借地は更地返還が原則?地主に土地を返す際のルールを解説
目次
地主に土地を返還する際、「更地にして返す」ことが原則的な民法上の義務です。
しかし、必ずしもすべてのケースで更地にして返す必要があるわけではありません。
実際には、契約内容や土地の利用状況、双方の合意によっては、更地にせずに返還することが可能な場合もあります。
本記事では、借地契約終了時に更地にして返すべきかどうか、また、更地返還が免除される条件について詳しく解説します。
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借地の更地返還は義務?
借地権の契約期間が終了し、地主に土地を返還する際、「更地にして返す」ことが原則的な民法上の義務です。
これは、借地人に課せられる「原状回復義務」があるためです。
原状回復義務とは、簡単に言うと「借りたときの状態にして、貸主に物を返す義務」のことを指します。
借地の原状回復義務とは?
借地の原状回復義務では、土地を借りた当初は建物が建っていない更地の状態であったとみなされるため、返還時もその更地の状態に戻すことが求められます。
この義務は、民法第599条にも明記されています。「借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負う。」
つまり、土地の上に建てた建物は、この「附属させた物」に該当するため、借地人がこれを取り除き、更地にする必要があるのです。
契約書がない場合の対応
借地権の契約書がない場合でも、この原状回復義務は民法で定められているルールのため、原則として更地にして地主に返還することになります。
契約書がない場合、借地権の種類(旧法借地権か普通借地権かなど)や契約期間、更新の有無などが不明確となり、トラブルの原因となることがあります。
しかし、契約書がないからといって更地返還義務がなくなるわけではありません。
このような場合は、当事者間の合意形成がより一層重要になりますが、最終的には民法の原則が適用されることを理解しておく必要があります。
契約書がない場合は、更地にして返還すべきかどうか、専門家に確認するのがおすすめです。
建物解体の費用は借地人が負担が原則
更地にするためには、借地上に建てた建物を解体しなければなりません。
この建物解体費用は、基本的に借地人が負担することが原則です。
高額になりがちな解体費用は、借地人にとって大きな負担となることが多く、これがトラブルの原因となるケースも少なくありません。
しかし、すべての借地権で更地での返還が必須というわけではありません。
借地契約の種類や借地権の売却方法によっては、更地にしなくても返還できるケースもあります。
借地を更地にせず返還できる3つのケース

借地を更地にせず返還できる3つのケースは、以下の通りです。
- 「建物買取請求権」を行使する
- 地主との交渉によって合意する
- 第三者に借地権を売却する
①「建物買取請求権」を行使する
建物買取請求権は、旧法借地権や普通借地権で契約している場合に、借地人が地主に対して、建物を取り壊さずに買い取るよう請求できる強力な権利です(借地借家法13条1項)。
建物買取請求権が認められれば、解体費用を負担せずに済むだけでなく、建物売却の代金を受け取れるため、借地人にとって非常に大きなメリットがあります。
ただし、建物買取請求権を行使できるのは、主に以下のような条件を満たす場合です。
- 借地期間が満了していること
- 地主側に正当な理由があり、契約の更新がないこと
- 地主から借地人に対し、契約を更新しない旨が通知されていること
- 借地上に建物が存在すること
②地主との交渉によって合意する
建物買取請求権が適用されない場合でも、地主との交渉によって更地にせずに返還できる可能性があります。
地主は、いつか自分の土地を有効活用したいと考えていることが多いものです。
もし、地主が借地上の建物を買い取ることで、将来的な土地活用が見込めたり、借地権という制約がなくなることにメリットを感じたりすれば、更地での返還にこだわらず、交渉次第では、建物を買い取ってくれることもあります。
また、更地よりも建物が建っている方が土地にかかる固定資産税が安くなることから、建物をそのままにしておいて欲しいという地主も存在します。
この場合、建物解体費用の負担を避けるための交渉や、建物の状態に応じた買取価格の合意形成が重要になります。
地主との関係性を良好に保ちながら交渉を進めることが、スムーズな解決の鍵となります。
③第三者に借地権を売却する
地主との交渉が難しい場合や、より高額での売却を希望する場合は、借地権を第三者に売却する方法も有効です。
借地権を第三者に売却する場合、建物解体の手間や費用を負担する必要がなくなります。
ただし、借地権付き建物の売却には地主の承諾が原則として必要となります。
承諾が得られない場合は、裁判所に借地権譲渡の許可申立てを行うなどの手続きが必要になることもあります。
借地権に精通した不動産会社に相談することで、スムーズかつ有利な条件での売却を目指すことができます。
④建物と底地を同時に売却する(同時売却)
借地人と地主の双方が合意すれば、借地権付き建物と底地(土地の所有権)をセットで第三者に売却することも可能です。これは「同時売却」または「共同売却」と呼ばれます。
同時売却の最大のメリットは、不動産が完全所有権となるため、一般の不動産市場で流通しやすくなり、借地権単体で売却するよりも高額での売却が期待できる点です。
建物解体も不要であり、双方にとってメリットのある解決策となり得ますが、地主と合意形成できる難易度は非常に高い選択肢です。
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定期借地権は原則「更地返還」が義務
注意が必要なのは、定期借地権の場合です。定期借地権は、契約期間満了時に借地権が消滅し、借地人は必ず建物を解体して更地にして土地を返還することが義務付けられています(借地借家法22条)。
これは、上記で挙げた建物買取請求権が適用されないため、例外なく更地での返還が求められます。
借地を更地にして返す流れ

借地を更地にして返還する流れは、以下のステップで進めるのが一般的です。
- 契約内容の確認と地主への意向伝達
- 地主との協議・交渉
- 売却または建物解体の準備
- 土地の返還または建物の引き渡し
1. 契約内容の確認と地主への意向伝達
まず、お手元にある土地賃貸借契約書を徹底的に確認しましょう。
契約書がない場合は、借地権の種類(旧法借地権、普通借地権、定期借地権など)や返還時の条件を地主に相談し、確認することが重要です。
契約期間満了の数ヶ月前、または返還の意思が固まった時点で、地主に借地権を更新せず返還したい旨を連絡しましょう。
2. 地主との協議・交渉
借地の返還は、地主との慎重な交渉が鍵となります。
更地返還が原則ではありますが、建物解体費用や原状回復の範囲、返還時期などについて協議し、合意を形成します。
もし、旧法借地権や普通借地権の場合で、地主が契約更新に応じない場合は、建物買取請求権の行使を検討することも可能です。
この権利を行使できれば、解体費用の負担を避け、建物の売却代金を受け取れる可能性があります。
交渉が難航しそうな場合は、借地権に強い不動産会社に相談するのがおすすめです。
第三者への借地権売却など、借地人にとって有利な選択肢を提案してもらえたり、地主への交渉を代行してもらえる可能性もあります。
3. 売却または建物解体の準備
地主との合意が得られた返還条件に基づき、準備を進めます。
更地にする場合
建物解体業者を選定し、手配します。複数の業者から見積もりを取り、比較検討しましょう。
建物解体費用は原則借地人負担ですが、解体費用が払えない場合は、地主に一部または全部の負担を交渉するか、建物を解体せずに借地権を処分する方法(後述)を探る必要があります。
ただし、原状回復義務が法律で定められている以上、地主が解体費用を負担してくれるケースは非常に稀で、交渉は難航しやすいのが実情です。
まずは借地権の専門家に状況を説明し、最善な方法を提案してもらうのが良いでしょう。
借地権を売却する場合
地主や第三者に借地権を売却する際は、売買契約の条件を細かく決めていきます。
借地権の売却については、売却価格や契約条件など、後々のトラブルを防ぐためにも、借地権に精通した不動産仲介業者に売買をサポートしてもらうのが一般的です。
4. 土地の返還または建物の引き渡し
建物解体工事が完了したら、「建物滅失登記」を1ヶ月以内に法務局で行います。
スケジュールに注意し、解体業者からの建物滅失証明書などを忘れずに受け取りましょう。
借地権を地主または第三者に売却する場合も、建物の名義変更手続きが必要です。
これらの登記手続きは、弁護士や司法書士などの専門家へ依頼することをおすすめします。
最終的に、更地になった土地を地主に引き渡し、借地契約が完全に終了したことを確認しましょう。
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借地権の更地返還で揉めやすい3つのポイント

借地権を更地にして返還する際に、地主と揉めやすいポイントとして、以下のようなものがあります。
- 「建物解体費用」の負担割合
- 「建物買取請求権」の行使と買取価格
- 「借地契約書」がない場合の返還条件
「建物解体費用」の負担割合
原状回復義務により、原則として借地人が建物解体費用を負担することになります。
しかし、解体費用は高額になることが多いため、「解体費用が払えない」という借地人と地主の間で負担を巡るトラブルが発生しやすくなります。
借地人が地主に解体費用の一部負担を求めても、民法上の義務を盾に拒否されることがほとんどです。
地主が負担に応じるのは、建物買取請求権を行使されるよりは解体費用を負担した方が地主にとってメリットがある場合など、非常に限定的なケースに限られます。
「建物買取請求権」の行使と買取価格
建物買取請求権は借地人の強力な権利ですが、行使できる条件(借地期間満了、地主の更新拒絶に正当事由があるなど)の解釈を巡ってトラブルになることがあります。
特に、地主が正当事由がないと主張するケースや、借地人側に債務不履行(地代滞納、無断増改築など)がある場合は、権利行使の有効性が争われることがあります(判例では、債務不履行による契約解除の場合、建物買取請求権を否定しています)。
また、建物買取請求権を行使した場合、地主は建物を「時価」で買い取ることになります。
この「時価」の評価を巡って、借地人と地主の間で意見が対立し、トラブルになることが非常に多いです。
建物の老朽化の程度や、借地権の評価も絡むため、専門家による鑑定が必要となることもあります。
借地契約書がない場合のトラブル
借地契約書(土地の賃貸借契約書)がない場合、借地権の種類(旧法借地権か普通借地権か、定期借地権ではないかなど)、契約期間、更新の有無、増改築に関する規定、返還時の条件など、基本的な契約内容が不明確になり、あらゆる段階でトラブルの火種となります。
契約書がないことは、交渉や訴訟において借地人にとって不利な状況を作り出す可能性があります。
借地権の存在や内容を証明するために、地代の領収書や固定資産税の納税通知書など、他の証拠をかき集める必要が出てきます。
借地権に詳しい弁護士や不動産会社へ早期に相談することをおすすめします。
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【無料相談】借地の土地返還に関する相談先

借地の相続や更新、空き家問題、建物の老朽化、そして土地返還に関する悩みは、専門知識が必要で複雑になりがちです。
「どう進めればいいかわからない」「地主との話し合いが不安」「解体費や返還条件が心配」このようなお悩みを一人で抱える必要はありません。
当社センチュリー21中央プロパティーでは、借地トラブルや土地返還に精通した専門スタッフが、無料でご相談をお受けしています。
- 借地の返還条件の確認
- 地主との交渉方法
- 建物解体の進め方
- 相続後の最適な活用方法
- 売却・等価交換の可否
- 空き家・特定空き家のリスク対策
お客様一人ひとりの状況を丁寧にヒアリングし、最適な解決策をご提案します。
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よくあるご質問
地主が建物を買い取ってくれない場合、どうしたらよいですか?
地主が建物の買取を拒否する場合は、第三者への売却も検討してみると良いでしょう。
中央プロパティーでは、地主への交渉を代行したり、第三者への売却をサポートしてきた実績が豊富ですので、一度ご相談ください。
借地を返還するとき、更地にする必要はありますか?
契約内容によります。定期借地権では必ず更地返還が求められますが、旧法や普通借地権では建物買取請求権を行使できる場合があり、更地にせずに返還できることもあります。
まずは契約書を確認しましょう。
更地にするための解体費用は誰が負担しますか?
一般的には借地人が解体費用を負担します。
ただし、建物買取請求権を行使する場合、解体費用はかからず、建物の代金を受け取れる可能性があります。
借地を更地にせずに返還する方法はありますか?
建物買取請求権を行使するか、借地権付き建物を地主や第三者に売却する方法があります。
更地返還の際に注意すべきポイントは?
解体工事の進行や近隣への配慮が必要です。特に騒音や振動、廃材の処理についてはトラブルにならないよう、解体業者にしっかり依頼しましょう。
また、返還条件を事前に地主と明確にしておくことが重要です。
更地返還をしないとどうなりますか?
更地返還義務があるのに対応しない場合、契約違反とみなされ、法的なトラブルに発展する可能性があります。
契約書に基づいて地主と適切な交渉を行い、ルールを守ることが大切です。
この記事の監修者
社内弁護士
当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。