借地権の転貸(又貸し)に注意!地主に承諾をもらう必要はある?
借地権の転貸(又貸し)に注意!地主に承諾をもらう必要はある?

目次
借地権を転貸(又貸し)する場合、原則として地主の承諾が必要です。
無断で転貸すると、契約解除や損害賠償請求など、思わぬトラブルに発展する可能性もあります。
この記事では、借地権の転貸における地主の承諾の必要性、承諾を得るための具体的な手続きや承諾料、そして無断転貸のリスクについて、わかりやすく解説します。

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借地権の転貸(又貸し)とは?
借地権の転貸とは、地主から土地を借りている借地人が、その土地や借地上の建物を第三者にさらに貸し出すことを指します。
いわゆる「又貸し」のことです。

借地権の転貸借契約には、主に3人の登場人物がいます。
- 土地の所有者である地主(A)
- 地主から土地を借りている借地人兼転貸人(B)
- 借地人から土地や建物を借りる転借人(C)
転貸借契約は借地人(B)と転借人(C)の間で結ばれますが、民法第613条により、転借人(C)は土地の所有者である地主(A)に対しても直接義務を負います。
例えば、借地人(B)が、地主の承諾を得て土地を転貸したものの、その後、借地人(B)が地代を支払わなかった場合、地主(A)は転借人(C)に対して直接、土地の明渡しを求めることができます。(参考判例【平成9年2月25日】)

一方、借地人(B)の債務不履行が原因ではなく、地主(A)と借地人(B)が話し合いによって借地契約を合意解除した場合には、特段の事情がない限り、地主(A)は転借人(C)に対して賃貸土地の明渡しを請求することはできないとされています。(参考判例【昭和62年3月24日】)
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借地権の転貸時には、地主の承諾と「承諾料」の支払いが必要
借地人が第三者に借地権の対象である土地を転貸する場合、民法第612条に基づき、地主の承諾が必要です。
また、地主に承諾を得るにあたって、慣習として借地人から地主に「転貸承諾料」を支払います。
これは、借地権の譲渡(売却)の際に支払う「名義書換料(名義変更料)」とは異なるものです。
転貸承諾料の金額は、契約当事者間の交渉によって決まりますが、一般的に借地権価格の10%程度が目安とされています。
ただし、土地の規模や立地、転貸の条件などを総合的に考慮して金額が変動します。
転貸を検討する際は、まずお手元の借地契約書に転貸に関する規定があるか確認しましょう。
契約書に定めがない場合は地主との交渉が必要になります。
交渉が難航するケースも少なくないため、注意が必要です。
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地主の承諾が得られない場合の対処法
地主との交渉が決裂した場合、最終手段として裁判所に地主の承諾に代わる許可を求める「借地非訟」という法的な手続きがあります(借地借家法第19条)。
これは、裁判所が当事者間の実情を調整し、後見的な立場で柔軟な解決を図るための制度です。
この手続きは、借地人が地方裁判所に申し立てることで始まります。
裁判所は審理を通じて、借地人が転貸を必要とする事情や、地主に与える影響といったあらゆる点を総合的に考慮し、許可するかどうかを判断します。
裁判所が転貸を許可する際には、地主との公平性を図るため、承諾料として借地権価格の10%程度を目安とした金銭の支払いを同時に命じることが一般的です。
しかし、借地非訟は決定までに時間がかかり、費用や関係悪化、不許可といったリスクも伴います。
そのため、あくまで最終手段と位置づけ、まずは弁護士などの専門家に相談し、交渉による円満な解決を目指すことが重要です。
専門家が間に入ることで、冷静な話し合いによる妥結も期待できます。
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借地権を無断転貸したらどうなるの?
借地権を無断で転貸した場合、以下のような重大なリスクが発生します。
- 借地契約を解除される可能性がある
- 損害賠償請求を起こされる可能性がある
- 地主との関係性が悪化する
借地権を無断転貸した場合のリスク①:借地契約を解除される可能性がある
無断転貸が発覚した場合に直面する最も重大なリスクは、地主による契約解除です。
民法第612条2項は、賃借人が賃貸人の承諾なく賃借物を転貸したとき、賃貸人は契約の解除ができると定めています。
これは、無断転貸が貸主と借主の間の信頼関係を根本から裏切る「背信的行為」とみなされるためです。
契約が解除されると、借地人は土地を使用する権利を完全に失い、原則として自身の建物を解体・撤去して土地を更地に戻し、地主に返還しなければならなくなります。
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借地権を無断転貸した場合のリスク②:損害賠償請求を起こされる可能性がある
契約解除に加えて、無断転貸によって地主が具体的な損害を被った場合には、損害賠償を請求される可能性があります。
例えば、転借人が土地を不適切に使用して土壌を汚染させた場合や、騒音などで近隣トラブルを発生させ、その対応に地主が追われた場合などが考えられます。
また、地主が本来得られたはずの転貸承諾料相当額を損害として請求されるケースもあります。
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借地権を無断転貸した場合のリスク③:地主との関係性が悪化する
法的な措置以上に深刻なのが、地主との信頼関係が完全に失われることです。
賃貸借契約は、法律や契約書だけで成り立つものではなく、当事者間の長年にわたる信頼によって支えられています。
無断転貸という裏切り行為は、この関係性を修復不可能なレベルまで破壊してしまいます。
その結果、将来的に契約を合意更新する際の交渉が難航したり、建物の建て替えや増改築といったライフプランに関わる重要な承諾が一切得られなくなったりする事態に陥りかねません。
一度失った信用を取り戻すことは極めて困難であり、今後の借地関係すべてにおいて厳しい対応を取られることになるでしょう。

借地権の転貸についてのよくある質問
借地権の転貸について、よくある質問とその回答をいくつかご紹介します。
Q1.借地で契約している更地の土地を使用して、駐車場を経営したいのですが、地主に伝えておく必要はありますか?
A.はい、必ず地主に伝えて承諾を得てください。
借地借家法は原則として建物の所有を主たる目的とする借地権を保護の対象としています(借地借家法第1条)。
そのため、更地を駐車場として第三者に貸す行為は借地借家法の保護を受けられない可能性があり、通常の土地賃貸借の問題として扱われます。
Q2.地主の承諾が得られない場合はどうすればよいですか?
A.まず地主との交渉が最優先ですが、どうしても承諾が得られない場合は、借地借家法第19条に基づき、裁判所に地主の承諾に代わる転貸の許可を求めることができます。
この法的な手続きを「借地非訟(しゃくちひしょう)」と呼びます。
ただし、この借地非訟の手続きは建物の転貸を想定したものであり、駐車場としての土地利用に適用できるかは個別の事案によります。
裁判所の手続きには時間と費用がかかり、許可が保証されるわけでもありません。
地主との交渉が難しい場合は、早めに弁護士などの専門家に相談することを強く検討しましょう。
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借地の一部を駐車場として転貸(又貸し)した判例
借地として借りた土地が広く、余ったスペースを駐車場として第三者に貸したい、と考える方もいるかもしれません。
しかし、たとえ借地の一部であっても、第三者に継続的に使用させる行為は「転貸」にあたり、原則として地主の承諾が必要です。
この点について参考になるのが、東京地方裁判所の判例です(平成5年3月29日判決)。
この裁判では、借地の一部(全体の2割程度)を駐車場として第三者に月極で貸した行為が、地主の承諾が必要な「転貸」に該当すると明確に判断されました。
裁判所は、たとえ借地の一部であっても転貸にあたるとした上で、特定の相手と長期間の契約を結ぶ月極駐車場は、建物所有という本来の目的の範囲内の利用とは言えない、と結論づけました。
これは、賃貸借契約が地主と借地人の信頼関係を基礎としているため、借地人が地主に無断で第三者に土地を利用させることは、その信頼関係を損なう行為(背信的行為)とみなされるからです。
ただし、この判例では例外的なケースにも言及しています。
例えば、借地上に店舗や飲食店などを経営しており、その不特定多数の顧客のために「時間貸し駐車場」として提供するような場合です。
このようなケースでは、建物の利用に付随する行為とみなされ、転貸にはあたらず承諾が不要と判断される可能性も示唆されています。
結論として、借地の一部を駐車場として貸す場合、それが特定の相手との月極契約であればあるほど、無断転貸と判断されるリスクは高まります。
自己判断でトラブルに発展させないためにも、事前に地主に計画を説明し、必ず承諾を得るようにしましょう。
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まとめ
本記事で解説した通り、借地権の転貸には地主の承諾が不可欠で、無断で行うと契約解除等の重大なリスクがあります。
「借地を活用したいが、地主との交渉などを考えると気が重い…」と感じる方も多いのではないでしょうか。
借地は通常の所有権の土地とは異なり、建て替えや売却などの際には専門的な知識と地主との交渉が不可欠です。
もしその煩わしさから解放されたいとお考えなら、すべての問題を一挙に解決する「売却」も有効な選択肢です。
当社センチュリー21中央プロパティーは、借地権を専門とする不動産仲介会社です。
借地権のプロフェッショナルが多数在籍しており、面倒な地主との交渉から売却まで、煩雑な手続きもスムーズに代行いたします。
また、借地権専門の社内弁護士が常駐しているため、複雑な法的課題をクリアしながら手続きを進めることが可能です
初回のご相談時から売却時まで、一切料金を頂戴しない独自のシステムを導入しておりますので、まずはお気軽にご連絡ください。

この記事の監修者
社内弁護士
当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。