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借地権の相続税の計算方法|世界一わかりやすく解説

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借地権の相続税の計算方法|世界一わかりやすく解説

少子高齢化に伴い、相続発生件数は増加傾向にあります。

借地権を相続された相続人の方から、相続税にまつわる質問やお悩みのご相談が当社にも多く寄せられているのが実情です。

そこで本記事では、現役税理士が難しい相続税の計算方法をわかりやすく解説します。借地権付き不動産として相続したものの、使用せずに放置しているという方に向けた対処法も紹介しているので参考にしてください。

<この記事でわかること>

  • 借地権の種類
  • 相続税評価額の計算方法
  • 借地権の相続税を軽減する方法

1.借地権が相続税の対象になるケース

借地権が相続税の対象になるケースは、主に以下の2つです。

  • 借りた土地が更地ではなく建物がある状態
  • 地代の支払いがある状態

それぞれ詳しく解説します。

1-1.借りた土地が更地ではなく建物がある状態

そもそも借地権とは、土地の所有者である地主に地代を支払って土地を借りることで、その土地の上に建物を建てられる権利のことです。

借地人は、土地自体を所有しているわけではないため、土地に関しては相続税がかかりません。しかし、借地権という権利が、相続税を計算する上での財産としてみなされるため、借りた土地の上に住宅を建てている場合は、相続税の対象になるのが一般的です。

一方で駐車場や資材置き場として活用し、建物を建てていないのであれば借地権として評価されないケースもあります。

1-2.地代の支払いがある状態

地主から土地を借りている場合でも、利用対価として金銭の受け渡しがあるかによって考え方が異なります。

例えば、無償で土地を借りて、家を建てた場合(使用賃借)では、借地権がないと判断される傾向にあります。そのため、借地権の評価額を算出することもなく、相続税も発生しません。

地代の支払いがある場合には、相続税の支払い対象になります。

2. 借地権の種類で相続税の計算方法が変わる

借地権にかかる相続税は、借地権の種類によって計算方法が変わります。本章では借地権の種類と実際の計算方法を紹介します。

2-1.借地権の種類

借地権は大きく分けて、借地権(旧借地法)と借地借家法の2つが存在します。

1992年8月以前に、土地を借りている場合に適用されるのが旧借地法です。お互いの合意があれば更新できるため、半永久的に借りられるのが特徴です。木造住宅は、存続期間が30年で更新後の期間は20年です。また、鉄骨造・鉄筋コンクリートであれば60年で、更新後の期間は30年と決められています。

旧借地法は地主よりも借地人の権利が強く、土地の返還や建物の解体など地主にとって不利な面がありました。例えば、堅固建物の場合、存続期間が長いため、契約の更新によって、地主が存命の間に、土地を取り戻すことができず、自分自身で使えないなどです。地主に不利な状況を改善するために作られたのが、借地借家法(新借地法)です。

借地借家法は、以下の5つの種類に分類されます。

種類概要
1普通借地権契約期限の決まりはあるが、更新すると半永久的に借りられる。存続期間の限度は、当初が30年、更新により20年、2回目以降の更新は10年まで。
2定期借地権(一般定期借地権)更新はなく、あらかじめ決められた期間しか借りられない。契約期間は50年以上。
3事業用定期借地権店舗や商業施設などの店舗用で土地を借りる場合。契約期間は10年以上50年未満。契約終了後は、更地にして返す必要がある。
4建物譲渡特約付借地権契約満了後、地主が建物を買い取る決まりがある。契約期間は30年以上。
5一時使用目的の借地権住宅としての使用が目的ではなく、工事の仮説事務所やプレハブ倉庫として一時的に借りる場合など。

但し、新法の施行日以降に借地権を更新する場合も、旧法を新法に切り替える義務はないため、1992年7月以前に契約されている場合は、旧借地法のまま契約が継続されていることがほとんどです。もしも自分が借りている土地が新法と旧法のどちらに該当するかわからない場合は、契約書を確認するか地主に直接確認してみましょう。

2-2.相続税の計算方法

借地権における相続税の計算は、新借地法と旧借地法で異なります。

普通借地権の計算式は、以下の通りです。

自用地評価額×借地権割合=借地権の相続税評価額

自用地評価額と借地権割合は、国税庁が公表している「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認します。

また定期借地権であれば、定期借地権を設定したときにおける経済的利益の総額や存続期間年数などが関係します。

詳しくは、国税庁のホームページをご覧ください。

次章では借地権(旧法)おける相続税の計算方法を具体的に解説するので、読み進めてみてください。

3. 借地権(旧法)の相続税の計算方法

借地権の相続税の計算は、図1の流れに沿って行います。

(図1_借地権の相続税を算出するステップ)

詳しく解説するので、参考にしてください。

3-1.路線価と借地権割合を確認する

まずは、普通借地権の相続税評価額を計算します。そのために、対象地が面している道路の「路線価」と「借地権割合」を把握する必要があります。

路線価とは、道路ごとに決められた1㎡あたりの土地価格のことで、国税庁が公表する「路線価図・評価倍率表」で以下のような図面が確認できます。

出典:路線価図・評価倍率表|国税庁

借地権割合とは、図面の上部に記載された割合のことです。

例えば、上記の図面であれば、路線価が「270D」と数字とアルファベットで記載されています。数字は価格を表しており、千円単位で記載されています。そのため、270が表すのは、270 × 1,000円=27万円/㎡ということです。そして、アルファベットのDは、借地権割合の左隣に記載されているアルファベットを指します。つまり、Dであれば60%を示しています。

3-2.自用地の場合の評価額を算出する

続いて、自用地の場合の評価額を算出します。

自用地とは、自分で所有する土地のことです。そのため借地権として考えるのではなく、所有権として算出します。

以下の計算式を用います。

土地の評価額=路線価×土地の広さ

路線価図の表記が270Dであれば、1㎡あたりの単価は27万円です。土地の広さが300㎡であれば、27万円×300㎡=8,100万円になります。

3-3.借地権の相続税評価額を算出する

ステップ2で算出した評価額に借地権割合を掛け合わせると、借地権の相続税評価額を算出できます。

計算式は以下の通りです。

自用地の土地評価額×借地権割合=借地権の相続税評価額

270Dを例にあげてみます。Dの借地権割合は60%です。そのため、8,100万円×60%=4,860万円が、借地権の相続税評価額となります。

3-4.すべての相続財産を合わせて相続税を算出する

最後に、ほかの相続財産と合算する必要があります。遺産総額を算出し、遺産総額から基礎控除額を差し引いた金額が、相続税の課税対象というわけです。

ステップ3で計算した、借地権の相続税評価額4,860万円を例に計算してみましょう。借地権以外にも現金などの遺産が1,000万円があった場合、遺産総額は5,860万円となります。この5,860万円から基礎控除額を差し引いた金額に対して、相続税が発生します。

相続税の基礎控除額は、以下の計算で算出します。

基礎控除額=3,000万円+(法定相続人の数×600万円)

法定相続人ごとの控除額の早見表を参考にしてください。

法定相続人の数基礎控除額
1人3,600万円
2人4,200万円
3人4,800万円
4人5,400万円
5人6,000万円

法定相続人が2人の場合、遺産総額5,860万円−基礎控除額4,200万円=1,660万円が算出されます。この1,660万円に対して相続税がかかります。

以下の表を基に、相続人ごとの取得金額に税率を掛けます。

法定相続分に応ずる所得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

法定相続人が2人の場合、1660÷2で一人あたりの相続額は830万円です。上記の表を確認すると、1,000万円以下は税率10%の控除額なしですので、83万円を相続税として納める必要があります。

 4. 借地権の相続税評価額を軽減する方法

借地権の相続税評価額を軽減する方法は、以下の2つです。

  • 小規模宅地等の特例
  • 配偶者控除の活用

それぞれ詳しく解説します。

4-1.小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、小規模の宅地を対象に、一定の要件を満たすことで宅地の評価額を最大80%軽減できる特例です。

相続税の支払いが原因で、住む家や土地を失ってしまうケースも少なくありません。残された方がそのような酷な状況に追い込まれないようにと、導入された減税の制度です。

詳しくは、国税庁の「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」をご覧ください。

4-2.配偶者控除の活用

相続人のなかに配偶者がいる場合に利用できる方法です。配偶者の法定相続分または1億6,000万円のいずれか大きい額までの相続税が非課税になります。

この制度を活用することで、そもそも相続税を支払わないで済むケースも少なくないです。

詳しくは、国税庁の「No.4158 配偶者の税額の軽減」をご覧ください。

5.相続した借地権を活用しない場合

借地権を相続したものの、使い道がなく、空き家の状態のまま放置する方も少なくありません。ただ、空き家のまま放置すると地代や建物の固定資産税を払う必要があり、所有しているだけでコストがかかります。また、放置することで、放火や植栽の越境、建物の倒壊などの恐れもあります。

そこで、相続した借地権を活用しない場合には、以下の方法を検討しましょう。

  • 地主に買い取ってもらう
  • 底地とあわせて同時売却する
  • 第三者へ売却する
  • 更地にして地主に土地を返還する

それぞれ詳しく解説します。

5-1.地主に買い取ってもらう

まずは、地主に買い取ってもらえないかを相談してみましょう。地主にとって、貸している土地を取り戻せる機会は多くありません。地主のなかには、土地を取り戻して有効活用したいと考えている方もいます。そのため、タイミングによっては借地権の買取に同意してくれる可能性も考えられます。

地主が借地権を買い取る場合(借地契約解除)、建物ごと買い取ってもらえるのか、建物の解体が必要なのかを事前に話し合っておくことが大切です。

5-2.底地とあわせて同時売却する

底地と合わせて売却するには、所有者である地主の協力が必要です。

地主も土地を売却したいと考えているときには、底地と合わせて第三者に同時売却が可能です。同時売却の場合、完全所有権の不動産になるため、買い手が見つかりやすく、売却価格も高額になるというメリットがあります。

同時売却する際は、地主と借地人で売却後の取り分でトラブルにならないように事前に十分協議しておく必要があります。

5-3.第三者へ売却する

借地権を第三者に売却する方法です。

地主の買取や地主と協力して底地と一緒に第三者に売却する方法が不可能な場合に、検討しましょう。

第三者への売却を検討する場合は、不動産仲介業者に依頼して買主を探してもらうか、買取業者に直接買い取ってもらう方法があります。ただし、借地権付き建物の売買は、専門性が高いため、借地権の取り扱いに慣れた不動産会社に話を持ち込むことが大切です。慣れていない会社や担当者であれば、そもそも取り扱ってくれない可能性もあります。

また、地主には事前に、借地権の譲渡承諾を含む譲渡承諾料などの条件を確認する必要があります。

5-4.更地にして地主に土地を返還する

借地権の売却や建物の有効活用が難しい場合は、実費で建物を解体し、更地に戻したうえで地主への返還を検討します。

建物を持ち続けていても、固定資産税・地代の支払いや管理の手間がかかるなど、デメリットが多いのが実情です。

建物の解体は、借地人が行うのが一般的です。地主への交渉次第で地主が負担するケースもあるため、地主との関係性を考慮して、交渉するか検討しましょう。

6.まとめ

本記事では、借地権を相続する際の相続税に関して解説しました。

借地権の相続で相続税がかかるのは、以下の2パターンです。

  • 借りた土地が更地ではなく建物がある状態
  • 地代の支払いがある状態

借地権付き建物を相続する場合は、基本的に相続税が発生すると覚えておきましょう。

また、借地権付き建物は使わずに所有しているだけで、税金・地代の支払いや管理の手間がかかります。そのため、相続後に借地権を手放すことを考える方も少なくありません。

ただし、手放すとなると地主への交渉など、通常の不動産売却よりも複雑で手間がかかります。手放すことを検討したら、借地権に強い不動産会社に相談するようにしましょう。

不動産会社でも借地権に強い会社・弱い会社があるため「借地権トラブルを解決してきた実績のあるところ」を選ぶのが重要です。

中央プロパティーは、借地権を専門に取り扱う売買仲介会社として、売却やトラブルのサポートを通じて、これまで多くのお客様のお悩みを解決してきました。相続した借地権の扱いでお困りの方・売却を検討している方は、ぜひ中央プロパティーへご相談ください。

税理士 福島先生

この記事の監修者

福島 健太フクシマ ケンタ

税理士

税理士。東京税理士会品川支部所属。日本税務会計学会訴訟部門所属。福島健太税理士事務所代表。不動産デベロッパーから税理士に転身した経歴をもつ不動産と税のスペシャリスト。借地権を相続される方が相続税を、また相続した借地権を売却した際に発生する所得税について相談する税理士として多くの顧客を得る。趣味は釣り。

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