借地からの立ち退きは拒否できる?拒否した場合の3つの末路とは?
目次
借地人の権利は借地借家法という法律で強く保護されており、正当な理由がない限り立ち退きに応じる必要はありません。
それでは具体的に、どのような状況なら立ち退きを拒否できるのでしょうか?
この記事では、地主による借地からの立ち退き要求に直面した際の対処法や、拒否できる状況、拒否できない状況について詳しく解説します。
借地からの立ち退きは拒否できる?
借地からの立ち退きは、原則として拒否することができます。
借地借家法では、借地人の権利が強く保護されており、地主側の一方的な都合で簡単に立ち退きを迫ることはできません。
たとえ地主が立ち退き料を提示しても、その主張が必ずしも認められるわけではないのです。
地主が立ち退きを要求する場合、法律上、妥当であると判断できる理由(正当事由)が必要となります。
この正当事由の有無は、最終的には裁判所が双方の事情を総合的に判断することになります。
つまり、借地人は単に「立ち退きたくない」という意思表示だけでなく、法的根拠に基づいて立ち退きを拒否する権利を持っているのです。
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立ち退きの拒否が難しいケース

立ち退きの拒否が難しい代表的なケースとしては、以下の4つが挙げられます。
- 契約更新を拒絶するための『正当事由』が地主側にある場合
- 建物が著しく老朽化し、危険な場合
- 地主自身に土地を利用すべき差し迫った事情がある場合
- 借地人側に賃料滞納などの契約違反がある場合
立ち退き拒否が難しいケース①:契約更新を拒絶するための『正当事由』が地主側にある場合
借地借家法(民法第26条と民法第28条)では、「正当な事由」があると認められる場合に限り、地主から建物賃貸借契約を終了させることが認められています。
例えば、地主側が自ら居住するために建物を必要としており、なおかつ借地人への生活保障として相当額の立ち退き料を提示した場合は、借地人側による立ち退きの拒否が難しくなる可能性が高くなります。
正当な事由の有無は、特定の事由一つだけで判断されるわけではなく、下記のような複数の要素を総合的に考慮して判断されます。
- 地主および借地人が土地の使用を必要とする事情
- 借地に関するこれまでの経緯
- 土地の利用状況
- 立ち退き料の提供
裁判所は、双方の利害関係を慎重に比較検討し、総合的に判断します。
立ち退き拒否が難しいケース②:建物が著しく老朽化し、危険な場合
建物が著しく老朽化し、倒壊のおそれがあるなど危険な状態にある場合、地主の更新拒絶における正当事由を補強する要素として考慮されることがあります。
これは、借地人や周辺住民の安全を確保するためでもあり、また地主の土地管理責任の観点からも重要です。
ただし、単に古いというだけでなく、実際に危険な状態であることが客観的に証明される必要があり、これが正当事由を補強する一要素として認められます。
立ち退き拒否が難しいケース③:地主自身に土地を利用すべき差し迫った事情がある場合
地主が自らその土地に住むための家を建てたい、あるいは事業のために土地を利用したいという自己使用の必要性が高く、合理的かつ切迫した事情がある場合、正当事由が認められやすくなります。
特に、借地人が別の場所に住居や建物を所有している場合に、この主張が認められやすくなります。
これは、もし仮に借地人が立ち退いても生活基盤を失わないと判断されるためです。
立ち退き拒否が難しいケース④:借地人側に賃料滞納などの契約違反がある場合
地代の未払いが続いている場合や、地主に無断での増改築、契約内容に反した利用があった場合など、借地人側に明らかな契約不履行(債務不履行)がある場合は、地主は正当事由の有無にかかわらず、賃貸借契約を解除できます。
例えば、借地の上に建てている建物は、地主の事前承諾を得ず増改築することはできません。
このような規則違反が借地人側にあると、地主からの契約解除が認められる可能性が非常に高くなります。
定期借地権の場合
なお、普通借地権とは異なり、定期借地権は契約期間の満了をもって契約が終了し、原則として更新が認められていません。
定期借地権契約では、あらかじめ更地にして返還することが契約で決められているため、立ち退きに関する交渉の余地は限られます。
ただし、契約内容によっては建物買取請求権が定められている場合もあるため、契約書をよく確認することが重要です。
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立ち退きを拒否した場合の末路はどうなる?

ケース①:地主に「正当事由」がない場合
契約は更新され、借地権は存続し続けます。借地人はそのまま土地の利用を続けることができます。
地主は裁判を起こしても、正当事由が認められないため、立ち退きを強制することはできません。
ケース②:地主に「正当事由」がある、または補強される場合
地主が裁判を起こし、裁判所が地主側の正当事由を認めた場合、立ち退きが強制される可能性があります。
この場合、裁判所は、正当事由の程度に応じて「立ち退き料」の支払いを命じるケースがほとんどです。
判決確定後も立ち退かない場合は、地主による強制執行(建物の明け渡し)が行われます。
当初は、正当事由がなかった場合でも、裁判を進めるにあたり、地主側が何かしらの「正当事由」を立証してくる可能性があります。
ケース③:借地人側に契約違反がある場合
地代の長期滞納など、借地人側に重大な契約違反(債務不履行)がある場合、「正当事由」と認められ、地主は契約解除を主張できます。
この場合は、立ち退き料の支払いは不要、またはごく低額になることが多く、裁判で強制退去となる可能性が非常に高くなります。
立ち退きに関する「裁判の結果」で多いケース

① 借地人が粘り勝ちして居住継続(最も多い)
地主が裁判を起こしても、裁判所は「正当事由なし」と判断し、借地人の主張が認められます。
地主は立ち退きを強制できず、借地権契約は期間満了と共に自動的に更新されます(法定更新)。
結果的に、地主は立ち退きを断念し、借地人は引き続き土地の利用を継続できます。
② 高額の立退料をもらって退去(よくある)
地主側の正当事由が「弱い~中程度」の場合でも、相当額の立ち退き料を提供することで、裁判所は正当事由を「補強された」と認め、立ち退きを認めることがあります。
多くの場合、地主は訴訟前に和解を持ちかけます。借地人も立ち退き料の額に納得すれば、裁判を避けて合意退去します。
立ち退き料は、単なる引っ越し費用ではなく、借地人が失う「借地権の価値」の相当部分を補償する性格を持ちます。
立退料の相場は、借地権の価格(更地価格の概ね30%~70%程度)、建物の残存価値、移転費用、営業補償(事業用の場合)、そして、新しい生活を始めるための精神的補償などが考慮されます。
数百万円~数千万円となることが一般的ですが、都心の一等地など借地権の経済的価値が高い場合は、数億円に上る事例も存在します。
借地人は、高額の金銭的補償を得て、和解または裁判所の和解勧告等に応じ、自主的に土地を明け渡します。
③ 裁判で退去命令(例外的)
裁判所が地主の主張を全面的に認め、立ち退き(土地の明け渡し)を命じる判決を下すケースです。
ケース①:借地人による重大な契約違反
- 地代の支払いを長期間(一般に3ヶ月以上)怠っている
- 地主の承諾を得ずに借地権を第三者に譲渡した
- 契約に違反して、地主の承諾なく建物を大規模に増改築した
これらは「信頼関係の破壊」とみなされ、地主は借地借家法ではなく民法の債務不履行として契約解除を主張でき、立ち退き料なし、または低額で退去命令が出る可能性が高まります。
ケース②:地主側に明確で圧倒的な必要性があり、かつ立ち退き料が十分な場合
- 地主がその土地に自宅を建てるなど、他に代替手段がない強い自己利用の必要性がある。
- 地主が非常に十分な立ち退き料(借地権の市場価値を上回る額など)を提供している。
判決が確定すれば、借地人は退去する義務が生じます。
それでも退去しない場合は、地主が裁判所に申し立てを行い、強制執行により建物が取り壊され、土地を明け渡すことになります。
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借地からの立ち退きを拒否したい場合の対処法

地主からの立ち退き要求を拒否したい場合の対処法としては、以下の手段が一般的です。
- 借地人にとって、借地が必要な理由を説明する
- 地主側の正当事由の欠如を主張する
- 専門家に相談する
立ち退き拒否の方法①:借地人にとって、借地が必要な理由を説明する
借地人が立ち退きを拒否したい場合、まずは借地を利用し続ける必要性を地主に対して明確に説明しましょう。
借地上にある現在の住居が生活基盤であり、移転が著しく困難であることは、立ち退きを拒否する妥当な根拠になり得ます。
例えば子どもの通学事情、高齢者の介護など、移転が日常生活に与える影響を詳細に示すのが有効です。
また、長年その場所で生活や事業を営んできたことによる地域との結びつきや、移転によって失われる人間関係なども、重要な要素として挙げることができます。
これらの説明は、単なる感情的な主張ではなく、具体的な事実や数字を交えて行うことが重要です。
説得の結果、地主からの理解を得られれば、立ち退きを回避できる可能性があります。
立ち退き拒否の方法②:地主側の正当事由の欠如を主張する
地主側の立ち退き要求に法的な正当事由がない、あるいは不十分であると考えられる場合、それを根拠に立ち退きを拒否することができます。
正当事由に該当するかどうかは、ある程度過去の判例から判断することが可能です。
インターネットで「借地 立ち退き 判例」などのキーワードで検索すれば、類似のケースを探せます。
とはいえ、過去の判例が今回の状況と類似するかを判断するのは難しいかもしれません。
そのため、法律相談窓口や無料相談会を利用して、専門家に過去の事例を調べてもらうのがおすすめです。
これらの情報をもとに、地主側の主張する正当事由が不十分であることを論理的に説明できれば、立ち退き拒否の根拠となります。
立ち退き拒否の方法③:専門家に相談する
立ち退き問題は法律的に複雑な側面があるため、弁護士や不動産の専門家に相談して法的アドバイスを受けることをおすすめします。
専門家は、あなたの状況を客観的に分析し、具体的な対応策を提案してくれます。
また、法律の専門知識を活用することで、地主との交渉をより有利に進められます。
交渉が難航する前の、早い段階から専門家と相談しておくことで、冷静かつスムーズな対応が可能となるでしょう。
ちなみに、センチュリー21中央プロパティーではお客様のご状況を正確に把握し、適切なトラブル対処方法をご提案するために、初回相談から社内弁護士が同席いたします。
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地主による借地からの立ち退き要求は、借地人にとって大きな不安と負担を伴う問題です。
しかし、本記事で解説したように、借地人の権利は借地借家法によって強く保護されており、正当な理由なく立ち退きを強制されることはありません。
地主から立ち退き要求を受けた場合、まずは冷静に通知書の内容を確認し、安易に合意せず適切な対応を取るようにしましょう。
とはいえ、正当事由の判断や立ち退き料の交渉には専門的な知識と経験が必要となるため、借地権のトラブル解決に長けた不動産会社や、弁護士への相談がおすすめです。
立ち退き問題の解決には時間がかかることも多いため、早めの対応と専門家への相談が、円滑な解決への近道となるはずです。
センチュリー21中央プロパティーは、借地権を専門とする不動産仲介会社です。
これまでに延べ4万件を超えるご相談・売却実績があり、借地権に関するノウハウの充実度は他社の追随を許しません。
立ち退き要求や地代・承諾料の交渉など、借地人だけでは不安を伴うことも多い地主とのやりとりも、すべて代行し、トラブルを回避します。
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この記事の監修者
弁護士
エルピス総合法律事務所 代表弁護士/宅地建物取引士
東京大学法学部を卒業後、20年以上にわたり不動産法務の最前線で活躍するスペシャリスト。東京弁護士会に所属し、弁護士資格に加え宅地建物取引士の資格も有することで、法律と不動産実務の両面から深い専門知識と豊富な経験を持つ。
特に借地権における紛争解決においては、業界屈指の実績を誇り、借地権更新料問題、地代増減額請求、借地非訟事件、建物収去土地明渡請求など、複雑な案件を数多く解決に導いてきた。
著書に「事例でわかる 大家さん・不動産屋さんのための改正民法の実務Q&A」がある。メディア出演やセミナー登壇実績も多数。