【弁護士Q&A】地代の値上げについて教えてください。
【弁護士Q&A】地代の値上げについて教えてください。
質問 借地権付き(旧法)の家に住んでいます。 先日、地主が代替わりし、新しい地主が訪ねてきました。 そこで、地代の増額を請求されました。 これまで一度も地代の増額をされたことがなく驚きました。 地主から、一方的に地代の増額を請求された場合、応じなければならないのでしょうか。
地代は、借地契約の契約内容の一部であり、あくまで、契約当事者の合意によって決められるものです。
いったん合意した地代を、一方的に変更することは出来ません。契約期間中は、双方とも合意した地代に拘束されます。したがって、地主が一方的に地代の増額を要求してきたとしても、それに応じる義務は借地人にはありません。
とはいえ、借地契約が長期間にわたるうちに、土地に対する租税公課の増減、地価の上昇下落を始めとする経済事情の変動、近隣類似の土地の地代と比較した場合に著しい差が生まれる等、当初合意していた地代の条件が不相当になってしまうという事態は当然あることです。
もし、そうなったときに一切地代の変更が認められないというのは、双方にとって不都合です。
そこで、借地借家法では、建物所有目的の借地権について、一定の要件のもと、借地契約の当事者に地代の増減額請求権を認めています(借地借家法11条1項)。なお、借地契約の中に、地代の増額請求をしないという特約があるときは、地主は地代の増額請求が出来ませんが(同条1項但書)、他方、地代の減額請求をしないという特約があったとしても、同条1項本文に基づき、借地人は地代の減額請求を行うことが可能であり、地代の減額請求を禁じる特約には効力はありません(最高裁平成15年6月12日判決)。この地代増減額請求権が行使された場合、その時点から将来に向かって、増減額の効力が発生するとされています。
しかし、請求された側が納得できず協議が整わなければ、裁判所で争われることになりますが、裁判所の結論が出るまでには時間がかかります。
そのため、もし、地主から、借地借家法11条1項に基づく地代増額請求を受けた際に、借地人が、地主の請求額を了解できないときは、裁判所で増額を正当と認める裁判が確定するまでの間は、借地人自身が相当と認める金額の地代を支払えばよい(この間は地代未払いの債務不履行にはならない)とされています(同条2項本文)。
但し、最終的に地主の増額請求が裁判所で認められた場合には、借地人は、不足額(裁判所で確定した地代の額と実際の支払額の差額)及びこれに対する年1割の利息を地主に支払う必要があります(同条2項但書)。
まとめ
-
地代は当事者の合意によって決められるものなので、一方的に増額することは出来ません。
-
借地借家法は、一定の要件のもと、借地契約の当事者双方に地代の増減額請求権を認めています。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で借地非訟手続きや建物買取請求権の行使など今社会問題化しつつある借地権トラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。