地主との関係が複雑でローン承諾書への記入をしてもらえない|トラブル事例|借地権関連
地主との関係が複雑でローン承諾書への記入をしてもらえない
目次
経緯
件契約(AB間の借地権設定契約)書に記載が無かった更新料の件で、地主Bから調停・訴訟を起こされ、最終的にB地主側が訴訟取り下げて、法定更新、更新料の支払いは無い状態となりました。その後、甲マンションの売却をすることになり、超大手不動産仲介業者Cに依頼し、購入申込み者Dと甲マンションの売買契約書を交わしました。
なお、1. 地主Bには、売却をする前にDへの売却のことは連絡・相談をし、承諾を得ています。
2. 購入申込み者Dが、ローンを組みたいということから、地主Bに金融機関の書類に署名捺印を依頼したところ、「金融機関の書類に追記したい内容があり、その内容の追記が出来なければ、署名捺印は出来ない」と言われてしまいました。
金融機関にも相談は行いましたが、地主Bが求める追記が許されず、売却契約自体が白紙(解除)となりました。現在では、その超大手不動産仲介業者Cとの仲介契約は終了しており、マンションも売却出来ず、困っている状態です。
そんな中、貴社のホームページを拝見し、ご連絡をさせて頂きました。
貴社は、借地権の不動産を専門とされた仲介をされているとございましたので、専門家視点から、現状を打開でき、マンションの売却を支援して頂けるのではと思っています。地主Bから承諾を得る何かしらの方法は、ありますでしょうか。
詳細解説
1. マンション売却の際の地主の承諾について
本件のように借地上に自己所有建物があり、その建物を売却する場合には、地主の許可が必要になります。「え!自分が所有している家なのに?」と思うかもしれませんが、家やマンションは土地がないと存在できませんよね。
そのため、家の売却には、その土地の利用権(借地権)もついてくることになります。借地権の付いている家やマンションを売却すると、必然的に借地権も譲渡・売却されます。そうなると、民法の下記規定を考慮しなければなりません。
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
民法612条1項:「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」
同条2項:「賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。」
借地権も賃借権の一種ですから、借地権の譲渡・転貸に該当する場合は、地主への承諾を求めることが必要になります。承諾を得ないで勝手に売却してしまうと、契約を解除されてしまう、ということもありますので、注意が必要です。
本件ですと、地主への事前相談をし、承諾を得ているので、甲マンションの売却と同時に、借地権も適法に譲渡できるようになったと言えます。
2. ローンを組み際の地主の承諾について
「さて、上記のように借地権の譲渡は無事済みそうだ。よかったよかった。」
ところが、地主がDが金融機関からローンを組みたいという承諾書に合意してくれず、ローンが組めません。
「地主は物上保証人でもなければ、関係ないのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、借地上の建物に対して、金融機関がローン契約を結ぶ場合、地主にローン承諾書を求めます。借地人のローン支払いが滞った場合には、ローンを貸している金融機関への通知をするなどの内容があります。
これは、地代が払えない=借地人の経済状態が悪化していると金融機関が把握するためです。いち早く把握することで、ローンの焦げ付きを防ぎたいという思惑があります。
一方の地主にとっては、承諾書の如何によっては条件をのめないケースもあるでしょう。地主はローンの承諾をする義務はありませんので、当然、断れます。断られてしまった場合には、金融機関ローンを組めなくなってしまうのです。そのため、本件Dはローンが組めず、甲マンション売却は破談になってしまいました。
本件での解決策
まず、地主に同意をしてもらうよう交渉することが必要です。交渉って言ってもと思うかもしれませんが、やはりそこは交渉が非常に大切です。もちろん、その交渉の仕方がポイントです。
例えば、借地権などの賃借権が売却される場合、地主(賃貸人)への承諾料を支払うことが通常です。この、承諾料を高くすることで、地主の承諾を得られるように交渉をしていくことが考えられます。
具体的にどのように交渉していくかは、地主と借地人の関係や、ローンの承諾書の内容などによって異なってきますまずは、一度ご相談してみてください。専門家集団がより良い解決策をご提示します。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で借地非訟手続きや建物買取請求権の行使など今社会問題化しつつある借地権トラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。