地代滞納で契約解除はできる?借地権に強い弁護士が解説
地代滞納で契約解除はできる?借地権に強い弁護士が解説

目次
- 地代の滞納が発生した際に地主がすべきこと
- 督促の途中で借地人から連絡が来たら?
- 法的措置以外で地代の滞納問題を解消する方法
- 地代滞納に関するよくあるご質問
- Q1.地代を滞納された場合、何年で時効になりますか?
- Q2.地代を滞納している借地人を立ち退かせるにはどうすればよいですか?
- Q3.借地契約に無催告解除の条項があれば、すぐに契約を解除できますか?
- Q4.地代滞納中に借地人が亡くなった場合、相続人に請求できますか?
- Q5.借地人である相続人が地代の滞納分を支払わない場合、どのように対応すれば良いですか?
- Q6.借地人が地代の滞納分について時効を主張した場合、反論できますか?
- Q7.滞納地代の支払いを求める内容証明郵便の書き方が分かりません。何を記載すべきですか?
- Q8.地代滞納が続く借地人に立ち退きを求める際、準備すべき書類は何ですか?
- Q9.長期間滞納が続く借地人に無催告で契約解除を通知できますか?
- Q10.地代滞納の借地人に内容証明郵便を送ったのに支払いがない場合、次に取るべき行動は?
- 借地権の地代滞納は専門家に相談しましょう
地主が所有する土地を、建物を建てる目的で第三者に借地権として貸し出す場合、相応の地代を受け取るのが通例です。
しかし、借地人からの支払いが滞りトラブルに発展することもあります。
地主にとっては一つの収入源が途絶えてしまうことになるため、地代の滞納問題は深刻な悩みの種となります。
地代を滞納する要因はいくつか考えられます。
例えば、借地人が単純に支払いを忘れてしまった場合や、借地人が亡くなり相続が発生した場合、高齢化や病気が原因で収入が減り地代の支払いが困難になったケースなどです。
今回は、地主を悩ませる地代の滞納問題について解説します。
地代の滞納が発覚した際の対処法や、具体的な解決方法について詳しくまとめました。

地代の滞納が発生した際に地主がすべきこと
地代を滞納された場合、地主は以下の順番で借地人に対応を進めるのが有効です。
- 地代支払いの督促を行う
- 借地契約の解除を通知する
- 建物収去土地明渡請求訴訟を申立てる
地代の滞納が発生した際にすべきこと①:地代支払いの督促を行う
地代の滞納が発覚した場合、まず地主側から支払いの督促をします。
借地人側が地代の未払いに気づいていても、自発的に支払いを行うとは限らないためです。
督促をする際は、必ず配達証明付きの内容証明郵便を利用して督促状を送付しましょう。
配達証明付きの内容証明郵便を使用する理由は、「いつ、どのような内容の文書を、誰から誰宛に差し出されたか」を郵便局が証明してくれるため、配達した事実や書面の内容が記録として残り、後の法的措置を行う際の重要な証拠となるからです。
通常の郵便ではこれらの記録が残らないため、借地人側が「督促を受けていない」と主張する可能性があります。
その主張が認められると、後述する訴訟に発展したとき、地主側が不利になることがあります。
こうした事態を避けるためにも、督促には配達証明付きの内容証明郵便を使用しましょう。
また、督促状には滞納金額、滞納している期間、支払い期限を明確に記載し、支払いがない場合の法的措置を含む対応についても言及しておくことが望ましいです。
借地人に対して問題の深刻さを伝えるとともに、法的手続きに移行する可能性を示唆することができます。
なお、督促状の作成や送付についてご不安な場合は、弁護士にご相談いただくこともご検討ください。
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地代の滞納が発生した際にすべきこと②:借地契約の解除を通知する
督促を行っても地代の支払いが滞ったままの場合、次のステップとして、相当の期間を定めて催告した上で、なお支払いがなければ契約解除通知を借地人に送付します。
借地借家法では借地人の保護が重視される傾向にあるため、事前の通知なしに一方的に契約解除を行おうとすると、借地人の権利を不当に侵害していると解釈される可能性があり、解除が無効と判断されるリスクがあるため注意が必要です。
契約解除通知を送付する主な目的は、「地代支払いの最終的な機会を与えたにもかかわらず、借地人が支払いに応じなかった」という事実を明確に残すことです。
この通知を送ることで、後に法的措置を取る際の正当性を確保できます。
通知には、解除の理由(地代滞納の事実、催告した日付)、解除の効力発生日、土地の明け渡し期限などを明記します。
契約解除通知を送る際は、必ずしも直ちに裁判に持ち込む必要はありません。
この段階で借地人との話し合いの機会を設けることも検討しましょう。
場合によっては、地代の見直しや支払い計画の再協議など、双方にとって現実的な解決策が見つかる可能性もあります。
ただし、相手方が話し合いに応じない、あるいは不誠実な対応が続く場合は、次のステップに進む必要があります。
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地代の滞納が発生した際にすべきこと③:建物収去土地明渡請求訴訟を申立てる
何度も借地人に連絡したにも関わらず、地代の滞納問題が解消されない場合、最終手段として借地人を被告とする建物収去土地明渡請求訴訟を申立てることになります。
これは、契約解除の通知が無視されたとき、あるいは話し合いによる解決が見込めないときに、裁判所に訴訟を提起して解決を図る方法です。
建物収去土地明渡請求訴訟では、借地人に対して土地上の建物を撤去し、土地を明け渡すよう請求します。
裁判所が双方の主張を審理し、証拠に基づいてどちらが正当かを判断します。
地主の主張が認められれば、借地権の契約は解除され、借地の返還が命じられます。
ただし、この手続きは複雑で専門的な知識が必要となるため、通常は代理人弁護士に依頼して申立て手続きを進めるのが一般的です。
弁護士費用等の経済的負担も考慮に入れる必要がありますが、地代滞納問題の解決につながる可能性が高いでしょう。
ちなみにですが、地代の滞納には消滅時効が存在します。
地代請求権は、原則として、各支払期日から5年間行使しないと時効によって消滅します。
地代滞納をこの期間放置していると、請求する権利を放棄したとみなされ、地代を回収できなくなるので注意しましょう。
時効の進行を止める(時効の完成猶予または更新)ためには、支払いの催告や訴訟提起などの法的手続きが必要です。
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督促の途中で借地人から連絡が来たら?
契約解除の通知を送った後などに借地人から連絡が来た場合、まずは相手方との交渉で解決を図ります。
交渉の際は、地代を滞納した背景や、今後の支払い計画などについて詳しく話し合いましょう。
借地人の経済状況や事情を把握することで、より適切な解決策が見つかる可能性があります。
例えば、一時的な経済的理由が原因であれば、分割払いの提案や支払い期限の延長などの柔軟な対応を検討することもできるでしょう。
また、状況によっては地代の見直しなど、法的措置以外の解決方法も考えられます。
特に長期にわたる借地権の場合、社会の経済状況の変化により、当初の契約条件が現状に合わなくなっている可能性もあります。
このような場合、双方にとって納得できる新たな条件を模索することが重要です。
話し合いの結果は、必ず合意書のような形で書面に残しておきましょう。
これは、後で「言った・言っていない」といった揉め事に発展するのを防ぐためです。
書面には、合意した支払い計画や条件変更の詳細、今後の対応などを明確に記載し、両者が署名・押印することで法的な効力を持たせることができます。
可能であれば、公正証書として作成することも検討に値します。
このような対話と合意形成のプロセスを経ることで、相手方との無用な紛争を避け、地代の滞納問題を円滑に解決できる可能性が高まります。
ただし、話し合いが難航する場合や、借地人の誠意が感じられなかったときは、ためらわずに専門家のアドバイスを得ながら、法的措置の実行を検討する必要があるでしょう。

法的措置以外で地代の滞納問題を解消する方法
地代を滞納された場合、法的措置以外で地代の滞納問題を解消する方法は、主に以下の通りです。
- 借地権(借地契約)の合意解約
- 借地人への借地権売却の提案
これらの方法は、地主と借地人の双方にとって、Win-Winの結果をもたらす可能性があります。
【法的措置以外】地代滞納問題の解消方法①:借地権(借地契約)の合意解約
借地権の合意解約とは、地主と借地人が借地契約を解除することに双方が合意して、借地権の存続を終了させる手続きです。
これは、当事者同士が合意して契約を解消する方法であり、法的措置を避けつつ問題を解決できる効果的な選択肢の1つです。
なお、合意解約は地主と借地人の双方が合意してはじめて実施できるようになります。
そのため、双方の利害が一致した場合にのみ有効な解決策です。
例えば、借地人が高齢で借地契約の維持が困難になっている場合や、地主が土地の活用方法を変更したいときなどは、合意解約を選択することがあります。
借地人にとっても、契約違反による強制的な解除や訴訟を避けられるメリットがあります。
ただし、地主から合意解約を一方的強要すると、後に裁判に発展した際に不利になることもあるので注意が必要です。
借地人の権利を尊重しつつ、丁寧な交渉を心がけることが重要です。
また、解約に伴う立ち退き料や建物の買い取りなど、金銭的な調整が必要になる場合もあります。
これらの条件についても、双方納得のいくまで話し合うことが肝要です。
合意解約を進める際に注意すべき点は以下の通りです。
- 借地人の意向を十分に確認する
- 解約条件(立ち退き料、建物の取り扱いなど)を明確にする
- 合意内容を書面で残す
- なるべく専門家(弁護士や不動産会社の担当者)のアドバイスを受ける
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【法的措置以外】地代滞納問題の解消方法②:借地人への借地権売却の提案
借地人が失業や病気で収入が減り、地代を払えない状況にある場合、その借地人に借地権の売却を提案するのも一つの方法です。
地主側も、地代が入らないと生活に影響が出る可能性があります。
しかし、滞納分の一括請求や契約解除を求めると、借地人が精神的な負担を感じてしまい、音信不通やトラブルの原因になりかねません。
その結果、問題が長期化し、地主にとっても大きな負担になってしまいます。
借地人への借地権売却の提案にはメリットが多い
借地人に対する借地権売却の提案には、以下のようなメリットがあります。
- 借地人は借地権を売却することで、自身の滞納問題を解消できる
- 地主は譲渡承諾料を得られ、新しい借地人を確保できる可能性がある
- 双方にとってトラブル回避につながる
また、地主が借地権を買い取るという選択肢もありますので、状況に応じて検討してみましょう。
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地代滞納に関するよくあるご質問
ここでは、地代滞納に関するよくある質問と、その回答をご紹介します。
Q1.地代を滞納された場合、何年で時効になりますか?
A.地代債権の消滅時効は、原則として各支払期日から5年です。
ただし、時効の完成を猶予したり、更新したりする(民法改正前の「中断」に相当)ために、内容証明郵便で請求を行うなど適切な対応を取ることが重要です。
Q2.地代を滞納している借地人を立ち退かせるにはどうすればよいですか?
A.地代滞納は極めて重要な契約違反(債務不履行)です。
そのため、債務不履行による契約解除を法的手続きに則って確定的に行うのが良いでしょう。
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Q3.借地契約に無催告解除の条項があれば、すぐに契約を解除できますか?
A.無催告解除は、おすすめしません。
仮に契約書に無催告解除条項があっても、裁判所は借地人の保護を優先する傾向があります。
実際には、借地人に対して催告を行ったうえで裁判などの手続きを踏む必要が生じることが一般的です。
Q4.地代滞納中に借地人が亡くなった場合、相続人に請求できますか?
A.借地権は相続の対象となるため、その相続人に地代を請求することができます。
相続人が不明な場合は戸籍を調査し、特定した上で請求手続きを進めます。
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Q5.借地人である相続人が地代の滞納分を支払わない場合、どのように対応すれば良いですか?
A.借地人がが亡くなった瞬間から、地代の支払い債務はその法定相続人らの連帯債務になります。
遺産分割協議が整わないからという理由で、地代滞納が続く場合、借地契約を相続人の債務不履行によって解除することが可能です。
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Q6.借地人が地代の滞納分について時効を主張した場合、反論できますか?
A.過去に内容証明郵便や支払いの請求を相手方に行っていれば、時効の完成猶予や更新(民法改正前の「中断」に相当)が認められる場合があります。
請求履歴や証拠を整理しましょう。
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Q7.滞納地代の支払いを求める内容証明郵便の書き方が分かりません。何を記載すべきですか?
A.内容証明には、地代の支払いを求める旨、滞納金額、支払期限、振込先などを明記します。
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Q8.地代滞納が続く借地人に立ち退きを求める際、準備すべき書類は何ですか?
A.地代の滞納を証明する領収書や契約書、内容証明郵便の送付履歴、交渉記録などを揃える必要があります。
それらをもとに裁判所で正当事由を主張します。
Q9.長期間滞納が続く借地人に無催告で契約解除を通知できますか?
A.無催告解除が認められる場合もありますが、実際には相手方とのトラブルを防ぐために催告を行い、支払いの猶予を与えることが一般的です。
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Q10.地代滞納の借地人に内容証明郵便を送ったのに支払いがない場合、次に取るべき行動は?
A.支払いがなければ、契約解除の通知を送るか、法的措置を検討する段階になります。
裁判で契約解除と立ち退きを求める手続きを進める場合、早めの専門家相談が重要です。
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借地権の地代滞納は専門家に相談しましょう
地代滞納のような借地権に関する問題は複雑化しやすく、専門知識なしでの対応はリスクを伴います。
一人で解決しようとせず、早期に専門家へ相談することが、スムーズな解決への近道です。
センチュリー21中央プロパティーは、まさにそのようなお悩みにお応えできる底地・借地権の専門家集団です。
当社には社内弁護士が常駐しており、法的な観点からも地主様を力強くサポート。
これまでに4万件以上のご相談と売却実績を誇り、その豊富な経験を活かして、地主様に寄り添いながら、地主様の目線で借地人との交渉を進めることが可能です。
地代滞納の問題でお困りの際は、どうぞお気軽にセンチュリー21中央プロパティーにご相談ください。
法的根拠に基づいた的確な対応で、地主様の心理的ご負担を軽減し、迅速なトラブル解決を目指します。
また、スムーズかつ好条件での底地売却のサポートもお任せ下さい。

この記事の監修者
弁護士
弁護士。早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。地代滞納、建物明け渡しなど借地権・底地権の案件へ積極的に取り組む。主な著書に「一番安心できる遺言書の書き方・遺し方・相続の仕方」「遺言書作成遺言執行実務マニュアル」など。