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地代請求権~無償の地代を有償へするには~|底地の売却・相続

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コンテンツ番号:1381

地代請求権~無償の地代を有償へするには~

質問 私(A)名義の土地に昨年娘夫婦(BC)が新居を建築し、事情があって今年の4月から住み始めました。上物の建物は娘(B)とその夫の名義(C)ですが、土地は私(A)の所有です(登記もしております)。 最近、地代請求権という言葉を初めて聞きました。 建物は昨年の9月に建て始め、完成したのが12月です。その問いは地代の協議方法など全く分からず、結果として現在は無償で娘夫婦を住まわせています。 今からでも協議して地代の請求をすることはできますか。

親A(地主)の土地に娘夫婦名義の家を建て住んでいるので地主Aは地代の請求をしたいと思っている図

詳細解説

現在の法律関係

まずは、AとBCらとの現在の法律関係を整理してみましょう。現在AはBCに土地を貸しておりますが、地代等はもらっていないということから、民法上の使用貸借の状態にあると考えられます。簡単に言えば、「タダ貸し」です。

(使用貸借)

民法593条:「使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。」

使用貸借契約の場合、地代はタダです。また、使用貸借の場合には借地借家法の適用がありません。

(趣旨)

借地借家法1条:「この法律は、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする。」

「賃貸借」とありますが、この「賃貸借」には「使用貸借」は入りません。というのも、タダで借りている人とお金(地代等)を支払って借りている人とで保護の範囲が同じというのはおかしいですよね(当然有償の人の方が保護は強くされるべきです)。

そのため、本件ではそもそも借地借家法の適用はないことになります。借地借家法の適用がないとすると、原則論である民法の規定に従っていくことになります。使用貸借の終了時期は、

(借用物の返還の時期)
民法597条1項:「借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。」
同条2項:「当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。」
同条3項:「当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる。」

引用元: より

とあります。本件では、具体的事情が明らかではありませんが、場合によっては使用貸借契約を終了すること自体はたやすくできそうです。

地代を請求するには

さて、Aは地代を請求したとのことですが、地代を請求し地代をもらうようになるともはや、使用貸借ではなくなります(通常の賃貸借契約)。
よって、まず、AはBCらに使用貸借契約の終了を通告し、そこから契約を結びなおすことが現実的です。BCからは今更地代を払わなければならないの?などと言われる可能性もありますが、それを拒む場合、正当な権限なくして土地を利用しておりますので、「不法占拠」ということになります。

その場合は、建物を強制的に収去することや、損害賠償請求をすることができます。AとBは親子であり、通常ではここまでは考えられないかもしれませんが、Aはある意味上記の「武器」を持っています。

地代を請求する際は、その旨を娘夫婦に伝え、地代の交渉などに入ることができます。地代の相場は近隣付近や路線価などと比較して決定することができます。娘から地代をとるのか!と言われるかもしれませんが、地代を安くするということは、相続財産が減る可能性があります。すなわち、適正な地代よりも安く貸し出すと、特別受益があったとして、娘が相続できる財産が少なくなるということです。

  • 他に兄弟姉妹等の相続人がいない場合、話は変わってきますが。

話の進め方を間違えると親子関係が最悪になることも考えられます。親子関係があるからこそ、専門家など、客観的な判断ができる第三者を交え交渉することが重要です。このような機会を相続財産の整理の機会と捉え、親族らと真剣に話をするのも良いかもしれません。

この記事の監修者

岡田 卓巳オカダ タクミ

弁護士

弁護士。早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。地代滞納、建物明け渡しなど借地権・底地権の案件へ積極的に取り組む。主な著書に「一番安心できる遺言書の書き方・遺し方・相続の仕方」「遺言書作成遺言執行実務マニュアル」など。

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