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日常家事債務とは|用語集

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コンテンツ番号:1428

日常家事債務とは

日常家事イメージ

意義:婚姻生活で日常的に支出される債務

(日常の家事に関する債務の連帯責任)
民法761条:「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。」

この条文の意味について重要な判例があります。

♦参考判例:最判昭44年12月18日判決

判旨①:「(民法761条は)は、単に夫婦の日常の家事に関する法律行為の効果、とくにその責任のみについて規定しているにすぎないけれども、同条は、その実質においては、さらに、右のような効果の生じる前提として、夫婦は相互に日常の家事に関する法律行為につき他方を代理する権限を有することをも規定しているものと解するのが相当である。」

とし、夫婦は日常家事債務については互いに代理権限を有するとしています。また、その上で「日常家事債務」の意味については、

判旨②:「個々の夫婦がそれぞれの共同生活を営むうえにおいて通常必要な法律行為を指すものである…問題になる具体的な法律行為が当該夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内に属するか否かを決するにあたつては、同条が夫婦の一方と取引関係に立つ第三者の保護を目的とする規定であることに鑑み、単にその法律行為をした夫婦の共同生活の内部的な事情やその行為の個別的な目的のみを重視して判断すべきではなく、さらに客観的に、その法律行為の種類、性質等をも充分に考慮して判断すべきである。」

光熱、家電製品・家具等の日用品、生活に必要な自動車、通院費等にかかる費用は、日常家事の代表的な例といえます。このような債務は、名義人か否かにかかわらず、夫婦のどちらに請求されても支払う義務が発生します。

家事のイメージ

日常家事債務を超えた場合

日常家事債務の範囲を超えるような行為を勝手にしてしまった場合はどうでしょうか。あくまで互いに代理関係にあるのは日常家事債務の範囲「内」でそれを超える場合は代理関係にはありません。したがって、夫婦の一方が日常家事債務の範囲を超えてした法律行為は「無権代理」として帰属することはありません。

上記の判例ではこの問題につき以下のように判示しています。

判旨③:「夫婦の一方が右のような日常の家事に関する代理権の範囲を越えて第三者と法律行為をした場合においては、その代理権の存在を基礎として広く一般的に民法一一〇条所定の表見代理の成立を肯定することは、夫婦の財産的独立をそこなうおそれがあつて、相当でないから、夫婦の一方が他の一方に対しその他の何らかの代理権を授与していない以上、当該越権行為の相手方である第三者においてその行為が当該夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内に属すると信ずるにつき正当の理由のあるときにかぎり、民法一一〇条の趣旨を類推適用して、その第三者の保護をはかれば足りるものと解するのが相当

(権限外の行為の表見代理)
民法110条:「…代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。」

とし、日常家事債務を超える範囲については通常の代理権の問題として処理するとしています。

この記事の監修者

岡田 卓巳オカダ タクミ

弁護士

弁護士。早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。地代滞納、建物明け渡しなど借地権・底地権の案件へ積極的に取り組む。主な著書に「一番安心できる遺言書の書き方・遺し方・相続の仕方」「遺言書作成遺言執行実務マニュアル」など。

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