借地権の更新料を適正額で請求する方法、過去分の請求は可能?|借地人とのトラブル
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借地権の更新料を適正額で請求する方法、過去分の請求は可能?

借地権の更新料は法律で一律に定められていないため、地主様と借主の間で最もトラブルが起きやすい項目です。

本記事では、更新料を請求するための法的条件や、更地価格の3〜5%とされる適正相場、さらに気になる過去分の遡及請求と時効(5年)について、最新の判例を交えて分かりやすく解説します。

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借地権の更新料は「当然に」請求できる?

結論から申し上げますと、借地借家法(および旧借地法)の中には「借主は更新料を支払わなければならない」という直接的な規定は存在しません。

つまり、法律上「更新料の支払いは義務である」と一律に定められているわけではないのです。これが、更新料を巡るトラブルが後を絶たない根本的な理由です。

請求が可能になる2つの条件

法律に規定がない以上、更新料を請求するためには以下のいずれかの条件を満たしている必要があります。

  • ①契約書に「更新料を支払う」旨の特約がある


賃貸借契約書の中に「更新の際には更新料として〇〇円(または算定基準)を支払う」と明記されている場合です。この場合、契約自由の原則に基づき、借主には支払義務が生じます。

  • ②地域に確固たる慣習があり、双方が合意している

特約がなくても、その地域(特に東京などの都市部)において更新料を支払う慣習が確立しており、地主と借主の間で「今回も慣習に従って支払う」という黙示の合意がある場合です。

【重要】特約がない場合の注意点

契約書に更新料の記載がなく、かつ借主が「支払う義務はない」と主張した場合、裁判所は「特約がない限り、更新料の支払義務は当然には発生しない」と判断する傾向が非常に強いです。


「昔からの付き合いだから」「近所はみんな払っているから」という理由だけでは、法的強制力を持たせるのは難しいのが実情です。

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更新料の相場と算定方法

更新料を請求できる状況であっても、次に問題になるのが「金額」です。

地主様が提示した金額が「高すぎる」として紛争になるケースが多いため、客観的な相場を知っておく必要があります。

一般的な相場:更地価格の3%〜5%程度

裁判例や実務において、一つの目安とされているのが以下の基準です。

  • 更地価格(土地の時価)の3%〜5%程度
  • 借地権価格の5%〜10%程度

例えば、更地価格が5,000万円の土地であれば、150万円〜250万円程度が更新料の一つの目安となります。

算定に影響する要素

金額は一律ではなく、以下の要素を総合的に判断して調整されます。

  • 土地の時価(路線価や公示地価): 地価が高いエリアほど更新料も高額になります。
  • 借地権割合: 路線価図に記載されている「A(90%)」〜「G(30%)」などの割合です。都心部ほど借地権の価値が高いため、更新料も高くなる傾向があります。
  • 賃料(地代)の状況: 普段の地代が相場よりも著しく安く据え置かれている場合、更新料を多めに受け取ることでバランスを取るという考え方が裁判所で認められやすくなります。

【計算例】3,000万円の土地(借地権割合60%)の場合

  • 更地価格基準(5%の場合): 3,000万円 × 5% = 150万円
  • 借地権価格基準(10%の場合): 3,000万円 × 60%(借地権割合) × 10% = 180万円

このように、150万円〜180万円程度が交渉のスタートラインとなります。

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過去分の更新料は請求できる?【時効・実務対応】

「前回の更新時にバタバタしていて請求しそびれた」「借主が『お金がない』と言うので待ってあげていたが、そのままになっている」というケースは意外と多いものです。

過去分の更新料請求が認められる条件

結論から言えば、過去の分を遡って請求することは可能ですが、条件は厳格です。

  1. 契約書で遡及請求可能と明示されている
    「過去に未払いの更新料がある場合、次回の更新時に合意の上支払う」といった条項や、明確な支払合意書がある場合です。
  2. 請求権があることを通知している
    更新時期に「金額は追って協議するが、更新料は請求する」という意思表示を文書で行っていた場合、権利を放棄していないと見なされやすくなります。

ただし時効(民法5年/10年)が適用される

更新料の請求権にも「時効」が存在します。

  • 定期給付債権としての時効: 一般的に更新料の請求権は5年で消滅時効にかかると解釈されるケースが多いです(民法166条1項1号)。
  • 更新から5年以上経過している場合、借主から「時効である」と主張(援用)されると、法的に回収することは困難になります。

借地権の更新料に関する判例2選

更新料については、まず「契約書に記載があるか」が最大の分岐点となります。

その上で、金額の妥当性が争われます。実際の裁判例を見てみましょう。

判例① 更新料の適正額が争われた事例

この事案では、地主側が請求した更新料が「借地権価格の一定割合」という基準に基づいたものであり、その正当性が争われました。

  • 争点:
    借地人が「地主の提示額は高すぎて不当だ」として、支払いを拒否。
  • 裁判所の判断:
    裁判所は、「更地価格の3%〜5%程度」または「借地権価格の5%〜10%程度」を算定基準とすることは、都内の借地慣行に照らして合理的であると認め、地主側の請求を概ね認めました。
  • 妥当と認めた理由:
    • 地代の低さ: 月々の地代が長年据え置かれていたことを考慮。
    • 更新による利益: 借主が今後数十年にわたり土地を独占的に利用できる経済的利益は大きいと判断。
    • 慣習の存在: 周辺地域で更新料の授受が一般化している実態を重視。

判例② 過去分の更新料請求が認められた事例

通常、過去の更新料を後から請求するのは困難ですが、この判例では「遡及請求」の一部が認められました。

  • 事案の概要:
    契約書に「更新料を支払う」という明確な特約があったが、地主が数回前の更新時に請求を失念。後の更新時にまとめて請求したケース。
  • 裁判所の判断:
    契約書に明確な義務(支払うものとする)が記載されており、かつ「時効」にかかっていない範囲において、地主の請求を認めました。
  • 通知・証拠の重要性:
    地主が過去の更新時にも「金額は後日提示する」といった旨を伝えていた証拠があり、権利を放棄していないと見なされたことが勝因となりました。

これらの判例から、裁判所は単独の要素ではなく、以下3つの相関関係を「総合判断」していると言えます。

  1. 地代と更新料のバランス:
    長年地代を据え置いてきた事実は、更新料を認める有力な補完事情となります。
  2. 利用利益の程度:
    借主がその土地を長期間独占利用することによって得られる経済的利益を、更新料が超えていないか。
  3. 交渉の経緯:
    強引な要求ではなく、借主の資力や事情を考慮した柔軟な提案があったか。

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地主が更新料の請求で注意すべき5つのポイント

判例を分析し、地主が更新料を請求する際に注意すべき点は、以下の通りです。

1. 契約書の内容は明確か

判例上、更新料請求が認められる最大の根拠は契約書内の特約です。 

「慣習に従い支払う」といった曖昧な表現ではなく、「更新の際は、更地価格の〇%または算定基準に基づいた額を支払うものとする」と明記することが不可欠です。

特約がない場合は、次回の更新時に「更新料支払合意書」を別途締結し、契約の適正化を図る戦略的なアプローチが求められます。

2. 更新料の金額算定が適正か

地主側の主観的な金額提示は、裁判所によって「公序良俗に反する」と棄却されるリスクがあります。 

交渉の際は、路線価や公示地価、不動産鑑定評価書などの公的エビデンスに基づき、「更地価格の3%〜5%」という実務上の標準値を提示することが、借主を納得させる最短ルートです。

3. 過去分の請求は5年以内に行う

遡及請求は、過去に「請求権を放棄していない」ことを証明できるかどうかにかかっています。

更新料の消滅時効は原則として5年(民法166条1項1号)です。

過去の更新時から5年が経過する前に、内容証明郵便による「催告」を行い、時効の完成を猶予させるなど、法務スケジュールに基づいた厳密な管理が回収の成否を分けます。

4. できるだけ書類を残し保管しておく

裁判所は、当事者間の「黙示の合意」を探ります。 

当時の契約書はもちろん、支払いを約束した際の打合せメモ、過去の領収書(更新料名目での入金記録)、通知書の控えなどの証拠群を整理してください。

これらは「過去に更新料を支払う合意があった」ことを証明する間接証拠として、裁判で極めて重要な役割を果たします。

5. 通知・交渉の手順を正しく踏む

感情的な対立を避け、事務的に、かつ法的に有効な手順を踏むことが肝要です。 

まずは内容証明郵便を用い、算定根拠、支払期限、振込先を明示した通知を送付します。

このプロセス自体が「誠実に協議を尽くした」という証跡となり、万が一訴訟へ移行した際、地主側の正当性を裏付けるポジティブな判断材料となります。

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まとめ|借地人とのトラブル・交渉のお悩み受付中

更新料の請求は、地主様と借地人の信頼関係に大きく関わります。判例に基づいた正しい知識を持たずに無理な請求をすると、借地人が意固地になり、解決まで遠回りをしてしまうことも少なくありません。

  • 「特約がない場合、いくら請求できるのか?」
  • 「過去に支払われなかった更新料を今からでも回収したい」
  • 「借地人が話し合いに応じてくれない」

こうした状況に陥った際は、不動産法務と借地権交渉の専門家によるサポートが不可欠です。

借地・底地の複雑な問題は、ぜひセンチュリー21中央プロパティーへ相談ください。
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この記事の監修者

塩谷 昌則

弁護士

エルピス総合法律事務所 代表弁護士/宅地建物取引士
東京大学法学部を卒業後、20年以上にわたり不動産法務の最前線で活躍するスペシャリスト。東京弁護士会に所属し、弁護士資格に加え宅地建物取引士の資格も有することで、法律と不動産実務の両面から深い専門知識と豊富な経験を持つ。

特に借地権における紛争解決においては、業界屈指の実績を誇り、借地権更新料問題、地代増減額請求、借地非訟事件、建物収去土地明渡請求など、複雑な案件を数多く解決に導いてきた。

著書に「事例でわかる 大家さん・不動産屋さんのための改正民法の実務Q&A」がある。メディア出演やセミナー登壇実績も多数。

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