地代の値上げを要求されたら?借地権の地代トラブルを徹底解説
目次
借地権で発生しやすいトラブルの一つが、地代に関するものです。
ある日突然、地主から地代の値上げ通知があった場合、どう対処するのが正解なのでしょうか。
本記事では、地代の値上げの根拠となる法律や、借地人が取るべき対処法を専門家が分かりやすく解説します。
地代の値上げを要求されても必ずしも応じる必要はない
結論から申し上げますと、地主から地代の値上げ通知が届いた場合、借地人は必ずしも記載された金額に応じる必要はありませんので、ご安心ください。
前提として、地主は地代を値上げする権利を持っています。(借地借家法第11条第1項)
この権利は「地代等増減請求権」と呼ばれます。
地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。
引用 借地借家法第11条第1項
ただし、一方的に値上げを強要できることはできず、以下で解説する4つの条件に該当する場合に地代の値上げ請求が認められる可能性があります。
地主が地代を値上げできる4つの条件

地主は、無条件に地代を上げられるわけではありません。
地代の値上げできる条件は、以下の4つです。
- 土地にかかる税金(固定資産税や都市計画税)が増えたとき
- 土地の価値が上がったとき
- 経済の状況が変動したとき(インフレなど)
- 近隣の類似した土地の地代と比べて安いとき
①土地にかかる税金の増加(固定資産税・都市計画税)
地代を決定する重要な要素の一つに、土地の維持にかかる費用があります。
固定資産税や都市計画税は、土地を所有することによって必ず発生するコストです。
これらの公租公課が増加した場合、現状の地代収入でその増加分を吸収することが困難になる、または貸主(地主)の収益が不当に圧迫されることになります。
これは経済事情の変動と見なされ、適正な負担を維持するために地代の値上げを行う正当な理由となります。
②土地の価値が上がったとき
地代は、土地の利用価値、つまりその土地が生み出す収益性や利便性に基づいて決められます。
例えば、周辺に新たな商業施設や駅が建設されたり、区画整理によってインフラが整備されたりすることで、土地の市場価値(時価)が上昇することがあります。
土地の価値が上がれば、それを利用する対価としての地代も、その価値に見合った水準に引き上げられるべきであるという考えから、値上げの根拠となります。
③経済の状況が変動したとき(インフレなど)
インフレや経済状況の変化も地代に直接影響します。
物価が上昇すると建築資材費や生活費が増えるため、貸主(地主)は地代を引き上げて実質的な収益を維持しようとします。
逆に景気が悪化すれば、地代を抑えて空室リスクを回避する動きが出ます。
金利や賃貸需要の変化も地代に影響し、経済全体の動向が土地賃貸市場に反映されるため、地代はインフレや景気循環に敏感に反応します。
④近隣の類似した土地の地代と比べて安いとき
地代の適正さを判断する最も客観的な基準の一つが、近隣の類似不動産の地代水準です。
借地している土地と用途、規模、場所などが似ている周辺の土地の地代と比較して、現在の地代が著しく低い地代である場合、それは不相当な地代と見なされます。
この市場価格との乖離を是正し、公平性を保つために、周辺の相場水準まで地代を引き上げる根拠になり得ます。
地代の値上げへの対処法

借地人は、地代の値上げ通知を受けた場合、以下の方法を検討してみましょう。
- 契約内容の確認
- 地主との条件交渉
- 地代の供託
- 民事調停・訴訟
対処法①:契約内容の確認
まずは、土地の賃貸借契約書を確認し、地代の増額(改定)に関する特約があるかどうか、確認しましょう。
契約書内に「〇年ごとに〇%増額する」といった具体的な記載がある場合は、残念ながら地代の増額に応じなければならないケースもあります。
しかし、借地人に一方的に不利益な特約は、消費者契約法などにより無効と判断される可能性もあります。
ご自身で判断せず、借地権に詳しい弁護士や不動産会社に相談してみましょう。
契約書に地代改定に関する記載がない場合や、そもそも契約書自体がない場合も、まずは専門家に相談し、今後の対処法について助言を貰うとスムーズな交渉が期待できます。
対処法②:地主への条件交渉
「地代の値上げには応じたくないものの、地主との関係性も悪くしたくない…」と考える方も多いでしょう。
確かに借地契約は長期間に及びます。
できれば、円満に地代問題を解決したいと考えるのが自然です。
また、地主との今後の関係性も鑑みて、常識の範囲内であれば、「多少の地代増額は納得できる」という方もいらっしゃるでしょう。
そのような場合は、地主に対して以下のような交渉を行うと良いでしょう。
- 増額の幅を小さくしてもらう
- 地代の増額に応じる代わりに更新料を減額してもらう
- 増額のタイミングを後ろ倒しにしてもらう

ただし、注意点として地主への交渉前に、必ず借地権に詳しい弁護士や不動産会社に事前に相談しておきましょう。
個人での交渉は感情的になりやすく、専門知識も不足しているため、難航するケースが少なくありません。
特に、地主側が不動産管理会社や弁護士を立ててきた場合は、専門家同士で交渉するのが望ましいでしょう。
地代の交渉については、借地権問題に強い弁護士や不動産会社に任せた方がスムーズに話が進みます。
不動産会社であれば、固定資産税評価証明書や周辺の地代相場といった客観的な資料を基に、増額が適正な範囲内かどうかの根拠も示して貰えます。
センチュリー21中央プロパティーでは、地主への交渉を無料で代行します。地代の増額でお悩みの方は、一度ご相談ください。
対処法③:地代の供託
地代の供託とは、地主が地代の受け取りを拒否する場合などに、本来は地主に対して支払うべき地代を国の機関である供託所(法務局)に預けることで、支払い義務を免れる制度のことです。
地代の増額に応じなくても、これまで通りの地代(あるいは借地人が相当と考える額)を支払っていれば、基本的に借地契約を解除されたり立ち退きを命じられることはありません。
しかし、中には「地代の増額に応じないのなら、これまでの地代も受け取らない!」という地主もいます。
地代の受け取りを拒否されたからと言って、地代を払わずに滞納が続くと、債務不履行として借地契約を解除されてしまうリスクがあります。
このような状況を回避するために、地代の供託制度があります。供託によって、借地人は法的に地代の支払い義務を果たしたとみなされます。

地代の供託を利用するには、主に以下いずれかの条件に当てはまる必要があります。
- 地主が地代の受領を拒否する場合
- 地主が行方不明になり受領不能の場合
- 地主が死亡したが相続人が誰か不明、または相続人間で争いがある場合
ただし、供託したからと言って地主との地代トラブルが解決する訳ではありません。
あくまで一時的な措置であり、根本的な解決を目指すのであれば、借地権のトラブルに精通した弁護士や不動産会社に相談しましょう。
対処法④:民事調停・訴訟
地主との交渉が難航する場合は、家庭裁判所での民事調停や地方裁判所での訴訟も検討しましょう。
調停は、第三者である調停委員が間に入って、双方の意見を聞き、話し合いによる合意を目指す方法です。
しかし、調停案が出るまでには半年から1年程度の期間を要することがあります。
調停でも合意しない場合は、地代増減請求訴訟(裁判)になります。
訴訟では、裁判所が選任した不動産鑑定士の意見などを参考に、最終的に適正な地代を決定します。
時間や費用、精神的な負担も考慮したうえで、調停や訴訟については慎重に判断しましょう。
【事例】売却によって地代トラブルを解決したAさん

借地人のAさんは、借地契約を更新する際、地主から突然地代の増額を請求されました。
地代は、4万円から8万円に倍増。さらには、500万円の更新料まで請求されました。
Aさんは、その条件から地主の「契約を更新せずに立ち退いてもらいたい」という意図を感じ取りました。

70代のAさんは、年金生活を送る中で、今後も地代を値上げされるかもしれない不安と地主と揉めた状態で借地権を息子に相続させることへの懸念から、思い切ってこれを機に借地権を売却することを決めました。
当社にご相談いただき、最終的に地主との交渉を経て第三者へ借地権を売却することで地主とのトラブルを解決。
息子さんのサポートも受けながら、売却で得たお金で新しい住居での生活をスタートしました。
このように、地主との関係修復が難しいケースでは、借地権を売却することでトラブルから抜け出す決断も有効な選択肢の一つです。
【完全無料】地代の値上げに関する相談受付中

地主からの地代値上げ通知に対し、交渉や供託などの対処法はありますが、根本的な解決に至らないケースも少なくありません。
地主との交渉が難航している、あるいは関係性も含めてトラブルを根本から解決したいとお考えなら、「借地権の売却」も有力な選択肢です。
センチュリー21中央プロパティーは、借地権専門の不動産会社です。地代をはじめ、地主とのトラブル解決に精通したスタッフが揃っています。
- 地代の増額通知が届いた
- 地主への交渉方法を相談したい
- 地主との交渉を代行してほしい
- 供託が続いている
- トラブルがある借地権を相続したくない
このような方は、ぜひ当社の無料相談をご利用ください。
この記事の監修者
代表取締役 /
宅地建物取引士
CENTURY21 中央プロパティー 代表取締役/宅地建物取引士
都内金融機関、不動産会社での経験を経て、2011年に株式会社中央プロパティーを設立。長年にわたり不動産業界の最前線で活躍するプロフェッショナル。
借地権の売買に精通しており、これまでに1,000件以上の借地権取引や関連する不動産トラブル解決をサポート。底地や借地権付き建物の売却、名義変更料や更新料の交渉など、複雑な借地権問題に従事。
著書に「地主と借地人のための借地権トラブル入門書」など多数の書籍を出版。メディア出演やセミナー登壇実績も豊富で、難解な相続不動産問題も「わかりやすい」と説明力に定評がある。