\ 売却のご相談はこちら /

借地契約の更新拒絶における正当事由をわかりやすく解説

更新日:
作成日:
コンテンツ番号:3286

借地契約の更新拒絶における正当事由をわかりやすく解説

借地契約の更新拒絶における正当事由をわかりやすく解説

「借地契約の更新を終了したいのだけどどうすればいいの?」「更新拒絶って具体的に何?」

借地契約は期間が満了すると更新されるのが一般的ですが、地主によっては、更新のタイミングでご自身の土地を自分で利用したいと考える方も少なくありません。

借地人がいるため、「マイホームを建築できない」「売却できない」など活用に制限がかかってしまいますが、地主は契約期間満了日の1年前から6か月前までの間に、借地契約の更新を拒絶する意思表示をすることも可能です。

とはいえ、地主が更新拒絶するためには「正当な事由」が法律上求められます。
そのため、単純に更新したくないという理由だけでは認められません。
どのような事由が当てはまるのかを事前に理解しておくことが大切です。

この記事では、借地の更新拒絶の基本的な考え方と、更新拒絶に必要となる4つの主要な正当事由の判断要素について詳しく紹介します。
最後に、借地人と地主の間で実際に争われた更新拒絶に関する裁判例も解説します。

借地の更新拒絶とは

借地の更新拒絶とは、借地権の更新を地主側が拒み、借地契約を期間満了をもって終了させる方法です。
更新拒絶が認められると、借地人はその土地を使用することができなくなるため、原則として借地上の建物を収去して土地を明け渡す必要があります。

とはいえ更新拒絶は一方的にいつでも申し出ることができるわけではなく、借地借家法に基づき、以下のいずれかのタイミングで地主が遅滞なく異議を述べることが必要です。

  • 借地人が契約の更新を請求したとき
  • 借地人が契約期間満了後も土地の使用を継続しているとき

借地権には賃貸借契約に明記された契約期間が定められており、満了が近づくと、借地人は更新の交渉を地主へ行います。
また、借地人が借地権の契約が終了したのにもかかわらず継続して使用している場合にも、「地主は遅延なく異論を述べる」ことで更新拒絶をすることが可能です。

ただし、借地契約の更新拒絶をするには「正当な事由」が求められます。
これは、借地人の立場とすれば、生活や事業の基盤である住居や店舗等を失うことになるためです。
そのため、どのような内容が正当事由に該当するかを把握しておかなければいけません。
具体的な理由の前に、正当事由の規定は現行の借地借家法(新法)と、それ以前の借地法(旧法)とで条文が異なります。

どちらの法律が適用されるかは、借地契約が平成4年(1992年)8月1日より前に開始されたかどうかで判断されます。

次の項で詳しく解説します。

底地専門の仲介業者|トラブルなし&高額売却をサポートします! ≫

新法と旧法における正当事由の違い

正当事由の判断基準は、契約が成立した時期によって適用される法律が異なり、1992年(平成4年)8月1日以前から存続する借地権は旧法(旧借地法)に該当し、それ以降に設定された借地権には原則として新法(借地借家法)が適用されます。

このため、正当事由に関する条文は異なりますが、どのような点に違いがあるのでしょうか。

実際は新法・旧法ともに、条文の文言こそ違いますが、実質的な判断においては共通する要素が多く、解釈運用においては大きな方向性に違いはありません。

それぞれ説明していきます。

新法(借地借家法)における正当事由

新法(借地借家法)における正当事由は以下の条項の通りです。

借地借家法 第6条

前条の異議は、借地権設定者(地主さん)及び借地権者(借地人さん。転借地権者を含む)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。

上記の内容をかみ砕いて説明すると、正当事由は主に以下の要素を総合的に考慮して判断されます。

  • 地主及び借地人が土地の使用を必要とする事情
  • 借地に関するこれまでの経緯(契約締結の状況やその後の変化など)
  • 土地の利用状況(現在の使われ方など)
  • 地主が借地人に対して、土地の明け渡しと引き換えに代替地や立ち退き料などの財産上の給付を申し出た場合の、その申し出の内容

しかし、地主の意思だけでなく、借地人の土地の使用状況などを総合的に考慮して判断されると記載されています。
そのため、地主が土地を使用したいなどの一方的な意思では直ちに正当事由に該当するとは限らず、双方の事情から判断されます。

旧法(旧借地法)における正当事由

一方、旧法(旧借地法)では以下の条項となります。

旧借地法 第4条第1項
土地所有者力自ラ土地ヲ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ他正当ノ事由アル場合二於テ遅滞ナク異議ヲ述ヘタルトキハ此ノ限二在ラス第6条
旧借地法 第6条第2項
前項ノ場合二於テ建物アルトキハ土地所有者ハ第4条第1項但書二規定スル事由アルニ非サレハ異議ヲ述フルコトヲ得ス

上記の内容をまとめると、地主が自ら土地を使いたいという必要性がある場合や、その他の正当な事由がある場合において、借地人に対して「遅延なく更新拒絶を述べた」時に更新を拒むことができると記載されています。

一見、地主側でその土地を使う必要があれば正当事由として認められると思われがちですが、判例の積み重ねにより、その解釈は新法の考え方に近づいており、地主の自己使用の必要性だけでなく、借地人の事情やその他の要因も総合的に考慮されるのが実情です。

新法では、判断要素がより具体的に明記されたといえます。
そのため、いずれの法律が適用される場合でも、より詳細な内容を理解しておかないと、更新拒絶ができない可能性もあります。

底地専門の仲介業者|トラブルなし&高額売却をサポートします! ≫

地主の更新拒絶に必要な4つの正当事由

地主が更新拒絶するためには、主に以下の4つの要素が総合的に考慮されます。

  1. 地主及び借地人が土地の使用を必要とする事情・・・最も重要
  2. 借地に関する従前の経過・・・重要
  3. 土地の利用状況・・・重要
  4. 地主から借地人への財産上の給付(立ち退き料など)・・・補強・調整的要素

これらの要素は、それぞれ独立して判断されるのではなく、相互に関連し合って正当事由の有無が判断されます。

更新拒絶に必要な正当事由①:地主及び借地人が土地の使用を必要とする事情

「地主及び借地人が土地の使用を必要とする事情」は正当事由の判断の中で最も重要視されています。

裁判所は、地主側と借地人側双方から提出された「土地を必要とする具体的な理由」を比較し、どちらの必要性がより切実かを判断します(比較衡量といいます)。

主な考慮事情としては、以下のようなものが挙げられます。

双方の土地の自己使用の必要性の内容
(例)
正当事由を肯定する方向性の事情
(地主側から見た例)
・本人または親族が居住のために土地が必要となった
・生計上(例:事業用地として)必要となった
・建物の老朽化が著しく、地主が再建築・大規模修繕を計画している
・都市計画事業などにより、土地の高度利用の必要性が生じた
・営業上の必要性
・地主が他に利用可能な不動産を所有していない
・借地人が実際にはその土地や建物を使用していない(例:長期間空き家になっている)
・借地上の建物が著しく劣化し、腐食している
・借地人が不動産を多数所有しており、当該借地への依存度が低い
・地主の当該土地に対する必要性が、借地人の必要性に比べて著しく高い

新法・旧法でもあった通り、地主と借地人が土地の必要性を確認し、どの程度高いのかを比較衡量しなければいけません。
お互いの家族構成や職業、資産状況なども考慮されます。
また、「借地人がその土地を有効に使用していない」「借地上の建物が著しく劣化・腐食しており、客観的に見て使用に耐えない」などの状況であれば、地主側の正当事由が認められやすくなる可能性が高まります。

とはいえ、前述の通り正当事由は様々な要素を総合的に判断するため、地主側に「土地の使用が必要である事情」がなければ、更新拒絶は困難です。
さらに、借地人側の方が土地を使用しなければいけない事情が強ければ認められないということになります。
例えば、長年使っていなくても、借地の更新後にすぐに使う予定(例:子供の進学に伴う転居など具体的計画)などがあると、直ちに正当事由に該当しない場合もあるでしょう。
ただし、立ち退き料などの金額次第では正当事由が認められるケースもあります。

更新拒絶に必要な正当事由②:借地に関する従前の経過

借地に関する従来の経過は、権利金や更新料の授受の有無・金額、地代の支払い状況、契約締結時の経緯など、借地における諸事情が考慮されます。

例えば、地代の支払いが長い間滞っていた場合や、借地人による無断増改築・用法違反といった契約違反があった場合は、地主側の正当事由に該当すると判断されることもあります。

また、賃貸借契約を締結した時の地代より、現在の相場価格や固定資産税などの高騰によって地代の値上げ交渉を行ったものの、折り合いがつかない場合も双方の見解から正当事由に該当するか判断されることもあります。
ただし、単に地代が低いというだけでは、直ちに正当事由とは認められにくいでしょう。

更新拒絶に必要な正当事由③:土地の利用状況

現在の土地の使用状況や、その周辺環境などから正当事由に該当するか判断されます。

借地人が実際に住んでおらず、なおかつ老朽化している場合は、「なぜ所有しているのか」という理由が確認されます。

また、借地全体に対してどれくらい利用されているのかなどの割合も確認項目の一つです。

さらに利用状況だけでなく、建物の築年数や構造、規模、用途など、建物の状況も正当事由に該当するかの判断材料となります。
例えば、違法建築物が存在する場合や、周辺環境に悪影響を与えているような利用状況も考慮されることがあります。

更新拒絶に必要な正当事由④:財産上の給付

上記①から③の要素を考慮してもなお正当事由が十分とは言えない場合に、その不足を補うものとして、地主から借地人に渡す立ち退き料の金額や、代替不動産の提供ができるのかを確認します。

仮に借地人が住んでいた家を明け渡すことになった場合、今後の生活に支障をきたさないように金銭を渡せるかもポイントです。
また、新たな居住先を提供するのも財産上の給付ができるかの判断材料となります。
立ち退き料の額は、借地権価格や移転費用、営業補償などを考慮して算定されますが、画一的な基準はなく、個別の事案ごとに判断されます。

ここまでご紹介した①〜④の要素は同列・同等ではなく、①が基礎となる重要な要素、②及び③は①の判断を補強する要素、④はこれらの要素を総合的に考慮した上で、最終的に正当事由の有無を判断する際の調整的・補完的な要素となります。
そして、①〜④の要素は総合的に考慮されて、正当事由の存否が判断されます。
とはいえ、正当事由はケースバイケースであるため、借地権に強い弁護士や不動産会社に相談することが大切です。

経験豊富な専門家であれば、正当事由に該当するか判断してもらうことが可能です。
更新拒絶は借地人にとって不利な状況にもなりかねないため、裁判まで発展する可能性が高いと言えます。
裁判の結果、更新拒絶が認められなかった場合は、時間と労力を費やすのみとなってしまうため、すぐに借地人に更新拒絶をするのではなく、専門家に相談することからスタートしましょう。

センチュリー21中央プロパティーは、底地専門の不動産仲介会社です。
底地や地主様の事情に詳しい社内弁護士が常駐しており、いつでも法的観点からの的確なアドバイスが可能です。

地主様ならではのお悩みや心配事に真摯に寄り添いながら、底地のトラブル解決や売却を進めさせていただきますので、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

更新拒絶の正当事由にまつわる判例

ここでは、実際にあった「更新拒絶の正当事由」に関する判決事例を4つ紹介します。

更新拒絶の正当事由にまつわる判例①:地主が物件を使用する理由が生じて正当事由と認められたケース

地主が娘と同居するため、現在の住宅と借家をリノベーションして一体化することを目的としていました。
敷地内にある倉庫の解約申し入れに対し、3年分の賃料に相当する100万円の立ち退き料として支払うことなどを考慮し、正当事由として認められました。
もちろん裁判所は賃借人と地主の事情を詳細に確認し、地主側の方が建物を使用する必要性が高いと判断した判例です。

参考:大阪地判昭和59年11月12日 判例

更新拒絶の正当事由にまつわる判例②:賃貸借契約に明記された内容が正当事由に該当したケース

渡米した地主一家が、賃借人に部屋を貸しておりました。
渡米時には「将来帰国するなどして自己使用の必要が生じた場合には賃貸借契約を解約し、賃借人はオーナーに対し本件建物を明け渡す」という特約を締結しており、数年後には帰国予定でした。
帰国後、地主側は日本の学校に通う予定であったものの、借地以外の建物を所有していなかったため、親戚の家に居住しておりました。

このケースでは、上記特約の存在も考慮要素の一つとしつつ、地主側の自己使用の必要性などを総合的に判断し、最終的に地主側の正当事由が認められました。

参考:東京地判昭和60年2月8日 判例

更新拒絶の正当事由にまつわる判例③:老朽化した建物を解体するための更新拒絶のケース

駅から徒歩数十秒という立地築35年のビルを所有していた地主は、老朽化に伴い解体を検討していたため、賃借人に賃料3年分となる4,000万円の立ち退き料を支払って正当事由として認められた判例です。

駅近物件ということもあり、賃借人側であるテナントの売上や移転に伴う損失を考慮すると、4,000万円が妥当ということで、地主は支払って更新拒絶を行いました。

参考:東京地判平成8年5月20日 判例

更新拒絶の正当事由にまつわる判例④:土地の有効利用のための更新拒絶が認められなかったケース

賃貸用のビルを建設するにあたって、1つの企業が立ち退きを拒否し、地主側の主張する正当事由に該当しなかった判例です。

賃貸用のビルは、建設エリアの地権者に対して土地の取得を進めておりましたが、出版業を営む賃借人が立ち退きを拒みました。

建設会社は立ち退き料の交渉を行ったものの、出版会社は揺るがず、さらに継続利用の必要性の高さが認められたため、この事案においては、更新拒絶に対する正当事由が足らないと裁判所が判決しました。

参考:東京地裁判決平成元年6月19日 判例

底地専門の仲介業者|トラブルなし&高額売却をサポートします! ≫

まとめ

借地契約の更新を拒絶するには、地主・借地双方の事情を総合的に考慮した「正当事由」が不可欠です。
しかし、その判断基準は複雑で、専門知識なしに進めるのは難しいのが実情です。

「借地人による地代滞納が解消されない」「地代の値上げ交渉が進まない」「借地人に無断で増改築や転貸をされてしまった」「更新料や各種承諾料の支払いに応じてくれない」など、地主様ならではの深刻なお悩みは後を絶ちません。
また、相続により底地を取得されたものの「煩雑な管理や借地人との交渉を誰が担うのか」「共有名義の相続人間で売却方針がまとまらない」「高額な税負担に悩んでいる」といった相続人様も少なくありません。

当社センチュリー21中央プロパティーは、底地を専門とする不動産仲介会社です。
これまでのご相談・トラブル解決・売却の実績は延べ4万件以上にものぼり、底地においては圧倒的な実績を誇ります。
これらの実績で得られた膨大なノウハウに加え、借地権トラブルの解決に強い社内弁護士が常駐していることから、地主様の立場に寄り添いつつ、法的な見地からの適切なアドバイスがいつでも可能な体制を整えております。

ご相談は無料となっておりますので、底地のトラブルや売却でお悩みの地主様・相続人様は、ぜひお気軽にご相談ください。

底地専門の仲介業者|トラブルなし&高額売却をサポートします! ≫

この記事の監修者

岡田 卓巳オカダ タクミ

弁護士

弁護士。早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。地代滞納、建物明け渡しなど借地権・底地権の案件へ積極的に取り組む。主な著書に「一番安心できる遺言書の書き方・遺し方・相続の仕方」「遺言書作成遺言執行実務マニュアル」など。

この記事のタグ

おすすめの記事はこちら