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地主から一方的に借地権の返還や
明渡しを求められている(賃貸人の変更)|弁護士Q&A

更新日:
作成日:
コンテンツ番号:879

地主から一方的に借地権の返還や
明渡しを求められている(賃貸人の変更)

質問 土地(底地)が売却され、私(借地人)の承諾なく、所有者が個人からとある会社(法人)に変わりました。 そもそも借地人の同意なく賃貸人を変更することは許されるのでしょうか。 変わったとたんに土地の返還や立退きを迫られていますが、何かいい対処法は無いのでしょうか。

地主から一方的に借地権の返還や明渡しを求められている図

土地(底地)の所有者が個人からとある会社(法人)に変わった点

法律的には土地(底地)の売却に伴い、賃貸人の移転があったことになります。賃貸借契約は賃貸人が誰に変わろうとも賃貸人の義務内容に変更はないため、賃借人の承諾は不要とされ、旧賃貸人と新賃貸人との間のみの合意で、賃貸人たる地位を移転することができます。
賃貸不動産の売却は当然にこの賃貸人の地位の移転を生じ、旧賃貸人は契約関係から離脱します。

♦参考判例:最判昭46年4月23日

判旨:「土地の賃貸借契約における賃貸人の地位の譲渡は、賃貸人の義務の移転を伴なうものではあるけれども、賃貸人の義務は賃貸人が何ぴとであるかによつて履行方法が特に異なるわけのものではなく、また、土地所有権の移転があつたときに新所有者にその義務の承継を認めることがむしろ賃借人にとつて有利であるというのを妨げないから、一般の債務の引受の場合と異なり、特段の事情のある場合を除き、新所有者が旧所有者の賃貸人としての権利義務を承継するには、賃借人の承諾を必要とせず、旧所有者と新所有者間の契約をもつてこれをなすことができると解するのが相当である。」

としています。
土地(底地)の所有者が変わったことによって借地権が消滅したり、土地賃貸借契約の内容が変わったりすることはなく、新地主は旧地主の貸主としての地位を継承するに過ぎません。
したがって、借地人の承諾なくして、賃借権の譲渡は可能であり、地主から土地を買い取った会社(法人)が新賃貸人となります。そのため、地代は新賃貸人たる会社(法人)に支払う必要があります。

会社(法人)からの請求に対して

上記のように賃貸人たる地位は新賃貸人たる会社(法人)に移転しました。賃貸人からの立ち退きの請求に対しては応じる必要は一切ありませんのでご安心ください。
しかし、旧賃貸人との間に地代の未払いがある場合は、それを口実に様々な請求をしてくることも考えられるので注意が必要です。

また、賃貸人の地位の移転に伴い、地代も新賃貸人の会社(法人)になってしまいます。そのため、地代を支払う必要はあるのです。
土地ではなく建物の事例ではありますが、以下の判例があります。

♦参考判例:最判昭49年3月19日

判旨:「本件宅地の賃借人としてその賃借地上に登記ある建物を所有する上告人は本件宅地の所有権の得喪につき利害関係を有する第三者であるから、民法一七七条の規定上、被上告人としては上告人に対し本件宅地の所有権の移転につきその登記を経由しなければこれを上告人に対抗することができず、したがつてまた、賃貸人たる地位を主張することができないものと解するのが、相当である」

としています。
土地の場合も同様と解されており、登記を移転していない場合、賃貸人たる地位の主張を賃借人(借地人)に対してできない結果、賃料の請求もできません。
賃借人からすると賃貸人の交代は関知しないところで行われている場合も多く、賃料の二重払いの危険が出てしまう可能性があり、それを防止するために登記という画一的な基準で判断するようにしていると考えられます。

どちらに支払ってよいか不明な場合や新賃貸人が受け取りを拒否する場合

もしどちらに支払うべきか不明な場合や新賃貸人が明渡しの口実を作るために賃料を受け取らないような場合は「供託」をすることで、賃料支払いと同様の効果(賃料を支払った効果)が得られます。

(供託)

民法494条:「債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、弁済をすることができる者(以下この目において「弁済者」という。)は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも、同様とする。」

建物の登記を

借地借家法10条:「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。」

借地上の建物が登記されていれば賃貸人以外の第三者にも自己の借地権を主張することができます。
賃借権を譲り受けた途端立ち退きを迫るような賃貸人は建物が未登記の場合、それを悪用(借地権を勝手に譲渡等)することも考えられますので、建物が未登記の場合は、できる限り、登記をしておくこともお勧めいたします。

この記事の監修者

塩谷 昌則シオタニ マサノリ

弁護士

弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。借地非訟、建物明渡、賃料増額請求など借地権や底地権をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。

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