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遺留分の新制度|弁護士Q&A

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コンテンツ番号:594

遺留分の新制度

地主と揉めています

質問 地主とは相続で揉め、遺留分減殺請求で揉めた身内で、売却の承諾も借地権の買取もしそうにありません。
借地権者である母が亡くなり相続したのを機に、「今後転居したり建物が破損したら解体して返すよう宣誓書を書け!」と言ってきたりしているほどです。
こんな物件でも相談できますか?

借地権者(母)が亡くなり、子が相続し、地主が『更地で返却すると宣誓書を書け!』と主張している図

相談可能か否かについて

本件のような権利化関係が複雑に絡み合ってしまったような不動産の場合でも、相談自体は可能ですし、売却の可能性も十分にございます。「相続で揉め、遺留分減殺でも揉め」とあるので、借地権は共同所有の状態になってしまっていると考えられます。そのような場合であっても、物件の状態や条件如何によっては十分売却できる可能性はあります。

この点については、詳細の状況をお聞かせ頂ければ個別にアドバイスさせて頂きますのでご安心ください。共有状態のトラブルについては多数の解決実績がありますので、ぜひご相談ください。

遺留分減殺請求の新制度について

1. 遺留分について

本件では、遺留分に関連したお話でもあります。最近遺留分について法改正という大きな動きがありました。いい機会ですので法改正についてここで解説していきたいと思います。

  • 2018年7月6日に相続法の改正法案が可決・成立し、同年7月13日に公布され、遺留分についても改正が決まっています。

そもそも遺留分とは?

遺留分とは、「民法で定められている一定の相続人が最低限相続できる財産のこと」をいいます。遺留分が侵害されている場合には、相手方(侵害者)に遺留分減殺請求権を行使することで、相続財産を取り戻すことができます。

民法1028条:「兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。

一直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一

二前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一

相続人と遺留文割合を表した表
(遺贈又は贈与の減殺請求)
民法1031条:「遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。」

引用元: より

この遺留分の制度が改正により、変わることとなりました。

2. 現行法の問題点

現行法の遺留分減殺請求の制度は遺留分減殺請求権を相手方(侵害者)に申し立てると、「全て」の財産が相続人たちによる共有財産状態になってしまい、自宅の土地・建物まで共有財産状態となり、すぐには処分ができない状態となってしまいます。これはとても不都合(※共有物全部の売却には他の共有者全員の同意が必要)ということで、法改正がされることとなりました。法改正のポイントは以下になります。

3. 改正法のポイント(法務省ホームページより)

①遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生ずるとされている現行法の規律を見直し、遺留分に関する権利の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずることにする

②遺留分権利者から金銭請求を受けた受遺者又は受贈者が、金銭を直ちには準備できない場合には、受遺者等は、裁判所に対し、金銭債務の全部又は一部の支払につき期限の許与を求めることができる。

特に①が重要で、改正により遺留分減殺請求権を行使すると「遺留分相当額の金銭を遺留分侵害者に請求できる」ようになりました(金銭債権の発生)。また、②相手方(侵害者)にすぐに支払う資力がない場合には、支払いまでに相当の期間を与えることができるとしています。

ただ、そもそも根本的に支払えない、または、支払う意思のない人に対しては、民事上の強制手続きに則って回収していく形となります。遺留分によって生じるトラブルを減らす法改正ではありますが、共有状態を抜本的に解決するには、やはり生前に整理しておくことが非常に重要です。

この記事の監修者

菅原 悠互スガワラ ユウゴ

弁護士

弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で借地非訟手続きや建物買取請求権の行使など今社会問題化しつつある借地権トラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。

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