建物買取請求権とは?行使できる要件や流れ、認められないケース
建物買取請求権とは?行使できる要件や流れ、認められないケース

目次
「地主に建物を買い取って貰うことはできる?」
「借地権の建物買取請求権が行使できる要件は?」
借地契約が更新されなかった場合、借地人は地主に対して建物を時価で買い取ってもらう「建物買取請求権」を行使できる可能性があります。
しかし、この権利はいつでも無条件に使えるわけではなく、法律で定められた要件をクリアし、正しい手順で手続きしなければなりません。
この記事では、借地権の建物買取請求権の基本的な内容から、権利行使の具体的な要件、手続きの流れ、そして買取価格の考え方までを詳しく解説します。

借地権の建物買取請求権とは
借地権の建物買取請求権は、借地契約が更新されずに終了した際、借地人が地主に対して、借地上に建てた建物を時価で買い取るよう請求できる権利です。
これは、借地人の投下資本の回収を助け、社会的に有用な建物の価値を維持するために、借地借家法第13条で定められています。
建物買取請求権とは
建物買取請求権とは、借地契約の期間が満了し、かつ契約が更新されない場合に、借地人が地主に対して、借地上にある自己所有の建物を「時価」で買い取るよう請求できる権利です。
この権利を行使することにより、借地人は土地から退去しなければならない場合でも、建物を取り壊して更地にする費用を負担することなく、建物の価値に見合った対価を地主から得ることができます。
建物買取請求権が借地人に認められているのは、借地契約終了時に建物を取り壊す経済的損失を避けるためです。
地代を払い、建物を建てて土地を利用してきた借地人の投下資本を保護し、更地返還による建物の無駄な解体を防ぎます。
これにより、借地人の経済的負担を軽減し、継続的な土地の有効活用を促す目的があります。
出典:借地借家法第13条
建物買取請求権を行使した際の買取価格
建物買取請求権を行使した際の買取価格は、建物が建てられた当時の価格ではなく、買取請求権を行使した時点での「時価」で決まります。
この「時価」には、建物そのものの価格に加え、その建物がその場所にあることによる利益(場所的利益)も含まれます。
価格を決める主な要素は以下の通りです。
- 建物の客観的価値: 建物の構造、経過年数、保存状態などから算出されます。
- 場所的利益:「都心の一等地にある」「最寄り駅に近い」「日当たりが良い角地」といった、その土地の立地条件がもたらす価値も価格に加算されます。これは借地権価格に相当する利益であり、買取価格の重要な要素です。
これらの要素を総合的に評価して時価が決定されるため、築年数が古くても、立地が良ければ高値が付く可能性もあります。
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建物買取請求権が認められる要件
建物買取請求権を行使するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 借地契約の期間が満了したこと
- 契約の更新がなされないこと
- 借地上に借地人所有の建物が存在すること
- 地主が更新を拒絶した、または借地人が更新請求をしなかったこと
- 借地人から地主へ買取請求の意思表示をしたこと
それぞれの要件について解説します。
要件①:借地契約の期間が満了していること
建物買取請求権は、借地契約の存続期間が満了した時点で初めて行使を検討できる権利です。
契約期間の途中で、借地人の都合で一方的に買い取りを請求することはできません。
<借地借家法13条1項>
借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。引用:借地借家法第13条
要件②:契約の更新がなされないこと
契約が合意更新されたり、法定更新されたりした場合は、建物買取請求権は発生しません。
あくまで契約が満了し、それが更新されずに終了することが前提となります。
要件③:借地上に借地人所有の建物が存在すること
当然の要件ですが、買取請求の対象となる借地人所有の建物が、借地上に現存している必要があります。
すでに取り壊してしまった後で、借地権のみを買い取るよう請求することはできません。
要件④:地主が更新を拒絶した、または借地人が更新請求をしなかったこと
この権利は、主に以下の2つのケースで発生します。
- 借地人が契約更新を請求したにもかかわらず、地主が正当事由をもって更新を拒絶した場合
- 借地人が契約更新を請求せず、契約を終了させることを選択した場合
地主が更新を拒絶するための「正当事油」には、「地主自身がその土地を使用する必要性が非常に高い」といった事情が必要ですが、その判断は最終的に裁判所が行います。
要件⑤:借地人から地主へ買取請求の意思表示をしたこと
上記①~④の要件を満たした上で、借地人が地主に対して「建物を時価で買い取ってほしい」という意思表示を明確に行う必要があります。
この意思表示が地主に到達した時点で、法律上、時価による売買契約が成立したとみなされます。
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建物買取請求権の行使から完了までの流れ
借地人が建物買取請求権を行使する際の流れは、以下の通りです。
- 契約期間の満了後、借地人が建物買取請求権を行使する
- 借地人と地主の間で買取価格(時価)を協議する
- 代金支払いと同時に建物と土地を明け渡してもらう
建物買取請求の流れ①:契約期間の満了後、借地人が建物買取請求権を行使する
契約期間が満了し、更新がされないことが確定したら、借地人は地主に対して買取請求権を行使します。
請求自体は口頭でも法律上の効力は生じますが、後から「言った」「言わない」のトラブルになることを防ぐため、配達証明付きの内容証明郵便で通知するのが最も確実です。
建物買取請求の流れ②:借地人と地主の間で買取価格(時価)を協議する
その後、地主と借地人の間で買取価格の協議を行います。
買取価格は一般的に「時価」を基準にすると借地借家法第13条1項で定めています。
時価には「未償却残高」や「鑑定評価額」などを基準にすることが多いですが、結局のところ地主と借地人が納得する価格であれば問題ありません。
ただし借地人が注意すべきは、住宅ローンの残債務が残っている場合、完済しなければいけないため、買取請求権価格の「時価」が残債務以上の価格でなくてはならない点です。
さらに、後の売買契約を締結するため、その契約に関する諸費用も考慮しないと自己資金を持ち出して買取請求権を行使することになってしまいます。
一般的に建物の売却に関わる費用は以下の通りです。
- 住宅ローンの完済費(残債務がある場合)
- 売買契約時の仲介手数料「(売買価格×3%+6万円)×消費税」
- 抵当権抹消登記費用(1~2万円程度)
- 売買契約印紙代(数万円程度)
- 譲渡所得税(課税譲渡所得に15%または30%を掛けた値)
上記の費用を算出したうえで、買取価格を協議する必要があります。
とはいえ金額の算出は専門家である借地権に強い不動産会社や不動産鑑定士に相談してから価格を決めましょう。
また価格を巡って地主と折り合いが付かないケースもあるため、不動産会社に仲介役としてサポートしてもらうのがおすすめです。
センチュリー21中央プロパティーは、借地権専門の仲介会社です。
経験豊富な借地権の専門家のみが在籍しており、地主との交渉もスムーズに代行可能。
さらに、社内弁護士が常駐しているため、法的な課題をクリアしながら安心・安全にお手続きを進めることが可能です。
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建物買取請求の流れ③:代金支払いと同時に建物と土地を明け渡してもらう
価格について双方が合意したら、売買契約を締結します。
建物の所有権移転登記と代金の支払いは、同時に行われるのが原則です(同時履行の関係)。
地主から代金全額を受け取ったら、住宅ローンがあれば完済し、抵当権抹消登記と所有権移転登記を行います。
そして、建物の鍵などを引き渡し、土地を明け渡して、すべての手続きが完了となります。

建物買取請求権の行使が認められないケース
一方で、建物買取請求権が行使できないケースも存在します。
借地人に建物買取請求権の行使が認められないケースは、主に以下の通りです。
- 借地人が契約違反をしている場合
- 借地人と地主が円満に土地の賃貸借契約を合意解除した場合
- 定期借地権の場合
認められないケース①:借地人が契約違反をしている場合
地代の滞納や、地主に無断での増改築、無断譲渡・転貸など、借地人側に契約違反(債務不履行)があり、それを理由に地主から契約を解除された場合、建物買取請求権は認められません。
この場合、借地人は地主の要求に応じて、自らの費用で建物を取り壊し、土地を更地にして返還する義務(原状回復義務)を負うことになります。
認められないケース②:借地人と地主が円満に土地の賃貸借契約を合意解除した場合
契約期間の途中で、地主と借地人が話し合い、お互いの合意の上で円満に契約を終了させる場合も、建物買取請求権は発生しません。
これは、法律が想定している「契約更新がされない」状況とは異なるためです。
ただし、建物の処遇について別途特約を結ぶことは可能です。
認められないケース③:定期借地権の場合
定期借地権では、借地権が終了した際の建物に関する取り扱いが普通借地権と異なります。
「一般定期借地権」と「事業用定期借地権」の場合、建物買取請求権の行使ができません。
この2つの借地権は、土地を更地の状態にして地主に返還する決まりになっているためです。
※定期借地権とは、借地権の一種で、あらかじめ定められた期間に基づいて借地契約を締結します。この契約は、期間が満了すると更新は行われません。たとえ建物が建っていたとしても、その建物に対する買取請求の権利は認められません。
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地主は建物買取請求権を拒否できない
建物買取請求権の要件を満たしていた場合、地主は買取を拒否することはできません。
建物の価格も高額になることがあるため、買い取りたくないと思う地主も多いです。
そのため、地主は借地人から建物買取請求権を行使されないために、土地賃貸契約書の特約条項に「建物買取請求権は行使できない」と記載しておく方法を検討するかもしれません。
契約書にこのような条項が明記されていれば、借地人は建物を地主に買い取ってもらうことはできないと考える方もいらっしゃいますが、借地借家法第16条の「強行規定」に該当するため、特約は無効となります。
そのため地主は、借地人から建物買取請求権が行使された場合、建物を買い取らなければなりません。
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建物買取請求権のまとめ
借地権の建物買取請求権は、契約が更新されない場合に地主に建物を買い取ってもらう制度です。
建物買取請求権を行使する際、注意しなければいけないのは建物買取請求権の行使要件と買取価格です。
借地人と地主で意見が対立することもあり、なかなか手続きが進まないケースも考えられます。
お互いが自分の主張だけに固執すると、条件なども合意に至らず、時間がかかる可能性も高いため、借地権に強い不動産会社に仲介に入ってもらい進めることをおすすめします。
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建物買取請求権に関してよくあるご質問
建物買取請求権に関して、よくある質問とその回答をご紹介します。
Q1.所有者の異なる土地にまたがって建物が存在する場合、建物買取請求権は行使できますか?

A.所有者の異なる数筆の土地にまたがって建物が存在する場合、原則的に建物買取請求権は認められません。(参考判例:最判昭42年9月29日判決)
これは、買取請求を認めると、地主は借地権の対象ではない隣地上の建物部分まで所有することになり、土地所有権の行使が不当に制限されてしまうためです。
例外的に権利行使が認められる可能性もゼロではありませんが、極めて限定的です。
Q2.建物が非常に古いのですが、それでも買い取ってもらえますか?
A. はい、建物が古くても、建物としての体裁を保っていれば建物買取請求権を行使できます。
買取価格は「時価」で判断されます。
たしかに、建物の物理的な価値は経年劣化により低くなるかもしれません。
しかし、買取価格にはその建物がその場所にあることによる利益(場所的利益)も加味されます。
そのため、建物自体が古くても、立地が良ければ場所的利益が評価され、相応の価格で買い取ってもらえる可能性があります。
Q3.地主が提示する買取価格に納得できません。どうすればよいですか?
A. まずは、なぜその価格に納得できないのか、客観的な根拠を示して地主と交渉することが大切です。
交渉の材料として、不動産鑑定士に依頼して作成してもらった鑑定評価書を提示するのは有効な手段です。
それでも協議がまとまらない場合は、裁判所に調停を申し立てるか、最終的には「建物代金請求訴訟」を提起して、裁判所に適正な売買代金を決定してもらうことになります。
建物買取請求権を行使した時点で売買契約は成立しているため、地主は価格に不満があっても支払いを拒むことはできず、裁判所が定めた金額を支払う義務を負います。
Q4.地代を少し滞納してしまいましたが、建物買取請求権は行使できませんか?
A. ケースバイケースですが、権利を行使できる可能性はあります。
建物買取請求権が認められないのは、地代の長期滞納など、地主との信頼関係を根本から破壊するほどの重大な契約違反(債務不履行)があり、それを理由に契約を解除された場合です。
例えば、「一度だけ支払いが遅れてしまい、すぐに支払った」というような軽微なケースであれば、信頼関係を破壊したとまでは言えず、建物買取請求権が認められる可能性は十分にあります。
ただし、最終的な判断は個別の事情によるため、不安な場合は弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

この記事の監修者
弁護士
弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で借地非訟手続きや建物買取請求権の行使など今社会問題化しつつある借地権トラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。