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地主とは?借地人が知っておきたい基礎知識と関係構築のポイント

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地主とは?借地人が知っておきたい基礎知識と関係構築のポイント

地主とは?借地人が知っておきたい基礎知識と関係構築のポイント

この記事では「地主」という存在について、その定義や歴史的背景、そして現代における役割の変化を解説します。
また、借地人として地主と良好な関係を築くための重要なポイントについても具体的にご紹介します。

円満な借地関係を維持するために、ぜひ参考にしてください。

地主とは

地主とは

地主とは、一般的に土地を所有し、それを第三者に貸すことで地代(賃料)収入を得ている個人や法人を指します。
法律上、土地を貸す権利を持つ地主は「底地権者」、土地を借りる権利(借地権)を持つ人は「借地権者(借地人)」と呼ばれます。

所有する土地の面積や規模によって「大地主」と呼ばれることもありますが、明確な定義(例:1,000坪以上)があるわけではなく、慣習的な表現です。
小さい面積であっても土地を貸していれば地主と言えます。

地主には、先祖代々土地を受け継いできた旧家もいれば、自身の事業などで財を築き、投資として土地を取得した新しいタイプの地主も存在します。
土地を所有し、それを活用(賃貸)することが地主の基本的な活動です。

かつては地主と借地人が同じ地域に住み、日常的な交流があることも少なくありませんでしたが、現代では地代の振込化や管理会社の介在などにより、関係性が希薄化する傾向にあります。

また、昔は地代収入を主な生計の柱とする地主も多く存在しましたが、現代では兼業で他の仕事を持つ地主が増えています。

地主の歴史

ここでは、土地を代々受け継いできた昔ながらの地主について、その歴史的背景と現代に至るまでの変遷を解説します。

土地を占有し管理するという考え方は、稲作の普及とともに弥生時代以降に徐々に形成されました。
その後、時代ごとの支配体制(荘園制、武家社会など)によって土地の管理・所有のあり方は変遷します。

明治維新後、近代的な土地所有権制度の確立に向けた動きが進みます。
その大きな転換点となったのが、「地租改正」と「農地改革」です。

地租改正(1873年)

地租改正は、明治政府が安定した税収を確保するために行った改革です。

地租改正の主な内容は以下の通りです。

  • 地価の決定: 全国の土地を測量し、収穫量などに基づいて公定地価を定めました。
  • 地券の発行:土地の所有者、所在地、面積、地価などを記載した「地券」を発行し、土地所有者を法的に明確化しました。(これにより「地主」が公的に定義されました)
  • 金納化・定額化:それまでの米(現物)納付を改め、地価の3%(当初)を毎年現金で納めることとしました。豊凶に関わらず一定額を納める必要がありました。
  • 土地売買の自由化:それまで制限されていた土地の売買が自由になりました。

地租改正により、高額な地租を納められない農民などが土地を手放し、資金力のある地主や商人に土地が集積する傾向が強まりました。
一部の大地主は、その資金力を背景に金融業や産業への投資を進め、資本家として政治・経済に影響力を持つようになりました。

農地改革(1945年~1946年)

一部の地主に富が集中する状況を一変させたのは、第二次世界大戦後のGHQ(連合国軍総司令部)による農地改革です。
1945年末から準備が進められ、1946年10月に関連法が成立し、本格的に実施されました。

農地改革の主な目的は以下の通りです。

  • 農村の民主化:地主が農地を寡占し、小作人を支配する封建的な構造を解体すること。
  • 食糧増産:自作農を増やし、農業生産意欲を高めること。
  • 大地主(資本家)の弱体化:大地主層の経済的・政治的影響力を削ぐこと。

政府が不在地主の全貸付地や、一定面積を超える在村地主の貸付地などを強制的に買い上げ、それを実際に耕作していた小作人に優先的に安価で売り渡しました。

その結果、多くの小作人が自作農となり、地主制度は実質的に解体されました。
そして、これにより多くの旧地主層は没落することになります。

しかし一方で、改革後に土地を手放した元小作人もおり、そうした土地や、改革の対象外となった山林・宅地などを買い集め、戦後のインフレーションや経済成長に伴う地価高騰によって資産を形成した新たな地主層も出現しました。

時代と共に変化する地主と借地人の関係性


(旧借地法時代・
高度成長期前が目安)
現代
(借地借家法施行後が目安)
主な収入源地代収入が中心地代収入に加え、給与所得や他の事業収入など多様化
地主の居住地
所有地や近隣に居住し、地域コミュニティの一員であることが多い
所有地と離れた場所に居住するケースも増加
借地人との関係性比較的密接。
地代の手渡しや季節の挨拶・贈答など、人格的な繋がりが見られることも多い
希薄化・契約関係が中心。
地代は銀行振込が主流となり、直接的な交流は減少傾向
土地に対する認識生活基盤、家業、地域社会への貢献といった側面も重視(特に都市部では)経済的価値・資産としての側面が強く意識される
権利関係・準拠法旧借地法が適用され、借地人の権利が手厚く保護される傾向(更新が原則、立退きは困難)借地借家法が基本。
旧法契約も多数存続するが、定期借地権など地主側の権利や土地活用に配慮した制度も導入

かつて、特に地域社会においては、地主は単なる賃貸人(大家)であるだけでなく、借地人にとって身近で頼りになる存在として機能することもありました。
明治時代の地租改正(1873年〜)によって近代的な土地所有権が確立されたことは前述の通りですが、当初は現在のような資産としての土地の価値が必ずしも高く認識されていたわけではなく、地主が比較的気軽に土地を貸し出す素地がありました。

地域の有力者として、地主がコミュニティのリーダー的な役割を担うことも少なくありませんでした。
第二次世界大戦後の混乱期には、住宅難の中で、戦災などで住む場所を失った人々に土地を提供する地主もいました。
また、1921年(大正10年)に制定された旧借地法は、社会経済的な状況を背景に、立場の弱い借地人を手厚く保護する性格を持っていました。
地主自身もその土地や近隣に居住している場合が多く、借地人との間に隣人のような関係性が築かれることも一般的でした。

しかし、1950年代後半から始まる高度経済成長期に入ると状況は一変します。

全国的な地価の急激な高騰により、土地は極めて価値の高い「資産」であるという認識が社会全体に浸透していきました。

昭和30年代(1955年〜1964年)頃までは、地代の支払いを通じて地主と借地人が毎月顔を合わせ、季節の贈答品(お中元・お歳暮など)を交換するような、密接な関係が見られることもありました。
しかし、金融機関のシステムが発展し、地代の支払いが銀行振込に移行するにつれて、直接顔を合わせる機会は自然と減少していきます。

土地や家屋の賃貸管理を主な収入源としていた地主の中にも、時代の変化とともに他の事業や仕事に従事する人が増えていきました。
かつては人格的な繋がりも強かった地主と借地人の関係は、経済合理性や社会の変化の中で、徐々に希薄化・契約的な関係へと移行していったのです。

旧借地法は、借地人の権利を強く保護するあまり、一度貸した土地がなかなか返還されず、地代の値上げも容易ではないという状況を生みました。
これは結果的に、地主が新たな土地賃貸に消極的になる「貸し渋り」を招き、都市部などでの土地の有効活用を阻害する一因ともなりました。


こうした状況を改善し、地主の権利にも配慮することで土地の流動性を高め、有効活用を促進する目的で、1992年(平成4年)に借地借家法が施行されました。
借地借家法では、契約期間の満了によって確実に借地関係が終了する「定期借地権」制度などが導入されました。

しかし、借地借家法の施行前に締結された旧借地法に基づく契約は、現在も数多く存続しています。
契約更新時に自動的に新法の契約に切り替わるわけではなく、当事者の合意が必要となるため、依然として旧法下の借地人に有利な条件の契約が多く残っているのが実情です。

借地人は注意!地主とトラブルになりやすいポイント

地主と借地人の関係性は時代とともに変化し、以前のような密接な付き合いは少なくなりました。

しかし、土地の賃貸借契約という関係は継続します。

良好な関係を維持することは、借地人にとっても重要です。
地主との関係をこじらせると、後々不利益を被る可能性もあります。

借地人が注意しておくべき、”地主に嫌われがちなポイント”は以下の通りです。

  1. 地代の滞納
  2. 更新料を支払わない
  3. 増改築等の契約違反

1.地代の滞納

地代の滞納は、地主と借地人の間で最も発生しやすいトラブルの一つです。

一般的に、土地の賃貸利回りは他の投資と比較して低い傾向にあります。
地主からすれば、自身の重要な資産を長期間、比較的安い賃料で貸しているという感覚があります。
そのため、約束された地代が支払われないことは、契約違反であると同時に、地主の感情を大きく損なう可能性があります。

地代の滞納が続くと、地主は遅延損害金を請求できるほか、最終的には賃貸借契約の解除及び土地の明渡しを求める訴訟を起こす可能性があります。
信頼関係が破壊されたと判断されれば、契約解除が認められる可能性が高まります。

2.更新料を支払わない

借地契約の更新料については、法律上の支払い義務はありません。
契約書に更新料の支払いに関する明確な合意(特約)がある場合や、過去に支払った実績がある場合などを除き、地主が一方的に請求しても法的な支払い義務は生じません。

しかし、特に旧借地法下の契約では地代が低廉に抑えられているケースが多く、地主側としては、更新料を「地代の不足分を補う一時金」「借地権の継続を認める対価」と捉え、「支払われるのが当然」と考えている場合が少なくありません。

法的義務がないからといって、地主の要求を一方的に拒否すると、感情的な対立を生み、その後の関係悪化を招く可能性があります。
更新自体は法定更新される場合が多いですが、他の場面(増改築の承諾など)で協力が得られにくくなるなどの不利益が生じることも考えられます。
支払うか否か、金額をどうするかは、地主と十分に話し合い、合意形成を図ることが望ましいでしょう。

なお、更新料の相場は、更地価格の3%~5%程度になるケースが一般的ですが、地域や慣習によって異なります。

3.増改築等の契約違反

借地上の建物は借地人の所有物ですが、その建物を建て替えたり、大規模な増改築(構造や規模を変えるような工事)を行ったりする場合には、原則として地主の承諾が必要です。
これは、多くの場合、土地賃貸借契約書に「増改築には地主の承諾を要する」といった条項(増改築禁止特約)が定められているためです。

増改築の内容によっては、土地の利用状況が大きく変わったり、将来の土地返還に影響が出たりする可能性があるため、地主の権利を守る観点から承諾が必要とされています。

地主の承諾を得ずに無断で増改築を行うと、契約違反となります。
地主は工事の中止を求めたり、損害賠償を請求したりできるほか、契約違反を理由に賃貸借契約を解除し、建物収去と土地の明渡しを求める可能性があります。

地主が承諾を与える際には、承諾料(名義変更料、建替承諾料などと呼ばれる)を要求されるのが一般的です。

契約書が存在しない場合でも、慣習や法律(借地借家法第17条など)に基づき、建て替えや大規模な増改築には地主の承諾が必要とされるのが一般的です。
トラブルを避けるため、必ず事前に地主に相談しましょう。

なお、軽微な修繕(屋根の葺き替え、内外装の変更など、建物の構造に影響しないもの)であれば、通常は承諾不要とされますが、判断に迷う場合は確認するのが賢明です。

地主と良好な関係を築くメリット

借地人が地主と良好な関係を築くメリットは、以下の通りです。

  1. トラブルの発生を未然に防止できる
  2. 借地権を売却する際の価値が高まる
  3. 建て替えや増改築などの承諾を得やすい

1.トラブルの発生を未然に防止できる

地主と借地人も人間同士であり、感情的な対立は様々なトラブルの引き金となります。
関係が悪化すると、地主が契約更新時に不必要な強硬姿勢を示したり(正当事由がない限り更新拒絶は難しいですが)、相場を逸脱した地代の値上げを要求したり、些細なことでクレームをつけてきたりする可能性があります。

借地権の譲渡(売却)や建物の増改築に必要な承諾を得る際に、地主との関係が悪化していると、法外に高額な承諾料を要求されたり、理由なく承諾を拒否されたりといった嫌がらせを受けるケースも考えられます。

土地は生活の基盤であり、地主とのトラブルは借地人やその家族にとって大きな精神的ストレスとなります。
地主との良好な関係性は、このような無用な争いを未然に防ぐことにつながります。
借地人としては、日ごろから地主の立場や権利を尊重する姿勢を示すことが大切です。

2.借地権を売却する際の価値が高まる

借地権は財産権であり、売却(譲渡)することが可能です。
しかし、借地権を売却する際には、原則として地主の承諾が必要です。
地主との関係が良好であれば、この承諾がスムーズに得られやすくなります。

借地権を購入しようとする人にとって、地主との関係性は非常に重要な判断材料です。
地主との間にトラブルを抱えている物件は、将来的なリスクを懸念され、買い手が見つかりにくくなったり、売却価格が相場より低くなってしまったりする可能性があります。

反対に、地主との関係が良好であることが分かれば、買い手は安心して取引を進めることができ、結果として借地権の適正な価格での売却につながります。

3.建て替えや増改築などの承諾を得やすい

例えば、借地上の老朽化した建物を建て替える、あるいは増改築するといった場合、前述の通り原則として地主の承諾が必要です。
地主との間に信頼関係が築けていれば、比較的スムーズに承諾を得られる可能性が高まります。承諾料の交渉なども、円滑に進めやすくなるでしょう。

反対に関係性が悪化していると、地主が正当な理由なく承諾を渋ったり、過大な承諾料を要求したりするなど、手続きが難航する可能性があります。

地主が正当な理由なく承諾しない場合、借地人は裁判所に申し立てて、地主の承諾に代わる許可(借地非訟)を得ることは可能です。
しかし、これには弁護士費用などの費用と時間がかかり、精神的な負担も伴います。

建て替えや増改築以外にも、借地の利用方法に関する細かな相談事などが発生した場合、良好な関係があれば柔軟に対応してもらいやすくなることが期待できます。
地主の協力が必要となる場面は意外に多いため、日ごろからの関係構築が重要です。

地主と良好な関係を築く方法

借地人が地主との良好な関係性を築く方法は、以下の通りです。

  1. 契約内容をしっかりと把握する
  2. 地代を滞納しない
  3. 地主への挨拶や丁寧な対応を心がける

1.契約内容をしっかりと把握する

一つめは「賃貸借契約の内容を把握する」です。

賃貸借契約書には、地代や支払い方法・契約期間などの基本情報に加え、禁止事項や特約事項なども記載されています。
地主の許可が必要な事項も明記されており、契約内容を借地人が把握しておけば防げるトラブルもあります。

多くの場合、建て替えや大規模な修繕は地主の承諾を得るなどの条件が定められています。
中には「建物の階数」「延べ床面積」など、定義が細かいケースもあります。
「この修繕なら大丈夫だろう」といった思い込みで勝手に建物に手を加えると、トラブルが生じやすくなります。

借地人は、契約違反で自身がどう不利になるかを把握するためにも、借地権に関する最低限の知識は備えておきましょう。

契約書がない場合でも、口頭で契約内容を確認し、地主と認識合わせをしましょう。

2.地代を滞納しない

地代を期日通りに支払うことは、借地人としての最も基本的かつ重要な義務です。
借地権が法律で強く保護されているとはいえ、その大前提は地代を支払っていることです。

地代の滞納が続くと、単に地主との信頼関係を損なうだけでなく、最終的には賃貸借契約の解除という深刻な事態を招く可能性があります。
契約が解除されれば、借地人は原則として自己の費用で建物を解体・撤去し、土地を更地にして地主に返還しなければなりません(建物収去土地明渡請求)。

地代滞納から明け渡しまでの流れ

なお、地主が地代を請求できる権利(賃料債権)には消滅時効があります。
2020年4月1日施行の改正民法により、原則として「権利を行使できることを知った時から5年間」または「権利を行使できる時から10年間」のいずれか早い方が経過すると時効により消滅します。
ただし、地主が支払いを催告したり、裁判上の請求をしたりすると時効の完成が猶予または更新されるため、滞納し続けていればいずれ請求される可能性が高いです。

支払い忘れがないよう、口座振替を利用するなど、確実に支払える方法を選択しましょう。
万が一、支払いが遅れそうな場合は、事前に地主に連絡し、事情を説明して相談することが、信頼関係を維持する上で非常に重要です。

3.地主への挨拶や丁寧な対応を心がける

地主だからといって過度にへりくだる必要はありませんが、社会人として当然の礼儀をわきまえた対応を心がけることが大切です。
例えば、偶然顔を合わせた際には挨拶をする、連絡を取る際には丁寧な言葉遣いを心がけるといった基本的なコミュニケーションが、良好な関係の基礎となります。

借地や借地上の建物に関して、何か変更を加えたい場合(特に増改築など契約に関わる可能性のあること)や、気になる点、不明な点がある場合は、些細なことでも事前に地主に相談する姿勢が重要です。
「これくらいなら大丈夫だろう」「後で報告すればいい」といった自己判断は、後々トラブルの原因になりかねません。

可能であれば、お中元やお歳暮とまではいかなくとも、年に一度程度、近況報告や挨拶を兼ねて連絡を取るなど、意識的にコミュニケーションの機会を持つことも、長期的な信頼関係の維持に繋がる場合があります。

まとめ

地主とは土地を貸し地代収入を得る人のことで、かつては借地人と密接な関係もありましたが、現代ではその関係も変化し、ビジネスライクな付き合いが増えています。

そのため、「地主が借地権の売却を認めてくれない」「借地権を相続したが地主との関係構築が面倒」「更地返還を迫られている」といったお悩みや、コミュニケーション不足から関係がこじれてしまうケースも少なくありません。

地主との関わり方で不安がある借地人の方は、ぜひ借地権専門のセンチュリー21中央プロパティーにご相談ください。
豊富なトラブル対応経験に基づき、あなたのお悩みに寄り添い、最適な解決策をご提案いたします。

この記事の監修者

菅原 悠互スガワラ ユウゴ

弁護士

弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で借地非訟手続きや建物買取請求権の行使など今社会問題化しつつある借地権トラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。

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