【節税】借地権の相続税対策に定期借地権が有利な理由とは?
目次
相続財産の中でも、評価額の計算が複雑で負担が大きくなりがちな「借地権」。
その中でも「定期借地権」は、時間の経過とともに相続税評価額が下がるという特殊な性質を持っており、うまく活用すれば強力な節税対策になります。
本記事では、なぜ定期借地権が有利なのか、その仕組みと計算シミュレーション、そして利用時の注意点をわかりやすく解説します。
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そもそも「定期借地権」とは?
定期借地権とは、あらかじめ契約期間が決まっている借地権のことです。
従来の借地権(普通借地権)が「一度貸したら半永久的に返ってこない」リスクを持つのに対し、定期借地権は期間満了で確実に契約が終了します。
地主は安心して貸し出せ、借地人は比較的安価に土地を利用できるのが特徴です。
定期借地権の仕組みと普通借地権との決定的な違い
普通借地権と定期借地権の最大の違いは、更新の有無です。
- 普通借地権:正当な理由がない限り、更新され続ける(半永久的)。
- 定期借地権:更新がない。期間満了で必ず終了し、原則更地にして返還する。
この「将来必ず権利がなくなる」という確実性が、相続税評価額を大きく下げる要因となります。
定期借地権の種類
定期借地権には、利用目的や期間により、以下の3つの種類があります。
- 一般定期借地権(50年以上)
- 建物譲渡特約付借地権
- 事業用定期借地権等
種類①:一般定期借地権(50年以上)
主にマイホームやマンション用です。
50年以上の契約期間とし、終了時は建物を解体して更地返還します。
「更新なし」「再築による延長なし」「建物買取請求なし」の特約を結ぶのが一般的です。
種類②:建物譲渡特約付借地権
契約期間満了時(30年以上)、地主が建物を買い取ることで借地権を終わらせるタイプです。
借地人は解体費用がかからず、地主は建物を賃貸などで再利用できます。
種類③:事業用定期借地権等
店舗やレストランなど、事業専用の建物を所有するための借地権です(10年以上50年未満)。
公正証書での契約が必須となります。
【前提知識】相続税の基礎控除と借地権課税の基本
そもそも借地権は、土地や建物と同じく「不動産」として相続税がかかります。
評価額は、更地価格に「借地権割合(30〜90%)」を掛けて計算します。
| 借地権の評価額 = 自用地評価額(路線価等) × 借地権割合 |
都市部は借地権割合が高く(60〜70%)、土地を持っていなくても高額な税金が発生しがちです。
基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超えるケースも多いため注意が必要です。
定期借地権が相続税対策として有利である3つの理由
定期借地権が相続税対策として有利である理由は、主に以下の3点です。
- 所有権に比べて相続税評価額が低く、納税時の現金支出を抑えられるため
- 契約残存期間に応じて相続税評価額が減額されるため
- 小規模宅地等の特例との併用で相続税評価額のさらなる減額が可能であるため
理由①:所有権に比べて相続税評価額が低く、納税時の現金支出を抑えられるため
土地の所有権を相続する場合、その評価額は高額になりがちですが、借地権(定期借地権)であれば、土地そのものを相続するよりも評価額を低く抑えることができます。
相続税の負担が軽減されるため、納税のために手元の現金を大きく切り崩すリスクを減らし、大切な資金を温存しやすくなります。
理由②:契約残存期間に応じて相続税評価額が減額されるため
これが最大の特徴です。
普通借地権の評価額はずっと一定ですが、定期借地権は「あと何年使えるか(残存期間)」で評価されます。
契約満了に近づくほど評価額は下がり、相続税も安くなります。
理由③:小規模宅地等の特例との併用で相続税評価額のさらなる減額が可能であるため
定期借地権でも要件を満たせば「小規模宅地等の特例」が使えます。
自宅敷地なら330平米まで80%減額されるため、定期借地権自体の評価減と合わせれば、課税対象となる相続税評価額の大幅な引き下げ(圧縮)が可能です。
定期借地権の相続税評価額が決まる仕組み
定期借地権の場合、なぜ期間が経つと評価額が下がるのか、その仕組みを解説します。
【ポイントは残存期間】期間が経過するほど評価額は下がる
定期借地権の価値は「土地を利用できる期間」に比例します。
残り期間が50年なら価値は高く、残り0年に近づくほど価値はゼロになります。
最終的に返還義務があるためです。
【難しい計算式をわかりやすく解説】なぜ期間経過で安くなる?
定期借地権の評価には「複利年金現価率」という係数を使います。
「複利年金現価率」 = 将来の価値を割り引く係数が関係している
簡単に言えば「50年使える権利より、残り5年しか使えない権利の方が価値は低い」という考え方を計算式にしたものです。
期間満了(返還)が近づくにつれて、資産価値はゼロに近づく
ゴール(返還)が決まっているため、利用可能期間が減るにつれて、税務上の評価額も自動的に下がっていく仕組みになっています。
【シミュレーション】残り50年と10年で相続税評価額はいくら違う?
自用地評価額5,000万円、借地権割合60%の場合のイメージです。
| 残存期間 | 評価のイメージ |
| 残り50年 | まだ期間が長いため、借地権割合に近い評価(約3,000万円前後)。 |
| 残り10年 | 利用期間がわずかなので、数百万円〜数万円単位まで大幅に下がる。 |
このように、相続時期が後半になるほど節税効果は高まります。
正確な価値を知りたい場合は、専門的な査定が必要です。
なお、センチュリー21中央プロパティーでは、国家資格者である不動産鑑定士とAIのダブル査定制度を導入しており、24時間以内に客観的かつ適正な査定額を算出することが可能です。
定期借地権を相続する際のデメリットと注意点
定期借地権を相続し、保有し続ける際の注意点は、主に以下の通りです。
- 契約期間満了時に更新がなく更地返還が必須
- 原則として中途解約ができず流動性が低い
- 権利金や保証金の授受に関する税務上の注意
- 融資(住宅ローン)の利用条件が厳しくなる傾向がある
注意点①:契約期間満了時に更新がなく更地返還が必須
最大のデメリットです。
期間が来れば、愛着ある家でも解体して更地で返さなければなりません。
永住はできず、解体費用の準備も必要です。
注意点②:原則として中途解約ができず流動性が低い
原則、途中解約はできません。
住まなくなっても地代の支払い義務が残ります。
売却も可能ですが、残り期間が短いと買い手がつきにくく、価格も下がります。
注意点③:権利金や保証金の授受に関する税務上の注意
契約時の「権利金」や「保証金」の扱いに注意が必要です。
金額や授受の方法によっては贈与税がかかったり、保証金が相続財産に含まれたりします。
注意点④:融資(住宅ローン)の利用条件が厳しくなる傾向がある
担保価値が将来ゼロになるため、住宅ローンの審査が厳しくなったり、期間が制限されたりすることがあります。
これは売却時のハードルにもなります。
【出口戦略】既に保有している普通借地権の相続税対策
「普通借地権」は評価額が高止まりするため、以下のような対策(出口戦略)が必要です。
- 納税資金を作るための「借地権売却」と地主承諾
- 地主との関係を完全解消する「底地との等価交換」
- 生前贈与を活用した将来的な相続財産の圧縮
対策①:納税資金を作るための「借地権売却」と地主承諾
借地権を売却して現金化する方法です。
ただし、売却には地主の「承諾」が必須で、交渉が難航することも少なくありません。
当社センチュリー21中央プロパティーでは、地主との交渉は全て専門家が代行するため、地主と揉めている場合や関係が悪化している場合でも、現状のままでトラブル解決・売却が可能です。
また、センチュリー21グループの広範なネットワークとオークション形式を駆使し、富裕層投資家や不動産投資法人へアプローチすることで、最高値での売却を実現します。
対策②:地主との関係を完全解消する「底地との等価交換」
借地権と底地の一部を交換し、お互いが「完全な所有権の土地」を持つ方法です。
権利関係がクリアになり、資産価値や流動性が向上します。
対策③:生前贈与を活用した将来的な相続財産の圧縮
元気なうちに子供へ借地権を贈与する方法です。
「相続時精算課税制度」などを使い、計画的に資産を移すことで将来の負担を減らせます。
まとめ:定期借地権の特性を正しく理解し、最適な相続税対策を
定期借地権は、期間経過で評価額が下がる有効な節税策ですが、「必ず更地で返す」という大きな制約があります。
現在「普通借地権」をお持ちの方は、売却や等価交換も含めた幅広い検討が必要です。
センチュリー21中央プロパティーでは、借地権トラブルや売却に豊富な実績を持つ社内弁護士が常駐しており、いつでも法的な観点からの的確なアドバイスや、契約書等の重要書類のチェックが可能です。
司法書士や税理士、不動産調査士といった各種士業との連携により、相続や税務を含む借地権トラブル・売却をワンストップで確実にサポートします。
地主様との交渉から相続税評価まで、お客様の状況に合わせた解決策を柔軟にご提案します。
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借地権の相続税対策に関してよくある質問
借地権の相続税対策に関して、よくある質問とその回答をご紹介します。
Q1.定期借地権を相続放棄した場合、建物はどうなりますか?
A.放棄しても管理責任は残ります。
次の管理者が決まるまで管理義務が続き、地代支払い義務も消えません。
専門家への相談が必要です。
Q2.相続した定期借地権を第三者に売却することは可能ですか?
A.可能ですが、地主の承諾と残存期間がポイントとなります。
地主の承諾が必須です。
また、残存期間が短いと価格がつかない可能性があります。
Q3.定期借地権の期間満了時、立退料は請求できますか?
A.原則、請求できません。
「更新なし・終了」が前提の契約なので、立退料を受け取る権利はありません。
Q4.借地権の評価額計算に必要な路線価はどう調べますか?
A.国税庁の「路線価図」で確認できます。
国税庁サイトで該当地域の地図を見れば、路線価と借地権割合(記号)がわかります。
この記事の監修者
税理士
ワールド法律会計事務所 代表/税理士
ワールド法律会計事務所の代表を務める、借地権・不動産税務のスペシャリスト。東京税理士会日本橋支部所属(登録番号 117651)。
特に借地権の評価や譲渡に関する税金問題、地代・更新料の税務処理など、借地権にまつわる税務相談を得意分野としている。
生前贈与や親族間の不動産売買、相続対策など、多岐にわたる不動産税務全般にも豊富な経験と実績を持つ。税務の専門知識と実践的なアドバイスで、複雑な不動産税金問題を最適化し、お客様の賢い資産形成をサポートする。