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通行地役権の時効取得とは|用語集

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コンテンツ番号:888

通行地役権の時効取得とは

ご相談事例

Aは30年前に購入した土地家屋(相続し現在の所有権登記はA)に住んでいます。
本件家屋及び土地を購入した直後から、公道に出るために、隣の道を公道と思い通行してきました。
他にも公道に出られる道はあったのですが、狭く通行しにくかったためあまりその道は使用していませんでした。
ただ、本件道も舗装やガードレールなども付いておらず通行に不便だったため、A費用を負担し道路を整備しました。
その後、何事もなく昨年まで日々の通行に使っていました。
しかし、先月甲地の所有者がなくなりその子Bが相続したところ、本件道はもともと甲地で、もう今後はこの道は使用させませんと言ってきました。
私はこの道を使用しないと公道に出にくいのでその後も使用し続けていたところ、Bが看板や衝立、バリケード等を置き通行をさせないようにしてきます。
この道を通行することはできないのでしょうか。また、Bの行為をなんとかできないでしょうか。

公道に接していない「袋地」が、隣地Bを通行する囲繞地通行権が認められる可能性がある図 ※基本的には、徒歩での通行に必要な幅員1m程度。

囲繞地通行権の成否

民法210条:「他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。」

とあり、公道に出るために他の土地を通行することが可能です。

民法211条:「前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。」

公道に出るために他の土地を通行することが可能のイメージ

通行地役権の時効取得の主張

1. 通行地役権

民法280条:「地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。」

とあります。“公道へ通行”という目的のために設定することができ、本件のように承役地を通行することができる権利の場合を通行地役権といいます。

2. 時効取得

通行地役権は、原則として契約で設定することが必要ですが、

民法162条1項:「二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。」

民法162条2項:「十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。」

とあります。1項が悪意の時効取得、2項が善意の時効取得です。時効取得可能性が考えられ、地役権については下記の規定もあります。

民法283条:「地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。」

通行地役権の場合も継続的に行使され、外形上認識できるものに限り時効取得が認められます。
本件の場合、30年以上通行していたことから、条文の規定通り解釈していくと通行地役権の時効取得をしていると考えられます。
判例は「継続的」の要件の判断に当たっては、要役地の所有者によって通路の開設をすることが必要と判示しています。

♦参考判例:最判平成6年12月16日判決

判旨:「地役権は継続かつ表現のものに限って時効取得が認められるが(民法二八三条)、通行地役権について右「継続」の要件を満たすには、要役地の所有者によって承役地となる土地の上に通路が開設されたものであることを要すると解されるところ…」

時効取得という強力な権限が認められるためには、自ら道路を開設する程度の労力は必要だ、という考えがあると予想されます。
本件の場合A自らの費用で道路を開設している事情もあるため、通行地役権の時効取得をしている可能性が高いです。

通行地役権の登記

通行地役権が時効取得により認められたら登記をすみやかにしましょう。

民法177条:「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ第三者に対抗することができない。

地役権は物権ですので、第三者に自身の権利を主張するためには、177条にあるように登記が必要です。
もっとも、当事者間では登記が無くても当然権利を主張することができますが、売買などで第三者に渡った場合にはその者に権利を主張することができなくなるため、登記をすることを推奨いたします。

妨害排除請求

物権には妨害排除請求権が認められています。これは物権の内容を実現するために認められる当然の権利とされています。

  1. 物権的返還請求権
  2. 物権的妨害排除請求権
  3. 物権的妨害予防請求権

の3種類があります。
本件ではBが通行地役権という物権の実現の妨害を現に行っているため②の妨害排除請求権を行使することができます(通行地役権に基づく妨害排除請求権)。

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この記事の監修者

塩谷 昌則シオタニ マサノリ

弁護士

弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。借地非訟、建物明渡、賃料増額請求など借地権や底地権をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。

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