有を目的とすることが相当であるにもかかわらず、借地条件の変更につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、当事者の申立てにより、その借地条件を変更することができる。

とあり、裁判所の許可があれば、変更可能になります。その際、地主(借地権設定者)の承諾については、

借地借家法17条2項「(増改築禁止特約がある場合)土地の通常の利用上相当とすべき増改築につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、その増改築についての借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。」

とあります。つまり、地主の代わりに裁判所が変わって、増改築の許可を与えることができ、それにより借地権者は正当な権限の元、増改築を行うことが出来ます。ただ、無条件に許可するのでは、当事者間の公平を欠く場合も考えられます。そこで、

借地借家法17条3項「裁判所は…当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。」

としました。当事者間の公平を図るために、財産上の給付や、その他相当と認められる処分(増改築の内容の変更等)をすることにしています。その判断の際には、

借地借家法17条4項「裁判所は借地権の残存期間、土地の状況、借地に関する従前の経過その他一切の事情を考慮しなければならない。

とあります。
周辺の状況や、当事者間の今までの履行の状況(家賃滞納が無いか等)、様々な事情を斟酌してできるだけ当事者間の公平を図るようにしています。

地代についての補足

上記のように地代については原則として、当事者が自由に合意することができます。土地の価格や周辺環境の変化によって、地代が契約締結時のままでは不相当(高すぎたり、逆に安すぎたりする場合)な場合もが出てくることもあり得ます。借地権設定契約際、一定期間経過後は地代を増額するとの取り決めをしておくことも可能です。

もちろん、当事者間での契約内容は原則自由ですので、そのような特約も認められます。しかし、バブル崩壊に見られるように、当初は合理的・相当な特約であっても事情変更により不相当な場合も出てきます。そのような場合は、特約自体が自動的に適用されることはないとされています。考慮事由としては、

  1. 増額の基準を定めるにあたって基礎となっていた事情が失われたこと

  2. 公租公課の減額や土地の価格の下落などの経済事情の変動、あるいは、周辺の同種の土地の地代の額と比較して極めて高い状況となる

などがあると、借地権設定契約時の賃料(地代)増額特約は無効になると考えられます。

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この記事の監修者

塩谷 昌則シオタニ マサノリ

弁護士

弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。借地非訟、建物明渡、賃料増額請求など借地権や底地権をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。

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