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空き家処分~借地上の空き家を処分したい~|借地権の基礎知識

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空き家処分~借地上の空き家を処分したい~

借地の空き家を処分する前に

家は人が住まなくなると、激しく劣化が進んでしまいます。空き家が残っていると、崩れて隣の家を破損させたり、火事になって延焼したりするリスクがあり、万が一そのようなことが起こってしまった場合、空き家の持ち主は責任を取らなければなりません。

借地上の建物が空き家になってしまう代表的な例は、そこに住んでいた住人が亡くなってしまった場合です。

残された相続人は空き家の管理もしなければなりませんが、現実的にそれが無理だという方も多いでしょう。そのような場合には、きれいさっぱり空き家を処分することを考えるとよいでしょう。

ただ、処分するといっても賃貸借契約内容を確認する必要があります。

契約期間が残っている場合には、地主側の承諾がなければ勝手に契約を終了(解除)することはできません。そのため、借地契約の期間内であれば地代の支払いは続けなければならなくなってしまいます。使用していない建物であっても借地にある以上無断で処分はできませんので、注意が必要です。

借地の空き家の処分方法

借地上の空き家を処分する代表的な方法を5つ解説していきます。

1. 地主に買い取ってもらう

一番手っ取り早いのは、地主に買い取ってもらうという方法です。第三者に売却するよりも手元に残る金銭が多くなる可能性が高いため、まずはこの方法を検討するべきでしょう。建物付きで買い取ってもらうのか、取り壊した上で買い取ってもらうのか、解体費用は地主側、借地人側どちらが負担するのか、金額はいくらか、等をまとめる必要があります。

2. 底地と同時売却する

次の方法は、底地と借地権を同時に第三者に売却してしまう方法です。地主さんが借地権を欲していない場合には、この方法を地主さんに提案するのもよいでしょう。底地・借地権を単独で売却するよりも高く売却できる点がメリットです。

しかし同時売却は手続きが煩雑です。この方法を検討する際は、専門家への相談は必須と言えるでしょう。

なお、売却後のお金の分配割合は借地割合を基準に分配するケースが多いようです。

3. 第三者に売却する

地主への売却や同時売却が難しい場合には、借地権のみを第三者へ売却する方法を検討せざるを得ません。地主の承諾が必要になったり、譲渡承諾料が必要になったりとこちらはこちらで煩雑な手続きが多くなります。後ほど当社にあった相談事例と合わせて詳細の解説をします。

4. 賃貸物件にする

そもそも売却が難しい場合には、空き家を貸し出すことも一つの方法です。売却と異なり、空き家を貸すことには地主さんの許可を得る必要はありません。借地人の判断で行うことが可能です。

ただしこの方法は空き家が貸し出せる状態にあることが前提です。人が住めるような状態ではない家屋の場合は難しいでしょう。リフォームして貸し出す方法もありますが、かかる費用も考慮して検討しましょう。また大幅な改築という形になると地主の許可も必要になります。

5. 更地にして返還する

売却も賃貸利用もできないという場合は、更地にして返却する他なくなります。土地を返却する場合には、借地人に原状回復義務があります。すなわち、借地上に存在する建物を取り壊し、更地にして地主に返還する必要があるのです。

借地人側には、建物買取請求権(借地上に存在する建物を地主にじかに買い取ってもらうことができる権利)がありますが、建物買取請求権が行使できるのは「借地権の存続期間が満了した場合」です。契約期間中での合意解除等の場合にはこの要件を満たさず、借地人は地主に対しての建物買取請求権を行使することはできません。場合によっては地主側が解体費用を負担してくれる場合もありますが、こちらは交渉次第と言えるでしょう。

家を更地にする場合の解体費用

借地上の建物を解体しなければならなくなった場合、その費用はどれくらいになるのでしょうか?

坪数や、木造か鉄筋か等によって相場は変わってきます。木造住宅であれば、3,4万円程度/1坪ですが、鉄筋コンクリートになると、倍程度になってきます。頑丈な建物ほど取り壊す手間が多くなるからです。また解体する家の場所によっても価格は変動します。

へんぴな場所や重機が入りにくい場所などであれば、費用はかさんでしまいます。

解体は業者に依頼することになると思いますが、その際は数社話を聞いて、比較検討して決めるとよいでしょう。

事例

最後に、実際に当社にご相談頂いた事例をご紹介いたします。

甲土地に借地権を設定している乙建物があります。乙建物の所有権および登記は私(A)名義ですが、空き家になっています。できれば乙建物ごと借地権を売却してしまいたいのですが、可能でしょうか?

売却することは可能ですが、地主の許可が必要になります。

本件では乙建物は甲土地上に存在します。そしてここには借地権が設定されています。すなわち、乙家を売却する=借地権も一緒に売却することになります。借地上の建物の譲渡の際には、「地主の許可をもらうこと」が必要になります。

(賃借権の譲渡及び転貸の制限)

民法612条1項:「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。

同条2項:「賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。」

借地権も賃借権の一種です。賃貸人(地主)に許可なく、借地上の建物を売却すると、契約を解除されてしまう可能性があります。契約を解除された場合は土地を適法に占有し続ける権利は無くなりますので、不法占拠となってしまいます。

また、借地契約終了時に行使できる建物買取請求権は、債務不履行による契約の解除の場合には行使できません。 そのため借地上の建物を手放す場合には必ず地主の許可を得るようにしましょう。

地主に相談しても売却を許可してくれない場合は、裁判所に許可を求めることができます。そこで許可をもらえれば、「適法」に譲渡や転貸をすることが可能になります。

(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)

借地借家法19条1項:「借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。」

「…当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。」とあるように、許可を与えられる代わりに、地主に対して○○円支払えとなるのが通常です。

地主に許可をもらえた場合でも、承諾料を支払うことが通常ですので、いずれにせよ譲渡する際は地主に金銭を支払う可能性が高いと言えるでしょう。

この記事の監修者

菅原 悠互スガワラ ユウゴ

弁護士

弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で借地非訟手続きや建物買取請求権の行使など今社会問題化しつつある借地権トラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。

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