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保証会社による代位弁済が
賃貸借契約解除に与える影響|底地の売却・相続

更新日:
作成日:
コンテンツ番号:955

保証会社による代位弁済が
賃貸借契約解除に与える影響

質問 AはBに対して土地を貸し、Bはその土地上に建物を建てて住んでいます。
その後BはAに対して地代を支払わなくなってきました。
未払いはもう5年以上になっています。
契約当初、AはBとの借地契約の地代の保証人をたてることを求め、連帯保証人CとのABの借地権設定契約につき保証契約を結んでいました。
そのため、AはCに対して、Bの賃料未払い分の支払いを求めました。
1. Cは「確かに連帯保証人だが、Bはお金はあるはずだ、Bから地代を支払ってもらって下さい」 と主張していますが認められますか。

貸主Aが借主Bが地代未辛いのため保証契約を行っているC(連帯保証人)に地代要求し、Cは『Bはお金を持ってい持っているから!Bにもらって!』と訴えている図。
図1

また、その後Cはしぶしぶ支払いをしました。

2. AはBに対して賃料未払いが5年も続いたとして借地契約の解除を申し入れましたが、Bは賃料は連帯保証人のCが支払っているのだから、解除は受け入れる理由がないと反論しています。

AはBに対して賃料未払いが5年も続いたとして借地契約の解除を申し入れたが、Bは賃料は連帯保証人のCが支払っているので、解除は受け入れる理由がないと反論している図

このような主張は認められるのでしょうか。

詳細解説

1について

Cは自分は保証人なのだから、Bにお金がない場合には支払うのは致し方ないが、Bにお金があるにもかかわらず保証債務を履行するのが納得いかないようです。保証人には検索の抗弁、催告の抗弁等という権利が認められています

(催告の抗弁)

民法452条:「債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。…」

(検索の抗弁)

民法453条:「債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。

とあります。債権者が保証人に対して先に債務の履行を求めてきた場合には、まずは主たる債務者に請求して下さいというのが、催告の抗弁です。

また、主たる債務者に弁済する資力がある(お金がある)ことを証明すれば、主たる債務者から弁済してもらって下さいというのが、検索の抗弁です。

保証人はあくまで、主たる債務者の債務を保証するだけですので、当然のこととも言えます。
しかしながら、これは通常の保証契約のことであって、「連帯」保証人の場合は話が異なってきます。民法には連帯保証人の特則として以下の規定があります。

(連帯保証の場合の特則)

民法454条:「保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。」

とあります。前2条とは催告の抗弁、検索の抗弁のことです。連帯保証人はこの権利を有しないということは、債権者から真っ先に弁済を求められても保証債務の履行をしなければなりません。
また、仮に主たる債務者に金銭的余裕があったとしても、保証債務の履行をする必要があります。そのため、本件ではCは連帯保証人のため、Cの主張は認められず、Aに支払いをする必要があります。

2について

(1)賃料未払いの解除権発生

地主AはBの賃料未払いを理由に解除権の行使を求めていますが、賃貸借契約の場合は、少々の不払いがあったとしても解除権は発生しません。

賃料滞納を理由に賃貸借契約を解除する場合にはよほどの事情がない限り、例えば、1か月分だけ賃料の滞納があったというだけで解除することはできません。通常は少なくとも3か月分以上の賃料滞納がなければ、賃料滞納を理由として契約を解除することはできないでしょう。

というのも居住関係は生活の基盤として非常に重要だからです。
ただ、信頼関係の破壊があるか否かが問題となるので、仮に1か月の滞納であってもその他に信頼関係を破壊すると言えるような事情があれば、解除が認められることはあり得ます。

(2)保証人が地代を支払った行為について

それでは、保証人が地代を支払ったことがどのような影響を与えるのでしょうか。保証会社が代わりに支払った事例ではありますが、参考判例を見てみましょう。

♦参考判例:大阪高等裁判所平成25年11月22日判決

判旨:「…賃貸借保証委託契約に基づく保証会社の支払は代位弁済であって、賃借人による賃料の支払ではないから、賃貸借契約の債務不履行の有無を判断するに当たり、保証会社による代位弁済の事実を考慮することは相当でない。なぜなら、保証会社の保証はあくまでも保証委託契約に基づく保証の履行であって、これにより、賃借人の賃料の不払という事実に消長を来すものではなく、ひいてはこれによる賃貸借契約の解除原因事実の発生という事態を妨げるものではないことは明らかである。」

としています。保証会社による支払いは、債務者(賃借人)による賃料の支払いではなく、代位弁済(債務者の代わりに弁済)で、債務不履行があるかないかの判断には、保証会社の支払いの事実は影響しない、すなわち、賃借人自身が支払っているか否かが重要ということです。

本件では保証会社ではなく保証人ではありますが、同じことが言えそうです。借地人が地代を5年もの間支払っていない以上、解除されても致し方ないと言えます。

しかし、一方で、賃借人が、滞納賃料の代位弁済した保証会社や保証人への弁済を行っているような場合、信頼関係の破壊とは認められない可能性もあると考えられます。
自ら賃料の支払の意思がなく、保証会社や保証人に対しても弁済の意思が認められないような場合には、信頼関係の破壊を認められる可能性があります。

この記事の監修者

塩谷 昌則シオタニ マサノリ

弁護士

弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。借地非訟、建物明渡、賃料増額請求など借地権や底地権をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。

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