借地権の相続における相当の地代とは?
目次
借地権付きの実家を相続するための準備をしているときなど、相続後の地代を調べる方も多いと思います。
そんなタイミングで、「相当の地代」という耳慣れない言葉に行き当たったことはありませんか?
これは一般的な借地契約とは異なり、相続税評価や土地の権利関係が大きく変わる、極めて特殊な契約形態です。
本記事では、借地権における相当の地代の仕組みについて、通常の地代との違いや税金対策としての側面について解説します。
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借地権における「相当の地代」と「通常の地代」
「相当の地代」と世間一般で言われる地代(これを「通常の地代」という)では、地代の算出方法や、前提となる権利関係が大きく異なります。
借地権における相当の地代と通常の地代について、それぞれの定義や金額の目安を確認していきましょう。
- 相当の地代とは
- 通常の地代とは
相当の地代とは
相当の地代とは、借地契約を交わす際に借地人が地主に支払う「権利金」という一時金の支払いがなかった場合に設定される地代のことです。
権利金は、「借地権=土地を安く借りる権利設定の対価」という意味を持つ一時金であるため、これを支払うことで以降の地代が安くなります(これが後述の「通常の地代」です)。
ところが、相当の地代はその権利金を支払っていないため地代が安くならず、以下の通り「更地価格の年間約6%」という非常に高額な金額となるのです。
- 相当の地代の計算式:更地価格※ × 6%(年額)
※土地の上に建物などが建っていないと仮定した状態の純粋な土地の市場価格 - 例:更地価格5,000万円の地代:5,000万円 × 6%=年間300万円(月額25万円)
なお、一般的な借地契約が相当の地代になることはほぼゼロと言ってもよく、相当の地代は主に親族間の税金対策に利用されるケースが大半です。
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通常の地代とは
通常の地代とは、権利金を支払った場合に設定される地代のことで、ほとんどの借地契約に設定される地代のことです。
こちらは極めて一般的な地代であり、「借地権付きの実家を相続した」といった場合はほぼすべてがこのケースと考えて問題ありません。
通常の地代は最初の契約時に権利金を支払っていることから、「それ以降は安く土地を借りる」という前提のもと、相当の地代よりも安価な金額になります。
金額の目安を算出する計算式は以下の通りです。
- 通常の地代の計算式 = 更地価格 × ( 1 - 借地権割合 )× 6%(年額)
※国税庁が定めた「土地の更地価格のうち借地権が占める価値の割合」のこと - 例:更地価格5,000万円・借地権割合60%の地代:5,000万円 × ( 1 - 0.6)× 6%=年間120万円(月額10万円)
上記の通り、通常の地代は相当の地代に比べて「借地権割合の分だけ安くなる」ことがわかります。
例では借地権割合60%で計算しましたが、実際も住宅地の借地権割合は概ね60%〜70%と定められていることが多いため、通常の地代は相当の地代より60%~70%程度安くなることが一般的です。
相当の地代は贈与税などの認定課税を回避する手段
親族間の土地の貸し借りにおいて、あえて金額の高い相当の地代を設定する目的の1つに、贈与税等の課税リスクの回避が挙げられます。
先述の通り、一般的な借地契約では権利金の支払いがあるのが普通なのですが、権利金は「更地価格× 借地権割合」が相場となるため、非常に高額になりがちです。
例えば、更地価格が5,000万円・借地権割合60%の場合、権利金は3,000万円ものまとまったお金が必要になります。
そのため、親族間(親の土地に子供が家を建てる場合など)や同族法人の土地の貸し借りにおいては、「身内だから」という理由で権利金のやり取りを省略することがあるのです。
しかし、権利金なしで借地権を設定すると、税務署から「権利金相当額の贈与があった」とみなされ、借地人に多額の贈与税等が課されることがあります(これを「認定課税」という)。
そうした場合において、相当の地代の「権利金を払わない代わりに土地の利用料(地代)を高く払ってバランスを取る」という仕組みがあれば、認定課税を避けることができるのです。
なお、通常の地代の場合は最初の契約時に権利金を支払うため、贈与税等の課税リスクはありません。
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現在は「無償返還の届出」で認定課税を回避するのが主流
親族間の土地の貸し借りでは、相当の地代の支払いのほか、「借地権の無償返還に関する届出」も認定課税を回避するための有効な手段となります。
これは、「将来地主に土地を無償で返す」と約束し、その旨を書面にして税務署へ届け出る手続きのことです。
本来、借地人には「立ち退き料」を請求する権利など、強い財産権が発生します。
しかし、あらかじめ「立ち退き料などの対価を求めずに無償で返す」と宣言しておけば、「借地権という高額な財産価値は借地人に移転していない」ことになり、贈与には当たらないとみなされるのです。
現在実務の現場では、資金負担の重い相当の地代の支払いよりも、この届出を出して「通常の地代(安い地代)」にする方法が圧倒的に主流となっています。
ただし、この届出が適用できるのは「借地人か地主のどちらか(または両方)が法人である場合」に限られます。
父と子など個人同士の貸し借りにはこの制度は使えないため、その点は十分に留意しましょう。
相当の地代は相続税対策としても機能する
相当の地代を支払っている借地権が、相続税対策として機能する理由について、次の2つの視点から解説していきます。。
- 借地権の評価:価額は「0円」となり相続税がかからない
- 土地(底地)の評価:「貸宅地」として扱われ20%減額される
借地人側の相続税評価:価額は「0円」となり相続税がかからない
相当の地代の非常に大きなメリットは、借主が持っている借地権の相続税の目安となる「評価額」がゼロになることです。
通常の地代であれば、借地権は更地価格の60〜70%もの価値を持つ高額な財産であり、多額の相続税がかかる原因となります。
しかし、相当の地代を支払っている場合は最初の契約時に権利金の支払いが行われておらず、先述の通り「土地を安く借りる利益」が存在しません。そのため、権利としての価値はゼロとみなされるのです。
したがって、相当の地代を支払っている場合、借地人側に相続税は課されません。
地主側の相続税評価:「貸宅地」として扱われ20%減額される
相当の地代を受け取って貸している土地は、自分が自由に使えない「貸宅地」として扱われるため、自用地(更地)としての評価額から一律で20%減額(80%評価)することが認められています。
通常、借地権が設定されている土地は、自用地(更地)としての評価額から借地権割合(60〜70%程度)を差し引いて評価します。
しかし、相当の地代では借地権の価値がないとみなされるため、減額の幅は20%にとどまります。
とはいえ、何もしなければ100%で評価される更地が、相当の地代により80%評価まで下がる点は見逃せないメリットです。
特に地価が高い都心部の土地などでは、この20%の差が数百万円単位の節税効果を生むケースも珍しくありません。
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まとめ
「相当の地代」は、主に親族間の土地の貸し借りに用いられる契約形態であり、年間で更地価格の6%と高額な価格になる珍しい種類の地代です。
一般的な住宅の借地権に設定される通常の地代よりも遥かに高いものの、節税という面では以下のような大きなメリットも存在します。
- 贈与税などの認定課税を回避できる
- 借地人側に相続税評価がゼロになり、地主側も20%減額される
今回は、こうした特徴を持つ相当の地代の借地権についてご紹介してきましたが、今後借地権を手放したいとお考えの方は、ぜひ当社にご相談ください。
センチュリー21中央プロパティーは、借地権を専門とする不動産仲介会社です。
複雑な権利関係の整理や、相当の地代に関する地主との交渉、売却活動まで、借地権に精通したスタッフと弁護士がサポートいたします。
相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
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この記事の監修者
代表取締役 /
宅地建物取引士
CENTURY21 中央プロパティー 代表取締役/宅地建物取引士
都内金融機関、不動産会社での経験を経て、2011年に株式会社中央プロパティーを設立。長年にわたり不動産業界の最前線で活躍するプロフェッショナル。
借地権の売買に精通しており、これまでに1,000件以上の借地権取引や関連する不動産トラブル解決をサポート。底地や借地権付き建物の売却、名義変更料や更新料の交渉など、複雑な借地権問題に従事。
著書に「地主と借地人のための借地権トラブル入門書」など多数の書籍を出版。メディア出演やセミナー登壇実績も豊富で、難解な相続不動産問題も「わかりやすい」と説明力に定評がある。