借地権の認定課税とは?権利金との関係やケースごとの課税について解説

更新日:
作成日:
コンテンツ番号:12842

借地権の認定課税とは?権利金との関係やケースごとの課税について解説

借地権の認定課税とは?権利金との関係やケースごとの課税について解説

借地権を設定する際、特に親族間や同族会社間などで権利金を支払っていないと、実質的な贈与が行われたとみなされ、「認定課税」が課されることがあります。
認定課税は地主や借地人が個人か法人か、所定の届出を行っているかなどによっても扱いが変わり、条件が複雑なのが特徴です。

本記事では、認定課税とはどういうものかを解説した上で、認定課税が行われないケースについて解説します。
認定課税について把握することで、予期せぬ税金を安く抑えられる可能性があるため、あらかじめ学んでおきましょう。

借地権の「認定課税」とは?

借地権の「認定課税」とは?

借地権の認定課税とは、借地権を設定したときに権利金の支払いなどがない場合に、権利金に相当する額の贈与がされたものと税務上見なされて課税されることです。
「権利金の認定課税」とも呼ばれます。

そもそも権利金とは、主に普通借地権を設定するときに借地人から地主へと支払う一時金です。

普通借地権は、一度設定すると借地人が希望する限り借地契約が続くものであり、更新も期待できるため、地主にとっては長期にわたり土地の自由な利用が制限される不利な面がある権利と言えます。
そのため、地主にとって不利な面を補填するために、借地権を設定してもらう対価として借地人に権利金を支払ってもらうことが「権利金の収受」です。

権利金の金額は、一般的に下記の計算式で算出される額面が相場となります。

権利金の金額=土地の更地価額×土地の借地権割合

土地の借地権割合は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」で調べることが可能です。

参考:国税庁「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」

権利金の慣行がある地域において、権利金のやりとりをせずに借地権を設定すると、借地権の認定課税が適用される可能性があります。
「地主から借地人に対し、権利金に相当する額の贈与などがあった」と税務署に見なされるためです。

ただし、借地権の認定課税は、原則として同族関係者間での取引か法人間の取引にのみ適用されます。
地主と借地人が全くの他人同士である第三者間取引では、権利金のやりとりがない場合であっても、通常、経済合理性が欠如しているとは考えにくいため、直ちに借地権の認定課税は適用されません。
しかし、実質的に贈与と認められるような場合はこの限りではありません。

また、権利金の取引慣行がない定期借地権の場合についても、その契約内容にもよりますが、一般的には借地権の認定課税はありません。

借地権に強い弁護士に相談するならセンチュリー21中央プロパティー ≫

【ケース別】認定課税の対象と税金の種類

【ケース別】認定課税の対象と税金の種類

借地権の認定課税は、地主・借地人に対して個別になされる可能性があります。
実際に認定課税がどのようになされるかは、地主と借地人の属性(個人か法人か)によって異なるため、それぞれのケースを把握することが重要です。

ここでは、「地主が個人の場合」「地主が法人の場合」の2パターンに分けて、地主と借地人にどのような形で認定課税がなされるかを解説します。

認定課税の対象と税金の種類①:地主が個人のケース

地主が個人の場合、地主には原則として認定課税がかかりません。

地主が個人の場合は、経済的合理性がないとしても、権利金を要求せずに借地人へと土地を貸すケースがあり得ると考えられています。
借地権の設定行為は、所得税法上の資産の譲渡には該当しないため、譲渡所得(みなし譲渡所得)にはならず、認定課税の対象となりません。

一方で借地人の側は、借地人が個人・法人のいずれであっても認定課税がかかります。
借地人の側には権利金相当額の経済的利益が発生していると見なされるためです。

属性課される税金課税理由
地主個人原則なし経済的合理性以外の理由も考慮され、資産の譲渡に該当しないため
借地人個人贈与税権利金相当額の贈与と見なされるため
借地人法人法人税権利金相当額の受贈益が発生したと見なされるため

認定課税の対象と税金の種類②:地主が法人のケース

地主が法人の場合は、権利金を収受しなかったことについて、地主にも「法人税」として認定課税がかかることがあります。
法人は利益を追求することが前提であり、権利金を要求せずに土地を貸すケースも、何らかの経済的合理性が理由である(例えば、相手方が株主であるなど)と見なされたり、寄付金と認定されたりするためです。

借地人側も、借地人が個人・法人のいずれであっても認定課税がかかります。

属性課される税金課税理由
地主個人法人税利益追求が前提であり、権利金不収受は寄付金等と見なされることがあるため
借地人個人所得税権利金相当額の給与所得(経済的利益の供与)と見なされるため
借地人法人法人税権利金相当額の受贈益が発生したと見なされるため

センチュリー21中央プロパティーなら【仲介手数料0円】で借地権売却! ≫

認定課税がなされないケース

認定課税がなされないケース

地主と借地人が同族関係者であり、かつ借地権設定時に権利金の収受がない場合であっても、認定課税がなされないケースは存在します。
認定課税には税負担が増えるなどのデメリットがあるため、課税を避けられるケースを把握しましょう。

借地権に認定課税がされないケースは、以下の通りです。

  1. 使用貸借と認められる場合
  2. 相当の地代を支払っている場合
  3. 「土地の無償返還に関する届出書」を提出している場合

認定課税がなされないケース①:借地権が使用貸借である場合

地主と借地人がともに個人であり、かつ借地権が使用貸借であると認められた場合は、認定課税がなされません。

使用貸借とは、地主が権利金や地代などの対価を要求せずに土地を貸し、後に返還してもらう契約のことです。
例えば、親が所有する土地に子の家屋を建てさせるために無償で土地を貸すケースが、土地の使用貸借に該当します。

また、完全な無償ではなく、土地の固定資産税に相当する額程度の地代を子が支払った場合でも、使用貸借の範囲として認めらることが一般的です。
ただし、地代の額が固定資産税の2~3倍程度になると、使用貸借ではないと見なされる可能性があるため注意しましょう。

親から子への土地の使用貸借では、将来子が土地を相続した際、相続財産である土地を「自用地」として評価する点にも注意が必要です。
当該土地が自用地として評価されると相続税・贈与税の課税対象となり、借地権として評価される場合に比べて高額な税金がかかる可能性があります。

なお、借地権が使用貸借であると認められるには、「借地権の使用貸借であることの確認手続」が有効な場合がありますが、必須の手続きではありません。実態として使用貸借契約が成立していることが重要です。
ただし、税務署に対して使用貸借であることを明確にするためには、国税庁が用意している「借地権の使用貸借に関する確認書」を提出しておくことが望ましいでしょう。

参照:国税庁「[手続名]借地権の使用貸借であることの確認手続(借地権の使用貸借に関する確認書)」

相当の地代を支払っている場合

借地権設定時に権利金を支払わない代わりに、相当の地代を借地人が支払う場合は、認定課税がなされません。

相当の地代とは、借地権設定時に権利金のやりとりがなかった場合に借地人が支払う、「土地全体に対する地代」のことです。

借地権設定時に権利金のやりとりがある場合は、通常の地代を支払います。
通常の地代とは、借地権の対価は権利金で支払っているものとし、地主側が権利を持つ底地部分の対価として支払う地代です。

対して相当の地代は、借地権部分と底地部分を合わせた「土地全体に対する地代」を支払います。
借地権部分の対価も含めて相当の地代を支払っているため、権利金相当額の贈与が存在せず、認定課税もされないという仕組みです。

相当の地代の額は、原則として土地の更地価額のおおむね年6%程度とされています。

「土地の無償返還に関する届出書」を提出している場合

「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出していれば、権利金の認定課税は行われません。

「土地の無償返還に関する届出書」とは、土地を借りている借地人が将来的に無償で土地を返還することを、地主と借地人の連名で税務署に届け出る書類です。
「土地の無償返還に関する届出書」の提出により、地主と借地人との間で権利金相当額の贈与があったわけではないと税務上証明でき、借地権の認定課税を避けられます。

「土地の無償返還に関する届出書」を提出する際は、下記のポイントを押さえましょう。

  1. 地主と借地人の連名でそれぞれ1通ずつ、保管用も含めて合計4通を作成する
  2. 地主の納税地を所轄する税務署に、提出用の届出書を2通提出する
  3. 賃貸借契約書の契約内容に「土地の使用後は無償で返還する」旨を明記する
  4. 提出用の届出書2通に、「借地契約書の写し」と「土地の評価額が分かる書類」を添付する
  5. 土地を無償で返還することを定めた後に、遅滞なく提出する

また、借地人が支払う地代の額を適当に設定している場合は、「地代の認定課税」がなされる可能性がある点に注意してください。

地代の認定課税とは、借地人の支払う地代が相当の地代よりも安い場合に、差額分について地主から借地人への贈与があったものと見なされ、課税対象となることです。

権利金の認定課税だけではなく、地代の認定課税も避けるためには、地代の額を相当の地代に設定するか、少なくとも「通常の地代」(固定資産税等の2~3倍程度が目安)を収受する必要があります。
「土地の無償返還に関する届出書」を提出している場合でも、地代が低すぎるとこの地代の認定課税のリスクは残ります。

借地権に強い弁護士に相談するならセンチュリー21中央プロパティー ≫

まとめ

借地権の認定課税とは、借地を借りる際に権利金を支払っていない場合に、実質的に借地権相当の利益が贈与されたものとして課税される税金です。
ただし、借地が使用貸借である場合や相当の地代を支払っているケース、「土地の無償返還に関する届出書」を提出している場合は認定課税は行われません。
認定課税がかかるかどうかを知るためには、契約の内容や当事者の関係性などを総合的に確認する必要があります。

このように、借地権に関する税務は複雑であるため、売却やトラブルに関するお悩みがある場合は、可能な限り早い段階で借地権の専門家にご相談されることをおすすめします。

センチュリー21中央プロパティーは、借地権専門の不動産仲介会社です。
ご相談・売却はこれまでに延べ4万件を超えるなど、借地権に関しては圧倒的な実績を誇ります。
社内弁護士が常駐しているため、借地権トラブルから売却まで、法的な観点からの的確なアプローチが可能です。
また、ご相談~売却まで、すべてのプロセスで料金を一切頂かない完全無料のサービスとさせていただいておりますので、借地権の売却でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

センチュリー21中央プロパティーなら【仲介手数料0円】で借地権売却! ≫

この記事の監修者

山口 義重ヤマグチ ヨシシゲ

税理士

税理士。東京都出身。中央大学法学部を卒業し、ワールド法律会計事務所代表。借地権の相続案件で多く相談される相続税が得意分野だが、生前贈与や、親族間の不動産売買等相続対策にも豊富な経験・実績のあるスペシャリスト。

この記事のタグ

おすすめの記事はこちら