相続した借地権を返還する方法とは?返還と売却の違いを比較
相続した借地権を返還する方法とは?地主への返還と第三者への売却の違いを比較

目次
「遠方に住んでいて管理が難しい」「固定資産税や維持費が負担…」などの理由で、相続した借地権を地主に返還しようと考える人は、多くいらっしゃいます。
ただし、借地権の返還には、建物の解体費用や地主への買取交渉など、考慮すべき点が多く含まれています。
この記事では、借地権の返還方法を紹介するとともに、各方法における費用や注意点なども解説します。

相続した借地権を返還するケース
相続した借地権の返還を考える具体的な事例には、以下のようなものがあります。
ケース | お悩み |
管理の負担 | 遠方居住で管理のため負担が大きい、高齢で維持管理が困難 |
維持費・固定資産税の負担 | 建物の老朽化による修繕費の継続的な発生、空き家にも固定資産税がかかる |
空き家問題、建物の老朽化 | 管理を怠ると空き家の老朽化が進行、特定空き家指定による固定資産税優遇解除のリスク |
地主との関係性 | 将来的な建て替え希望の可能性、契約更新への不安、地主とのコミュニケーション不足による将来的な関係への不安 |
その他、経済的な理由 | 借地権付きの家が売却困難または希望価格で売れない、維持費や税金の支払いを続けるよりも手放して経済的負担を減らしたい |
このようなお悩みがある場合は、借地権を返還する(手放す)という選択肢が、適切です。
借地権を地主に返還する方法
借地権を地主に返還する方法は、主に以下の二つです。
- 更地にして返還する
- 建物を買い取ってもらう
更地にして返還する
更地返還は、借地契約が終了する際に、借地人が自身の責任と費用負担において借地上の建物を取り壊し、土地を何もない状態(更地)にしてから地主に返す方法です。
通常、借地人の義務として「原状回復義務」が定められています。これは、借りた土地を元の状態に戻して返すという考え方に基づきます。そのため、特別な取り決めがない限り、建物を解体して更地で返還するのが原則となります。
借地人が建物解体費用を負担します。この費用は建物の規模や構造により数百万円以上かかることもあり、返還時の大きな負担となり得ます。
土地の返還にあたり、借地権の対価として金銭を受け取ることは基本的にありません。権利の放棄に近い形となります。
返還の時期や原状回復の具体的な範囲(どこまで解体・整地するか)について、事前に地主とよく協議し、合意しておく必要があります。
② 建物を買い取ってもらう(建物買取請求権の行使など)
借地契約が終了する際に、借地人が地主に対して、借地上の建物を時価で買い取るよう求める方法です。
これには、法律で定められた権利(建物買取請求権)を行使する場合と、当事者間の交渉で合意する場合があります。
建物買取請求権(借地借家法第13条)を行使する場合
借地契約が期間満了を迎え、かつ契約の更新がなされない場合に、借地人は地主に対して建物を時価で買い取るよう請求できます。この権利を行使すれば、地主は原則として買い取りを拒否できません。ただし、借地人の地代滞納など、債務不履行によって契約が解除された場合には、この権利は行使できません。
交渉による買取の場合
上記の建物買取請求権の要件を満たさない場合でも、地主がその建物を活用したいと考えているなどの事情があれば、交渉によって建物を買い取ってもらえる可能性があります。
ただし、これはあくまで当事者間の合意に基づくもので、法的な強制力はありません。
借地権を返還するメリット
借地権を返還するメリットは、以下があります。
- 地主との紛争を回避する
- 経済的な負担がなくなる
- 管理の手間がなくなる
1. 地主との紛争を回避する
借地権は、土地の所有者である地主と、土地を借りる借地人との契約関係に基づきます。
契約関係にある以上、地代の値上げ交渉、契約更新時の更新料、建物の増改築や建て替えに関する承諾など、様々な場面で意見の対立が生じる可能性があります。交渉が不調に終われば、調停や訴訟といった法的な手続きに発展することも少なくありません。
借地権を返還することで、これらの潜在的な紛争の種を根本からなくすことができます。将来にわたる地主との煩わしい交渉や、それに伴う精神的なストレスから解放される点は、大きなメリットと言えるでしょう。
2. 経済的な負担がなくなる
借地権を維持するためには、継続的な経済的負担が伴います。
毎月支払う地代はもちろんのこと、契約更新時にはまとまった額の更新料が必要となる場合があります。
また、建物の建て替えや大規模な修繕を行う際には、地主に対して承諾料を支払うケースも一般的です。これらの費用は、景気や周辺の土地価格の変動によって上昇する可能性も否定できません。
借地権を返還すれば、地代、更新料、承諾料といった支出から解放されます。
3. 管理の手間がなくなる
借地上の建物の維持管理は、原則として借地人の責任において行われます。
建物の修繕、庭の手入れ、場合によっては近隣住民との調整など、様々な管理業務が発生します。
特に、相続などで取得したものの遠方に住んでいる場合や、高齢化により管理が難しくなった場合には、これらの手間は大きな負担となり得ます。
また、地主との定期的な連絡や、契約更新に関するやり取りなども必要です。
借地権を返還することで、これらの物理的・時間的な管理業務から解放されるメリットがあります。
借地権を返還する際の注意点
借地権を返還する際の注意点は、以下の通りです。
- 建物の解体費用を負担する必要がある
- 地主への条件交渉が発生する
建物の解体費用を負担する必要がある
借地契約においては、契約終了時に借地人が自費で土地上の建物を解体・撤去し、土地を更地にして地主に返還する「原状回復義務」が定められているのが一般的です。
そのため、借地権を返還する際には、原則として借地人が建物の解体費用を全額負担する必要があります。建物の規模や構造、アスベストの有無などによっては、解体費用は数百万円から一千万円を超えることもあり、非常に大きな経済的負担となります。
この費用を捻出できないことが、返還の大きな障壁となるケースも少なくありません。契約内容によっては例外もありますが、まずは解体費用負担の覚悟が必要です。
地主への条件交渉が発生する
借地権の返還は、借地人が一方的に通告して完了するものではなく、地主との合意形成が必要です。
具体的には、返還の時期、原状回復の範囲(どこまでを解体・撤去するか)、そして最も重要な建物の解体費用をどちらがどれだけ負担するか、といった点について地主と交渉し、条件を取り決める必要があります。
地主側にも「すぐに返還されても困る」「解体費用は負担したくない」などの意向があるため、交渉がスムーズに進むとは限りません。場合によっては、返還条件で折り合いがつかず、交渉が長期化したり、弁護士などの専門家を介する必要が生じたりすることもあります。
相続した借地権を返還する手続きの流れ
借地権を地主に返還する場合、一般的に以下のステップで手続きを進めます。
- 地主への意向の伝達
- 地主との協議・交渉
- 合意書の作成
- 建物の取り壊し・原状回復(必要に応じて)
- 借地契約の解約手続き
- 土地の返還
借地権返還で最も重要なのは、地主との丁寧な協議による円満な合意形成です。
特に建物解体費用などの条件を明確にし、後々のトラブルを防ぐため、合意内容は必ず書面(合意書)で残しましょう。
地主への交渉が難しい場合は、借地権の専門家への相談も検討してください。
借地権の返還と売却の違い
借地権は、地主に返還する以外に第三者に売却することも可能です。
地主への返還は、金銭的な見返りは期待できませんが、地主との関係を清算し、将来的な負担(地代、更新料、管理)から解放されたい場合に選択肢となります。
ただし、建物解体費用の負担がネックになることがあります。
第三者への売却は、借地権の価値を金銭に換えたい場合に有効な方法です。
しかし、借地権を第三者に譲渡する場合は、地主の承諾が必要であり、承諾が得られないケースや高額な承諾料を要求されるリスクがあります。
第三者への借地権の売却は、借地権に詳しい不動産会社に仲介を依頼することで、トラブルのない迅速な取引が実現します。
地主への返還 | 第三者への売却 | |
金銭的な対価 | なし | あり |
建物の解体費用 | 借地人負担が原則 | 解体不要の場合もある |
地主の承諾 | 必要 | 必要 ※ |
※センチュリー21中央プロパティーでは、地主の承諾なしで売却可能です
借地権の返還や売却ならご相談ください
借地権の返還は、無償でできるケースは稀で、更地での返還が原則となります。
また、建物を地主に買い取って貰う方法もありますが、買取価格は第三者への売却よりも大幅に低くなる可能性が高いです。
金銭的な対価を好条件で得るには、第三者に借地権を売却するのがおすすめです。
センチュリー21中央プロパティーでは、建物の解体不要で借地権を売却することが可能です。また、地主の承諾が得られない場合も、独自のノウハウと販売ルートにより、そのままの状態で購入してくれる買主を探すことができます。
借地権の返還や売却なら、センチュリー21中央プロパティーへご相談ください。

この記事の監修者
弁護士
弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。借地非訟、建物明渡、賃料増額請求など借地権や底地権をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。