借地権の地代とは?通常の地代と相当の地代について解説|借地権のトラブル
借地権の地代とは?通常の地代と相当の地代について解説
目次
借地権の地代は2種類に分かれており、それぞれ月々に払う金額の相場や借り始めるときに支払う金額が大きく異なります。
当記事では地代の種類、「通常の地代」と「相当の地代」について解説します。地代の種類と地代を設定する際の注意点について理解し、貸主も借主も納得できる適正な地代を設定できるようにしましょう。
1.地代には2種類ある!地代の種類とは
借地権の地代とは、借地契約を結んで土地を借りた借主が、土地の所有権を持つ貸主に対して支払う賃料のことです。
借地権の地代は、借地契約締結時に権利金の支払いがあったかどうかによって、「通常の地代」と「相当の地代」の2種類に分けられます。2種類の地代は計算方法が異なるため、違いを理解しておくことが重要です。
以下では権利金とは何かを解説した上で、「通常の地代」と「相当の地代」のそれぞれを解説します。
1-1.地代の算出にかかわる権利金とは?
権利金とは、借地権を設定してもらう対価として、借主から貸主へと支払われる金銭のことです。
借地権は借地借家法という法律で定義されている借主の権利であり、借地権を有する借主の権利は法律で手厚く保護されています。借地権設定をした土地は、土地所有者である貸主であっても、借主の承諾を得ずに自由に使ったり売却したりはできません。
借地権の対価として借主が権利金を支払う理由は、貸主側に発生する不利益を補填するためです。
権利金の金額は地域によって違いがあるものの、一般的に下記の計算式で算出します。
- 権利金の金額=更地価格×借地権割合
借地権割合は、権利金の金額や地代を算出する場合に使用する指標であり、国税庁の「路線価図・評価倍率表」を用いて調べることが可能です。
路線価図・評価倍率表で調べたい土地のページを開くと、路線価が「数字+A~Gの記号」で表示されます。「A~Gの記号」が借地権割合を指し、それぞれ下記の割合に対応しています。
記号 | 借地権割合 |
A | 90% |
B | 80% |
C | 70% |
D | 60% |
E | 50% |
F | 40% |
G | 30% |
たとえば更地価格が2,000万円、借地権割合が60%であれば、下記の計算式により権利金の金額は1,200万円だと分かります。
- 権利金の金額=2,000万円×60%=1,200万円
1-2.通常の地代
通常の地代とは、土地全体から借地権部分を除いた「底地」部分を借りるために支払う地代です。
一般的に借地権部分の地代は、借地契約締結時に権利金として先に支払っています。一方で、貸主が権利を有している底地部分の地代はまだ支払われていません。
土地に建物を建てるなど、借主が土地を利用するには、貸主に対して底地部分の地代として「通常の地代」を支払う必要があります。
通常の地代が年間あたりいくらになるかを調べる際は、一般的に下記の計算式を使用します。
- 通常の地代(年額)=自用地価額×(1―借地権割合)×6%
自用地価額とは、土地を自用地としたときの評価額です。
たとえば自用地価額が2,000万円、借地権割合が60%であった場合、通常の地代の年額は下記の計算式により48万円であると分かります。
- 通常の地代(年額)=2,000万円×(1―0.6)×6%=48万円
上記のケースでは、借主は権利金として1,200万円、通常の地代として年額48万円を支払うことになります。
1-3.相当の地代
相当の地代とは、借地契約締結時に権利金の支払いがなかった場合に支払われる、土地全体に対する地代です。
借地契約では一般的に借主から貸主へと権利金の支払いが行われるものの、親族間などでの契約では権利金の支払いを行わないケースが少なくありません。
しかし、借地権設定をしたにもかかわらず権利金の支払いが行われていないと、「権利金の認定課税」によって多額の税金が課されます。権利金の認定課税を避けるために、権利金の取引に代えて借主から貸主へと支払われる金銭が「相当の地代」です。
相当の地代の年額は、下記の計算式を用いることで求められます。
- 相当の地代(年額)=自用地価額×6%
たとえば自用地価額が2,000万円の土地を権利金の支払いなしで借りた場合、相当の地代の年額は下記の計算式により120万円であると分かります。
- 相当の地代(年額)=2,000万円×6%=120万円
上記のケースでは、借主は相当の地代として年額120万円を支払わなければなりません。権利金を支払う通常の地代と比較すると、相当の地代は年額が高くなることが分かります。
2.地代を設定する際の注意点は?
地代を設定する際には、さまざまな注意点が存在します。地代収入を得る貸主はもちろん、借主にとっても地代は借地権の相続税評価額などに影響を与えるため、地代について理解を深めましょう。
ここでは地代を設定する際の注意点を2つ挙げて、それぞれどのようなポイントに注意すべきかを解説します。
2-1.地代の金額によって相続税評価額が変わる
借地権の地代として支払っている金額が「通常の地代」か「相当の地代」かによって、相続税評価額が変わる点に注意してください。
そもそも借地権が相続税の課税対象であることを知らない方もいるでしょう。借地権は相続財産に含まれるため、親から子へのように借地権の相続・贈与を行う際は相続税や贈与税が発生します。相続税や贈与税を算出する際に、計算の基礎となる財産の評価額が「相続税評価額」です。
相続税評価額が変わる理由は、地代として支払う金額によっては借主に利益が発生する状況(借り得)があるためです。
たとえば土地全体の地代(相当の地代)が年額50万円となる土地を、通常の地代で年額30万円で借りる場合は、借地権設定により利益が発生しています。利益が発生する借地権は財産としての評価が高くなり、相続税が高くなる点が特徴です。
通常の地代と相当の地代を支払うケースについて、相続税評価額の計算式を紹介します。
通常の地代を支払うケース
借地契約における最もオーソドックスなケースです。通常の地代は相当の地代よりも安く、借地権には下記の計算式で求められる相続税評価額が付きます。
- 借地権の相続税評価額=自用地価額×借地権割合
相当の地代を支払うケース
権利金の支払いがなく相当の地代を支払うケースでは、借地権の相続税評価額は0円となります。相当の地代は借地権割合が設定されておらず、借主に利益はないものとして扱われるためです。
2-2.地代の相場を確認しておく
土地の賃料である地代は、貸主にとって重要な利益の源であり、借主にとっては定期的な支払い負担がある出費です。貸主・借主が借地契約で損をしないためには、地代の相場を確認しておくことが重要となります。
地代の相場を計算する方法は多くの種類があります。下記は地代の相場を計算する方法の例です。
- 固定資産税や都市計画税から算出する方法
- 路線価から算出する方法
- 期待利回りで算出する方法
- 周辺地域の賃貸事例から算出する方法 など
地代の相場については、下記のリンク記事でより詳しく解説しています。
地代を設定する際は、地代は周辺の土地需要や環境の変化によって変動する点も理解しておきましょう。土地の価値が上昇した場合は地代も上昇し、反対に土地の価値が下落した場合には地代も下落する傾向があります。
借地契約は長期間の契約であり、契約の存続期間中に地代価格の見直しが行われる場合もあります。貸主・借主は見直しで慌てないように、対策として地代の相場や計算方法を把握しておくことが大切です。
弁護士Q&A
まとめ
借地権の地代には権利金の支払いがあるかどうかによって「通常の地代」と「相当の地代」の二種類があり、それぞれ相続税評価額が異なるため注意が必要です。地代は土地の価格変動に従って金額が変わることもあるため、相場や計算方法について知識を付けておくとよいでしょう。
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この記事の監修者
代表取締役 /
宅地建物取引士
CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。借地権を始めとした不動産トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。