借地上の建物が競売にかけられた場合、地主はどうする?|底地の売却・相続
借地上の建物が競売にかけられた場合、地主はどうする?
【底地(地主)】借地人が借地上に所有する建物が差し押さえられて競売になりました。地主は、建物を競落した人に土地を貸さなければならないのですか?
拒否することは出来ますが、貸さなければならないこともあります。
詳細解説
競売により目的不動産とともに借地権も譲渡されるのか
競売にかけられ第三者が所有者となった場合、借地権はどのようになるのでしょうか。
競売により移転するのか否かについての判例を見てみましょう。
♦【最判昭40年5月4日判決】 判旨:「土地賃借人の所有する地上建物に設定された抵当権の実行により、競落人が当該建物の所有権を取得した場合には、民法六一二条の適用上賃貸人たる土地所有者に対する対抗の問題はしばらくおき、従前の建物所有者との間においては、右建物が取毀しを前提とする価格で競落された等特段の事情がないかぎり、右建物の所有に必要な敷地の賃借権も競落人に移転するものと解するのが相当である…」
とあります。判例によると、競売された場合に借地権も当然に移転することになります。
借地権の譲渡について
上記のように建物が競売にかけられ落札されると、当然に建物所有権と借地権(賃借権)は第三者に移転します。この点について、民法では、
「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」
民法612条
とあります。競売による賃借権(借地権)の移転も当然地主の「承諾」が必要になります。
すなわち、競売によって建物の所有権を取得した競落人は、土地の借地権を取得するために地主(借地権設定者)の承諾が必要になります。
地主は承諾を求められた際には、建物の競落人に対して借地権譲渡の承諾を拒否することもできますし、承諾にあたって承諾料の支払いを求める等の交渉をすることもできます。もっとも、地主の承諾が得られない場合に、常に建物を収去しなければならないとすると、建物を競落することを躊躇する人が増え、ひいては強制競売による債権の回収にも支障をきたしてしまいます。
その調整を図るため、法は次の制度を用意しています。借地借家法20条を見てみましょう。
借地借家法第20条(建物競売等の場合における土地の賃借権の譲渡の許可):「第三者が賃借権の目的である土地の上の建物を競売又は公売により取得した場合において、その第三者が賃借権を取得しても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡を承諾しないときは、裁判所は、その第三者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。」
とあります。つまり、裁判所が地主に代わって、「承諾」をすることが出来るのです。当事者の利益調整を図りつつ承諾すべきか否かを判断することで、問題解決を図ろうとしています。
裁判所から許可が出る場合には、地主としては競落人に土地を貸さなければならなくなります。
どうしても第三者に貸したくないという場合には、地主(借地権設定者)の方から、その借地権付建物の譲渡を受ける旨の申立てを裁判所にすることにより、第三者に貸さないようにすることも可能です。(借地借家法第19条第3項、第20条第2項)。
借地借家法第19条第3項:「…裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。」
とあります。
- 同法20条2項で19条3項を準用
地主自身が建物と賃借権の譲渡を受けることで、第三者に賃貸することを防ぐという方法もあります。
- もちろん、地主があらかじめ担保権者に対し、その旨の「承諾書」を提出している場合は別です。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。借地非訟、建物明渡、賃料増額請求など借地権や底地権をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。