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借地の契約書がない!相続時の対応や立ち退きを迫られたらどうするべき?|借地権を相続した方

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借地の契約書がない!相続時の対応や立ち退きを迫られたらどうするべき?

借地の契約書がない!相続時の対応や立ち退きを迫られたらどうするべき?

「借地権を相続したけど、契約書が見つからない」

借地権を相続しても、契約書がないケースは少なくありません。借地の契約期間は20年や30年以上と長く、契約を交わした時期が何十年も前になるためです。

しかし、借地権が何なのかよくわからず、契約内容もわからない状況では、相続しても対応に困ってしまうでしょう。実際に、契約書がない状態で地主から立ち退きを要求され困っている相続人もいます。

そこでこの記事では、借地の契約書とはどのようなもので、いつ必要になるのか、ない場合にはどうすればよいかなど、借地の契約書がない場合の対応について解説します。

契約書がないために地主との交渉で不利になることがないよう、ぜひ本記事を参考にしてください。

1.借地の契約書とは

借地の契約書が見つからない場合の対応方法を理解するために、まずは借地の契約書とは何かを理解しておきましょう。

1-1 借地の契約書とはどんなもの?

借地の契約書とは、土地賃貸借契約書などと呼ばれる、借地権の契約内容が記載された書面です。

借地の契約書は誰が作成しても問題ありませんが、一般的には土地を貸す貸主(地主)が作成します。なお、土地を借りる借主(借地人)が作成する場合もあれば、契約を仲介する不動産会社が地主と借地人の間に入って作成する場合もあります。

借地の契約書(土地賃貸借契約書)の内容は、一般的に図1のとおりです。

図1:土地賃貸借契約書に記載されている内容

図1:土地賃貸借契約書に記載されている内容

特に契約期間が終了するときは、地主から更新を拒絶されたり、更新料を請求されたりするため、契約期間についてはよく確認しておく必要があります。

また、賃料(地代)の支払方法は口座振込ではなく地主の家に持参して支払うように定められている場合もあるため、注意して確認しなければなりません。

土地賃貸借契約書については、以下の記事も参考にしてください。

1-2 借地の契約書がないケース

借地の契約期間は20年や30年以上と長いため、契約書がどこに保管されているのかわからなかったり、そもそも契約書を残していなかったりなど、契約書がないケースもあります。

実際、現在において設定されている借地権は、契約締結日が古い旧法借地権であることがほとんどです。詳細は後述しますが、旧法借地権で契約書がなくても、契約は有効であることに注意しましょう。

図2は、借地権の歴史を簡単に表した図です。

図2:借地権の歴史

図2:借地権の歴史

1-3 借地の契約書がなくても契約は有効

借地の契約が口約束でしかされておらず、契約書がなかったとしても、契約自体は成立しています(民法第522条第2項)。そのため借地権は無効ではなく、借地権の相続人は引き続き借地に建っている建物を使用できるとともに、地代を支払うなど借地権の契約内容を守らなければなりません。

もっとも、地代を支払わないなど債務不履行がある場合には、地主から契約を解除されることもあります。この場合は借地権が消滅となり、借地人は建物を解体して更地で地主に土地を返さなければなりません。

2.借地の契約書が必要なシーン

借地の契約書が必要なシーンは、主に次のとおりです。

  • 借地権を相続したとき

  • 地主から契約の条件変更を要求されたとき

  • 借地権を売却したいとき

それぞれのシーンについて、なぜ契約書が必要で、本来はどのように契約書を確認すべきかを解説します。

2-1 借地権を相続したとき

借地権の実家を相続したとき、契約内容を確認したいと考える人は多いでしょう。実家が借地権の場合、地主とのやり取りは、親に任せきりだったというケースがほとんどです。しかし、借地権契約を継続する場合は、これまで同様に相続人が地代を支払う義務が生じます。

支払方法が持参払いなのか銀行振込なのかを契約書で確認しておきましょう。

また、借地権付きの実家を活用する予定がない場合は、第三者への売却や転貸を考えることもあります。第三者への売却や転貸についても、どのような契約内容になっているのか相続人は必ず確認するようにしましょう。

賃借人の相続をきっかけに、地主とのトラブルに発展するケースも少なくありません。相続時には借地権の契約内容を確認し、後々の地主とのトラブルを未然に防ぎましょう。

2-2 地主から契約の条件変更を要求されたとき

地主から、次のように契約条件の変更などを要求されることがあります。

  • 名義変更料や譲渡承諾料を要求された

  • 立ち退きを要求された

  • 地代の値上げを要求された

借地権を相続した相続人にとって負担が大きい要求であるため、契約はどうなっていたのか気になり、契約書を確認したいと考えるケースが多いでしょう。

2-3 借地権を売却したいとき

借地権の売却や転貸をしたいときも、契約書をもとに契約内容を確認したいと考えるでしょう。

相続した借地権付きの実家に誰も住まないため、売却や転貸をしようと検討する相続人も少なくありません。原則として地主の承諾がなければ借地権の売却や転貸はできません(民法第612条)。しかし、例外として契約書に承諾不要という文言があれば、承諾を得ずに借地権の売却や転貸が可能です。

また、稀に借地権が土地の賃借権ではなく地上権の場合もあり、地上権の場合には地主の承諾なく売却や転貸ができます。契約書がない場合も、土地の登記事項を確認して地上権の登記があれば、その借地権が地上権であることがわかります。

なお、建物自体は借地人の名義であるため、特に契約で制限されていなければ、地主の承諾なく借家として建物のみの賃貸が可能です。ただし、借地人(契約者)と建物所有者の名義は原則同一でなければなりません。

3.借地の契約書がない場合の対応

借地の契約書がない場合の対応について、前述した契約書が必要なシーンごとに解説します。

3-1 借地権を相続したとき

借地権を相続したときは、必ず地主に報告しましょう。その際に、地主に直接、地代や契約期間などの契約内容について確認しましょう。相続により借地権が移転しますが、相続の場合には地主の承諾は不要です。

また、改めて借地の契約書(土地賃貸借契約書)を作成する義務はありません。ただし、契約内容を忘れてしまわないように、書面などに残しておくのがおすすめです。

借地権の登記状態を確認するためには、法務局に対して不動産の登記事項証明書の交付請求をします。オンラインで交付請求し、自宅で受け取ることも可能です。

借地権を相続したときに必要な対応について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

3-2 地主から条件変更を要求されたとき

地主から条件変更を要求されたとき、契約書がなければどのような条件であったのかわからず、トラブルになるケースが少なくありません。

借地権を相続した相続人としては、手元に契約書がなく自分が契約したわけでもないのに、契約の内容を把握することは困難でしょう。

このような場合は、基本的に地主との話し合いで解決していく必要があります。しかし、借地権は契約の更新などに関して法律の定めを適用する部分があるため、適用される法律も把握しなければなりません。

現在の借地権は、現在の法律(新法)が平成4年(1992年)8月1日に施行されるよりも前に設定されているものがほとんどです。平成4年7月31日以前に設定された借地権を「旧法借地権」、平成4年8月1日以後に設定された借地権を「新法借地権」といいます。

地主との話し合いが必要になったら、早めに弁護士など専門家に相談するのがおすすめです。ただし、すべての弁護士が地主との交渉経験があり借地借家法に強いというわけではないため、借地権トラブルに強い弁護士に依頼することが重要です。

借地権に強い弁護士の探し方などを知りたい方は、ぜひ以下の記事を参考にしてください。

3-3 借地権を売却したいとき

借地権を売却したいとき、土地賃貸借契約書がなくても、借地権の売却は可能です。

土地賃貸借契約書がなくても借地権の売却が可能なのは、前提として地代を支払っていたこと、建物が借地人名義で登記されていることを証明でき、借地権の契約が成立していたと明らかにできる場合です。

地代を支払っていたことは、領収書や振込の履歴で証明できます。建物が借地人名義で登記されていることは、法務局に登記事項証明書の交付を請求し、登記事項証明書で確認しましょう。

具体的には、建物の登記事項証明書の権利部(甲区)のうち、「権利者その他の事項」に所有者として借地人の氏名が記載されていることを確認します。

また、土地の登記事項証明書についても、同様の部分に所有者として地主の氏名が記載されていることを確認しましょう。

借地権の契約書がなくても借地権を売却したいとき、確認すべき内容をまとめたものが図3です。

図3:契約書がない場合

図3:契約書がない場合

なお、相続登記をしていない場合は、建物の所有者が亡くなった親名義のままになっていることがあります。この場合は、借地権について自分が土地を借りていること、自分の建物であることなどを第三者に主張(対抗)できませんので、すぐに相続登記を完了しましょう。

まとめ

借地権の契約書とは、地主から土地を借りて建物を所有するための権利(借地権)について、契約期間や地代、支払方法、禁止事項などが記載された書面です。

借地権の契約期間は20年や30年以上と長く、契約を交わした時期が何十年も前になるため、契約書が見つからない場合や、そもそも契約書が作成されていないケースも少なくありません。

しかし、契約書がなくても借地権の契約自体は有効に成立しており、相続人は地主に地代を支払う必要があります。契約書がない場合は、相続を地主に報告するときに地主に直接確認しましょう。

もし地主から条件変更を要求されたときなどは、法律を把握しながら地主と話し合いで解決しなければなりません。

借地権を売却するときも基本的に締結済みの土地賃貸借契約書が必要ですが、地代の支払いと建物の登記を証明できれば、契約書がなくても借地権を売却できます。

地主から明渡しや契約変更などを要求された場合や、借地権を売却したい場合などは、ぜひ借地権の取扱実績が豊富なCENTURY21中央プロパティーにご相談ください。

この記事の監修者

塩谷 昌則シオタニ マサノリ

弁護士

弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。借地非訟、建物明渡、賃料増額請求など借地権や底地権をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。

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