抵当権は借地権に設定できるのか?借地権を担保にする際の注意点
抵当権は借地権に設定できるのか?借地権を担保にする際の注意点

目次
本記事では、借地権に抵当権を設定する方法や注意点を解説します。
借地上の建物に抵当権を設定したいと考える方は是非ご覧ください。

借地権を担保にすることは可能?

結論から言いますと、「借地権」という権利そのものに直接担保を設定することはできません。
しかし、「借地上に存在する建物」に抵当権を設定することはできます。
建物に抵当権が設定している場合、判例上その敷地の借地権は、「当然に建物抵当権の効力の及ぶ対象物」に包含されるものと解されています。
これは、建物の利用に不可欠な土地利用権(借地権)も一体のものとして扱われるためです。
「…土地賃借人が賃貸土地上に所有する建物について抵当権を設定した場合には、特段の事情のない限り、抵当権の効力は右建物の所有に必要な賃借権に及ぶ…」
引用元 ♦参考判例:昭和40年5月4日の最高裁判決

しかし、注意すべき点があります。
地代の未払い等を理由に、借地契約が解除になってしまうと、地主は借地人に対して建物を解体し、更地にして土地を明け渡すよう命じます。
担保にしていた借地上の建物が取り壊されてしまうと、金融機関としては残債務の回収ができなくなってしまいます。
そのため金融機関は融資を行う前に、このようなリスクを回避するため、必ず地主の承諾を求めます。
つまり、借地権付き建物に抵当権を設定することは、法律上は可能ですが、地主の融資承諾が必須ということになります。
地主に融資承諾を貰える可能性は極めて低い
先述の通り、借地上の建物に抵当権を設定することは可能です。ただし、金融機関は必ず地主の融資承諾を求めます。
結論から言いますと、借地権付き建物に抵当権を設定する際、地主が融資承諾を許可してくれる可能性は極めて低いです。
そもそも、金融機関が地主に求める融資承諾書には以下のような内容が記載されています。
- 借地人が地代を滞納した際は、借地契約を解除する前に金融機関に連絡すること
- 連絡なく借地契約を解除した場合は、地主に対して損害賠償を求める
つまり、融資承諾を許可することは、地主にとってデメリット(リスク)しかないのです。
このような理由から、地主が融資承諾を許可するケースは、ほとんどありません。
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「借地権」と「抵当権」はどちらが優先される?
優先順位は、それぞれの権利を第三者に対抗できる状態(対抗要件)を備えた順番によって異なります。
借地権の対抗要件は、借地上に存在する建物の登記(借地借家法第10条)、抵当権については、抵当権設定登記になります。
どちらが早くこれらの対抗要件を備えたかによりその優劣が決まります。

「借地権」の対抗要件を先に備えている場合
この場合、借地人は(例えば、土地に後から設定された抵当権が実行されたとしても)原則として出ていく必要はありません。
仮に土地の抵当権が実行され、競売になっても、もともと借地権が設定されているのであれば、土地の抵当権設定者も借地権が設定されているものとして、その価値を把握しており、その前提で担保価値を評価しているため、不利にはならないからです。
「抵当権」の対抗要件を先に備えている場合
この場合、借地人は土地の抵当権に劣後してしまい、(例えば、土地の抵当権が実行された場合)買受人に対して借地権を主張できず、原則として立ち退かなければなりません。
もともと土地の抵当権者は借地権が設定されていないものとして、その価値を把握し融資をしていたはずです。
後から借地権が設定され、担保価値が下がるのでは、土地の抵当権者にとってあまりに不都合になってしまいます。
ただ、このような場合でも、2004年4月1日施行の改正民法により、抵当権者の同意が得られれば、抵当権に優先することができます。
(抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力)
登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。引用元 民法第387条
また、下記のような制度もあります。
(抵当建物使用者の引渡しの猶予)
「抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。一 競売手続の開始前から使用又は収益をする者
二 強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者」引用元 民法第395条
この民法第395条の制度により、借地権が抵当権に劣後する場合でも、建物の競売手続の開始前から建物を使用収益しているのであれば、買受人の買受けの時(通常は代金納付時)から6か月間は、建物の引渡しを猶予されます。
これは、かつての短期賃貸借保護制度(いわゆる短賃)に代わる制度ですが、あくまで引渡しの「猶予」であり、期間経過後は原則として建物を明け渡す必要がある点に注意が必要です。
競売で建物を買い受けた場合、借地権はどうなる?

抵当権が実行され、借地上の建物が競売に付された場合を考えてみましょう。
それを買った人(以下、買受人)は借地権を取得することができるのでしょうか。
まず、民法の原則として、借地権が第三者に譲渡される場合には、地主の承諾が必要になります(民法第612条)。
抵当権実行による競売の場合も同様で、買受人は地主に借地権の譲渡承諾を得る必要があります。
しかし、地主が必ずしも譲渡承諾*をしてくれるとは限りません。
その場合、買受人は、地主の承諾に代わって裁判所に許可(借地非訟)を求める制度が利用できます(借地借家法第20条)。
(建物競売等の場合における土地の賃借権の譲渡の許可)
第一項:第三者が賃借権の目的である土地の上の建物を競売又は公売により取得した場合において、その第三者が賃借権を取得しても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡を承諾しないときは、裁判所は、その第三者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。」同条3項:「第1項の申立ては、建物の代金(競売代金)を支払った後2月以内に限り、することができる。」
引用元 借地借家法第20条
この裁判所の許可を得るためには、地主に不利とならない事情や、場合によっては譲渡承諾料(名義書換料)に相当する金員の支払いなどが考慮されます。
万が一、裁判所の許可も得られなかった場合、買受人は建物を所有していても土地を利用する権利がないため、地主から建物収去土地明渡請求を受けるリスクがあります。
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借地権付き建物の担保価値と融資のポイント
借地権の価格は、更地価格の60%~70%と言われています。
しかし、これはあくまで目安であり、実際の取引価格や担保評価額は、地域、借地権の種類(旧法借地権、普通借地権、定期借地権など)、契約内容、残存期間、地代の額、地主との関係性など、個別具体的な条件によって大きく異なります。
借地権付き建物を担保に融資を受ける場合、大きな金額の融資を受けられる可能性もあります。
但し、前述の通り、借地権が土地の抵当権(例えば、地主が土地に設定した抵当権)に優先するかどうかで、担保価値は大きく異なります。
借地権が土地抵当権に優先する場合であれば、比較的有利な条件での融資も期待できますが、具体的な融資額や条件は金融機関の審査や物件の評価によって大きく変動します。
一般的に、更地や所有権付きの不動産と比較すると、借地権付き建物の担保評価は低くなる傾向があり、融資額が制限されることもあります。
特に定期借地権の場合は、契約期間満了時に更地で返還する義務があるため、担保評価がさらに厳しくなることがあります。
借地権が土地の抵当権に劣後してしまう場合は、前述の通りリスクが高いため、融資してもらえる可能性が著しく低いです。
具体的な融資額や可否については、複数の金融機関に相談し、個別のケースで見積もりや審査を受けることが不可欠です。

借地権を担保とする融資の返済期間
借地権付き建物を担保に融資を受ける場合、借地契約の期間を超える返済期間は原則として設定できません。
そのため、返済期間は、「借地契約の残存期間内を最大の返済期間」となります。
これにより、特に残存期間が短い場合は、月々の返済負担が重くなる可能性があります。
ごく稀に、金融機関や契約条件によっては、借地契約の更新が客観的に見て極めて確実視されるなどの特別な状況下で、かつ地主の明確な同意がある場合に限り、残存期間よりも長い返済期間を検討できるケースもないわけではありませんが、一般的ではありません。
地主との合意により借地契約の期間を延長できた場合には、それに伴い返済期間も長く設定できる可能性があります。
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借地権付き建物の担保融資は専門家への相談を
借地権付き建物の担保設定や売却は、地主の承諾、権利関係の整理など専門知識が不可欠です。
「地主が売却や更新を認めてくれない」「相続したものの地主との関係構築が面倒」「空き家の地代負担が重い」「子にこの借地権を継がせたくない」といったお悩みはございませんか?
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この記事の監修者
弁護士
弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。借地非訟、建物明渡、賃料増額請求など借地権や底地権をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。