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「土地を貸すだけなら簡単だしいいかな」
地主に待っていたものとは|弁護士Q&A

更新日:
作成日:
コンテンツ番号:1392

「土地を貸すだけなら簡単だしいいかな」
地主に待っていたものとは

質問 代々から続く土地があるのですが、土地を家屋所有目的で貸してほしいという人が現れました。
売却する予定もないし、土地を貸すだけなら良いかなと思っています。何か注意点はありますか?

土地イメージ

詳細解説

民法(一般法)と借地借家法(特別法)の関係

賃貸借契約をするには、お互いの同意に加えて、その期間を契約時に決めなければなりません。賃貸借契約は基本的に契約期間は自由ですが、これが不動産、しかも、本件のような土地を家屋所有目的(借地権)の場合だとそうはいきません。それはなぜでしょうか。

賃貸借に関する規定を定める民法と、借地借家法についてみていきます。まず、民法です。民法の賃貸借は家や土地などの不動産に限らず、「すべて」の賃貸借契約も含みます。

(賃貸借の存続期間)

民法第604条1項:「賃貸借の存続期間は、二十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、二十年とする。」

(借地権の存続期間)

借地借家法第3条:「借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。」

あれ?と思った方もいるでしょう。「民法では20年を超えることができないとしているのに、借地借家法では30年、民法の規定に違反しているではないか!」

いえいえ、そんなことはないのです。法律には一般法と特別法という関係があります。すなわち、ある事項について一般的な規定をした一般法と、特例を定めた特別法がある場合、その特例に関しては特別法が優先的に適用される原則を「特別法優先の原則」といいます。仮に一般法と特別法が矛盾する場合は、特別法が適用されます。

本件では、一般法の民法と、特別法の民法では存続期間の原則の定めに矛盾がありますが、特別法である借地借家法の方が優先するということです。なお、借地借家法が適用されるのは、借「(土)地」、借「家」のみですので、不動産以外への適用は当然ありません。

借地権の種類 契約時の存続期間更新後の存続期間 

最初の更新二回目以降の更新
 借地法(旧法)旧法上の借地権   堅固建物 期間の定め有30年以上20年以上10年以上
期間の定め無30年20年10年
非堅固建物期間の定め有30年以上20年以上10年以上
期間の定め無30年20年10年
借地権家法(新法)普通借地権  期間の定め有

 
30年以上20年以上10年以上 
期間の定め無


 
30年20年 10年
定期借地権一般定期借地権
50年以上

更新無し

※任期満了後現状回復(更地)
建物譲渡
特約付借地権 
30年以上
建物譲渡に伴い借地権は消滅
事業用借地権
10年以上50年未満
更新無し
※任期満了後現状回復(更地)

土地を貸すとなかなか返ってこない

さて、上記でも述べましたように、借地借家法の適用のある家や土地を貸すと、かなりの期間貸さなければなりません。本件の場合は、建物所有目的で、土地を貸すとのことですので、借地権の設定に当たり、原則として30年以上貸さなければなりません。
もちろん、途中で「返して!」なんて言うことはできません。借り手の立場から考えれば当然です。土地を借りて新しい家を建てて、2、3年で土地を返してと言われても困ります。

日本中でこのようなことが起きたら、住む場所がなくなってしまう人がたくさん出てしまいます。そこで、国は借地借家法という「借り手を手厚く保護する」法律を作りました。30年経って、土地が返ってくる。そうはいきません。

(借地契約の更新拒絶の要件)

借地借家法第6条:「前条の異議(更新に対する異議:※筆者加筆)は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。」

とあります。正当な理由がないと更新を拒絶することができません。原則が更新になっており、強く借地人が保護されています。「一度土地を貸したら、返ってこないと思え」このように言われる理由はこのためです。

確かに、地代の収入が入る、土地の場合は管理がいらなくなるなど、メリットもありますが、貸し出す際は上記点を考慮し、慎重に決めましょう。すでに土地を建物所有目的で貸していて、どうにかならないか、という場合、借地権付きの土地(いわゆる底地)のみでの売却もできます。

また、更新のタイミングが近い場合は、借地人から土地を取り戻すまたとないチャンスです。お困りの方は一度当社までご相談ください。底地・借地のプロ集団が最善策をご提案いたします。

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この記事の監修者

塩谷 昌則シオタニ マサノリ

弁護士

弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。借地非訟、建物明渡、賃料増額請求など借地権や底地権をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。

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