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借地人が地主に無断で借地の工事|底地の売却・相続

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作成日:
コンテンツ番号:2242

借地人が地主に無断で借地の工事

借地人による工事が土地の利用にとって必要なものなのか

土地の分筆と借地権(最高裁昭和30年9月23日、最高裁昭和4年12月23日)

質問 【底地(地主)】借地人が地主に無断で借地の工事を実施し、工事費を請求してきました。工事費は支払わなければならないのですか。

当該工事が土地の利用にとって必要又はその価値を増加するものであれば、地主は工事費を支払わなければなりません。

借地人が地主に無断で借地の工事を実施し、工事費を請求している図

詳細解説

まず、地主(賃貸人)が借地人(賃借人)に対して負っている義務について整理してみましょう。

1. 使用収益させる義務

民法601条:「賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」

2. 修繕義務

民法606条1項:「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。」

3. 費用償還義務

民法608条1項:「賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。」

民法608条2項:「賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。」

※608条1項が準用する民法196条2項:「占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。」

今回の事例で問題となっているのは(3)の費用償還義務になります。借地人が行った工事が必要費、有益費に当たる場合には、地主は費用を支払う必要が出てきます。
具体的に見てみましょう。

必要費にあたるか否か

必要費とは、家屋であれば雨漏りの修繕など賃貸借の目的物を使用するのに「必要」な場合にかかる費用です。
今回の工事が、土地を利用する際に必要不可欠な工事であった場合には地主は借地人からの請求を拒むことは出来ず、しかも直ちにその費用を支払う必要があります。

有益費について

有益費とは、(土地を改良して)その価値を増加させた費用のことです。必要費に当たらない場合でも、借地人の行った工事が土地の価値を増加させるものである場合には、地主はその費用を支払う必要があります。

具体的な金額については、196条2項:「…(賃借人の)選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる」とあり、実際に支出した金額もしくは、増加額のどちらかを選択して請求することが出来ます。
借地人としては、工事費よりも土地の価値の増加額のほうが上回っていれば、増加額を請求することになると考えられます。

ただ、有益費の場合には、608条2項にあるように「賃貸人は、賃貸借の終了の時に、…」有益費を支払えばよいことになっています。仮に、地主(賃貸人)が有益費の支払いを拒んだ場合、借地人はその費用が支払われるまで、明け渡さないと主張することができます(留置権の行使が可能)。

留置権:民法295条1項:「他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。

とあります。有益費は土地について生じた債権であり、その債権(有益費)の弁済をうけるまで、留置しておくことが出来るということになります。

まとめ

借地人による工事が土地の利用にとって必要なものなのか、必要とまでは言えないが価値を増加する有益なものなのか、いずれに該当するかによって、地主が請求され得る金額が変わってきます。
借地契約の目的も加味して個別具体的に見ていく必要があります。

この記事の監修者

塩谷 昌則シオタニ マサノリ

弁護士

弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。借地非訟、建物明渡、賃料増額請求など借地権や底地権をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。

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