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借地権を地主に返すor第三者に売却する|どちらが正解?|弁護士Q&A

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作成日:
コンテンツ番号:1361

借地権を地主に返すor第三者に売却する|どちらが正解?

ご相談内容

私(A)の実家甲家の借地権についての相談です。
私(A)は甲家の所有者の息子で、妹Bがいます。
両親(CD)はともに入院しており、父Cは認知症(要介護5)で実家に戻れる見込みはありません。母親Dのうつ状態で10年以上入院しています。

そんなこともあり、実家は誰も住んでおらず、庭の草が生い茂ってしまい、虫が発生したり、草木が近隣の家まで入り込んでしまったりなど、迷惑をかけ始めてしまっています。
母親Dも実家に未練はないとのことなので、実家を手放したいと考えています。

地主Eから借りている両親と同じような借地権者たちは、借地権更新ができず、そのまま借地権を無料で地主Eさんに返して引っ越しています。
地主Eは借地上の家屋をリフォームしてアパートにして貸すなど、かなりのやり手です。

今回貴社のホームページを見たところ借地権を売却できる可能性があるように思えました。
このような状況でも借地権は売却できるのでしょうか、また、他に良い方法があるのでしょうか。

ご相談のポイント

  • 借地権譲渡と民法のルール
  • 借地権譲渡と借地借家法のルール
  • 借地人の意思判断能力に問題がある場合

◆借地権譲渡と民法のルール

現実に存在する借地権の殆どが、登記のされていない賃借権ですが、その場合、借地権を第三者に譲渡するためには、貸主である地主の承諾が必要です(民法612条1項)。

借地権を地主に無断で第三者に譲渡すれば、借地契約を解除されるリスクが生じます(民法612条2項)。

そして、借地契約が終了したときには、借地人の責任と費用で借地上の建物を解体収去し、更地に戻して地主に返還する必要があります(民法622条、599条1項)。

借地人としては、借地契約が終了する前に、建物の建築等に投下した資本を、借地権の売却によって回収したいと考えるところですが、民法のルールでは、借地権の売却が実現できるか否かが、常に地主の意向で決まってしまうことになります。

◆借地権譲渡と借地借家法のルール

しかし、常に民法のルール通りにしか対応できないとなると、借地人にとって不利が大きく、また、社会経済的に見ても好ましくないことから、借地借家法において、民法に対する特別ルールが設けられています。

借地借家法では、借地権譲渡を地主が承諾しない場合に、借地人から申立てにより、借地非訟手続を通じて、裁判所が借地権譲渡について地主の承諾に代わる許可(代諾許可)を与える制度を設けています(借地借家法19条)。

◆借地人の意思判断能力に問題がある場合

ご相談の内容からすると、現在の借地人(借地上の建物所有者)は、認知症のお父様か、うつ病のお母様か、いずれか(あるいはご両名の共有になっている)かと思います。

もし、借地人本人が認知症等の影響で意思判断能力に問題がある場合、借地人本人は有効に売買契約等を行なうことができません。

この場合、借地権の売買契約等の法律行為を行なうためには、借地人本人のために成年後見人を選任する必要があります。

具体的には、家庭裁判所に対して成年後見人の選任の申立てを行ない、裁判所から選任された成年後見人が、本人の法定代理人の立場で、売買契約等を行なうことになります。

まとめ

民法のルールでは、借地人は、地主の承諾が無い限り、第三者に借地権を譲渡できません。

しかし、常に民法のルール通りだと、借地人にとって不利が大きいことから、借地借家法では、借地非訟手続を通じて、借地権譲渡について地主の承諾に代わる許可を裁判所が与える制度を設けています。

もっとも、借地人本人の意思判断能力に問題がある場合は、本人のために成年後見人を選任しないと、売買契約等の法律行為を行うことはできません。

この記事の監修者

都丸 翔五トマル ショウゴ

社内弁護士

当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する人への支援を担当しており、これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた経験がある。
相談者の立場に立ち、不利な点も含め、必要な事実を正確に説明する高いプロ意識に定評がある。

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