地主と借地人と転借人の関係|借地権関連|法律・税金

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地主と借地人と転借人の関係

質問 【借地権者】借地人(賃借人)が、地主の承諾を得て転借人に土地を転貸したものの、借地人に地代の不払いがある場合、転借人との関係は?

地主Aと借地契約をしている借地人B、Bと転貸借契約をしている転借人C|CはBに賃料を支払っているがBはAに地代不払いの図

地主は転借人に対して土地の明渡しを求めることができます。

地主Aが転借人に『土地を明け渡せ!』と話している図

詳細解説

転借人と地主との関係性

民法613条:「賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。…」

引用元: より

とあります。
本来であれば転貸借契約は借地人(転貸人)と転借人の2当事者間のみのことではありますが、転借人も大元の地主(借地権設定者)に対して直接義務を負うことになるということです。

借地人(転貸人)と転借人との間の転貸借契約は、地主と借地人との間の有効な借地契約の存在を基礎とし、その上に成り立っている契約であることから、直接義務を負うこととされているのです。

借地人が地主に対して地代を支払わないことの影響

地主と借地人との間の借地契約の債務不履行にあたります。

♦【最判昭28年9月25日】

判旨:「賃貸借が当事者の個人的信頼を基礎とする継続的法律関係であることにかんがみ、…賃貸借関係を継続するに堪えない背信的所為があったか…(債務不履行があっても)背信的行為と認めるに足らない特段の事情がある場合においては同条の解除権は発生しないと解するべきである」(信頼関係破壊の理論)

とあるように信頼関係が破綻される程度に賃料の不払い(1ヶ月や2ヶ月では足りません)があると、地主は借地契約を解除することができます。

解除後の関係

では、解除が有効となった場合、地主の承諾を受けて借地人(転貸人)から土地を転借している転借人は、地主に対して土地を明け渡さなくてはならないのでしょうか。

この点、前述のように借地人(転貸人)と転借人との間の転貸借契約は、地主と借地人との間の有効な借地契約の存在を基礎とし、その上に成り立っている契約です。したがって、地主は、借地人(転貸人)との間の借地契約を解除したうえで、転借人に対して土地の明渡しを求めることができます。

♦参考判例【最判平9年2月25日】

判旨:「…賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に、転貸人の転借人に対する債務の履行不能により終了すると解するのが相当である。」

としています。(借地人)転貸人の債務不履行により「転」貸借契約も終了するということです。

合意解除の場合

上記の解除は「債務不履行」による解除の場合でした。それでは、地主と借地人(転貸人)の契約が「合意」解除された場合も同じように考えて良いのでしょうか。この点につき、参考判例を見てみましょう。

♦【最昭62年3月24日】

判旨:「賃貸人が賃借人(転貸人)と賃貸借を合意解除しても、これが賃借人の賃料不払等の債務不履行があるため賃貸人において法定解除権の行使ができるときにされたものである等の事情のない限り、賃貸人は、転借人に対して右合意解除の効果を対抗することができず、したがつて、転借人に対して賃貸土地の明渡を請求することはできないものと解するのが相当である。」

としています。
合意解除の場合には、債務不履行解除のような帰責性は存在しないことから、このような判断が下されていると考えられます。なお、その後の法律構成については、転貸人(借地人)は合意解除により契約関係からは離脱することになり、転借人は借地人(転貸人)の地位を引き継ぎ、地主(借地権設定者)と転借人の賃貸借になると考えられています。

この記事の監修者

塩谷 昌則シオタニ マサノリ

弁護士

弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。借地非訟、建物明渡、賃料増額請求など借地権や底地権をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。

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