借地権の相続税評価額とは?路線価と借地権割合を使った計算方法
目次
借地権の相続税評価額とは、相続税を計算する際に、相続財産である借地権に付けられる金銭的な評価額のことです。この評価額に基づいて相続税が課税されます。
借地権は、土地を借りて建物などを所有する権利であり、土地そのものではないため、その評価方法は自用地(更地)とは異なります。
この記事では、路線価と借地権割合を使った相続税評価額の計算方法を解説します。
借地権の相続税評価額とは
借地権の相続税評価額とは、相続税を計算する際に、相続財産としての借地権にどれだけの価値があるのかを数値化したものです。
相続税はこの評価額を基準に算出されるため、借地権を相続する場合、最初に確認すべき非常に重要な指標となります。
借地権は、土地そのものの所有権ではなく、「土地を使用する権利」です。
そのため、更地(=自用地)とは評価方法が異なる点が大きな特徴です。
借地権の相続税評価額は、主に次の指標を使って算定されます。
- 路線価(国税庁が毎年公表する1㎡あたりの土地評価額)
- 借地権割合(地域ごとに30〜90%で設定される、借地権の価値を示す割合)
これらを組み合わせることで、借地権の相続税評価額が算出できます。
借地権は所有権と異なり、地主との契約条件によって価値が大きく変わるため、
「路線価 × 借地権割合」を使う評価方法は、借地権の特性に合わせて設計された計算方法といえます。
借地権の相続税評価額が必要となる場面
借地権の相続税評価額が活用される代表的な場面は、次の2つです。
- 借地権を相続・贈与するとき
- 借地権を売却するとき
① 借地権を相続・贈与するとき
借地権を相続や贈与によって受け継ぐ場合、その借地権がいくらの価値を持つのかを可視化するために相続税評価額の算出が必要です。
この評価額を計算する際には、
- 借地権価格(自用地評価額 × 借地権割合)
- 借地権割合(国税庁が地域ごとに設定)
といった数値を使用します。
借地権割合は30〜90%の範囲で定められており、地域の地価水準や借地権の市場性を反映したものです。
相続税はこの借地権の評価額を基礎にして算出されるため、「相続税がどれくらいかかるのか」を把握するためには欠かせない計算となります。
② 借地権を売却するとき
借地権は財産として価値があるものとみなされているため、売却することも可能です。
売却価格を検討する際、相続税評価額(=借地権価格)は参考値として用いられます。
ただし、実際の売却価格は借地権価格だけで決まるわけではありません。借地権は権利関係が複雑で、次のような条件によって大きく変動します。
- 物件の立地条件
- 建物の築年数・状態
- 地代や更新料など契約条件
- 借地権の残存期間
- 地主の承諾が必要かどうか
- 周辺の不動産市場の動向
こうした複数の要素を総合的に判断して、実際の売却価格が決まります。
そのため、借地権価格は「売却時に目安となる数値」でありながら、実勢価格とは必ずしも一致しない点に注意が必要です。
借地権の相続税評価額を計算する方法
ここでは、普通借地権の具体的な相続税評価額の計算方法について解説します。
普通借地権の相続税評価額の計算式は、以下の通りです。
普通借地権の評価額=
自用地としての評価額×借地権割合
実際の数値を使って、計算のシミュレーションをしてみましょう。
土地の路線価を計算して、そこに借地権割合を掛けます。
- 土地の路線価は30万円/㎡
- 土地の大きさは100㎡
- 借地権割合は80%
300,000×100㎡=30,000,000
30,000,000×80%=24,000,000円
シミュレーションはあくまで目安です。
実際は土地の形や状態などを考慮した計算を行うため、単純な計算式で求める数値とは異なる結果になることもあります。
説明が前後してしまいましたが、自用地としての評価額は、路線価を用いて計算していく必要があります。
自用地としての評価額=
路線価×土地の面積×各種補正率
路線価とは
路線価とは、国税庁が公表している、道路に接する宅地1平方メートル当たりの評価額のことです。
相続する土地が面している道路の種類や状況によって定められています。
土地の面積は、相続の対象となる土地全体の広さです。登記簿謄本などで確認できます。
各種補正率は、土地の形がいびつであったり(不整形地)、道路に接する幅が狭かったり(間口狭小)、高低差があったり(傾斜地)する場合など、その土地の個性に応じて評価額を調整するために用いられる割合です。
参考:国税庁 路線価
借地権割合とは
借地権割合とは、その土地の更地価格に対する借地権の価格の割合を示すものです。
借地権割合は、地域や借地契約の内容などによって異なりますが、国税庁が地域ごとに30%から90%の間で定めて公表しています。
■路線価図の記号と借地権割合の対応表
| 記号 | 借地権割合 |
| A | 90% |
| B | 80% |
| C | 70% |
| D | 60% |
| E | 50% |
| F | 40% |
| G | 30% |
ちなみに、路線価図は1㎡あたりの路線価が千円単位で表記されています。
例えば「300D」と表記されていたら、路線価は1㎡あたり30万円、借地権割合は60%ということになります。
路線価が設定されていない場合
なお、場所によっては路線価が設定されていないこともあります。こういったときは倍率方式を用いれば、借地権の相続税評価額が計算可能です。
自用地としての評価額=固定資産税評価額×倍率
まずは国税庁のWebサイトで評価倍率表を開き、土地の評価倍率を調べます。
そして調べた評価倍率と、土地の固定資産税評価額を掛けて計算します。固定資産税評価額は固定資産税の額を出すために使う指標です。固定資産税の納税通知書に記載されています。
倍率方式を使った計算のシミュレーションをしてみましょう。
- 固定資産税評価額が3千万円
- 土地の評価倍率が1.1倍
| 30,000,000×1.1=33,000,000円 |
より正確な相続税評価額が知りたいときは不動産鑑定士に依頼する方法もあります。
【応用編】定期借地権の相続税評価額は「残存期間」で決まる
定期借地権は、契約期間満了後に土地を更地にして返還することが原則であるため、残りの期間が短くなるほど、その価値(評価額)は下がるという特徴があります。
定期借地権の評価額は、普通借地権のように単純に「自用地評価額 × 借地権割合」では計算できず、以下の要素を考慮します。
- 残存期間に応じた計算
借地権の価格を基に、複利年金現価率や中間利息控除といった複雑な計算を適用し、残りの期間の価値に換算します。 - 建物譲渡特約付借地権の評価
期間満了時に地主が建物を買い取る特約がある場合は、建物の買取価格を考慮した別の計算方法が適用されます。
定期借地権の評価は専門性が高いため、正確な相続税評価額を知るためには、必ず相続税に強い税理士に相談してください。
地代を支払っていない場合の評価(使用貸借との区別)
相続した建物が建っている土地について、被相続人が地主に対して地代を一切支払っていない、あるいは極めて低い地代(固定資産税程度)しか支払っていない場合は注意が必要です。
この場合、「借地権」ではなく「使用貸借権」とみなされる可能性があります。
使用貸借権には財産価値がないとされ、原則として相続税評価額はゼロになります。
つまり、土地は自用地として全額地主の財産として評価され、相続人は借地権としての評価額を申告する必要がなくなります。
ただし、過去の経緯や契約書の内容により判断が異なるため、安易に「使用貸借」と判断せず、専門家による確認が必須です。
土地の上に建物がない場合の評価
被相続人が借地権を所有していたものの、何らかの理由でその上に建物が建っていない(更地の状態)の場合も評価方法が異なります。
まず、借地契約自体が有効に存続しているか(解約されていないか)を確認します。
契約が存続している場合、借地権は依然として価値を持つため、土地の上に建物が建っている場合と同様に、自用地としての評価額 × 借地権割合で評価することが基本となります。
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今回は借地権の相続税評価額を計算するための基礎知識と計算例について解説しました。
あくまで目安ではありますが、路線価と借地権割合がわかっていれば、借地権の相続税評価額が計算できます。
相続税評価額がわかれば、相続税や贈与税の計算ができるので、税負担の目安の把握が可能になるというわけです。
センチュリー21中央プロパティーは、借地権を専門に取り扱う売買仲介会社として、売却やトラブルのサポートを通じて、これまで多くのお客様のお悩みを解決してきました。
相続した借地権の扱いでお困りの方・売却を検討している方は、ぜひ中央プロパティーへご相談ください。
この記事の監修者
公認会計士・税理士
公認会計士。東京都出身。高岡徹税理士事務所代表。大手監査法人入所後、公認会計士登録を経て独立。以前、講師を務めていた経験もあり、借地権に関わる難解な会計処理・対処すべき課題を分かりやすく解説することが得意。大手企業からベンチャー企業、役員個人の会計にも携わっており、幅広い知識を持っている。