【弁護士Q&A】借地権の返還について教えてください。
【弁護士Q&A】借地権の返還について教えてください。
質問 実家が借地権です。 祖父の時代から、借地として借りていましたが、今回母が介護施設に入ることをきっかけに、借地を返還したいと考えています。 地主にその旨を相談したところ、 ①更地にして返還して欲しい ②建物の解体費用は、借主負担 と言われました。 更地にして返還するのは、借地人の義務なのでしょうか? また、更地にして借地人に返還する以外で借地権付きの建物を処分する方法はないのでしょうか?
まず、賃貸借契約一般の話からすると、賃貸借契約が終了した場合、賃借人には、借用物に附属させた物を収去して原状に復した上で、賃貸人に賃借物を返還する義務があります(民法622条、民法599条1項)。
これを借地契約にそのまま当てはめると、借地契約が終了した場合、借地人は、借地に附属させた建物を自ら収去して原状に復した上で(つまり、自分で解体して更地に戻した上で)地主に借地を返還する、というのが、民法の原則からの結論ということになります。解体費用も、特段の合意のない限り、原則として借地人の負担となります。
しかし、借地契約の終了の際に、常にこの原則通りに処理するとなると、借地人が建物を建てるために使ったお金が無駄になってしまいます。また、いまだ使用価値がある建物が毎回取り壊されてしまうのは、社会的にみても望ましいことではありません。
そこで、借地借家法という法律では、上記の民法の原則に対する例外として、一定の条件を満たす場合に、借地人に、地主に対して借地上の建物を時価で買い取るよう請求する権利を認めています(借地借家法13条1項)。
この建物買取請求権が行使できる場合は、建物を解体して更地に返還する義務は生じません。建物買取請求権が行使されると、地主の承諾がなくとも、借地人を売主、地主を買主とする借地上建物の売買契約が成立し、建物の所有権が買主である地主に移転することになります。
この建物買取請求権が認められるための条件は、①借地契約終了時に、借地上に建物が存在すること、及び、②借地契約が期間満了で終了し、契約の更新がないこと、です。このうち、②との関係で注意をしておきますと、建物買取請求権が借地人に認められるためには、借地契約が期間満了で終了することが必要なので、例えば、地代の支払いの滞納を理由に借地契約が期間満了を待たずに途中で解除されたような場合は、建物買取請求権は認められず、原則通り、建物を解体した上で土地を返す必要が生じます。
これは、借地借家法上の建物買取請求権が、誠実な借地人を保護するという目的から定められた制度であるためです。
まとめ
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借地契約が終了した場合、借地人が自ら解体費用を出して借地を更地返還するというのが、民法上の原則です。
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借地借家法は、一定の要件を満たす場合に、民法の原則に対する例外として、借地人に、地主に対する建物買取請求権を認めています。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で借地非訟手続きや建物買取請求権の行使など今社会問題化しつつある借地権トラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。