借地権を相続したら更新するべき?借地の特徴と売却方法も解説
借地権を相続した場合、その後も借地契約を更新して住み続けるか、更新せずに売却するか、慎重な判断が求められます。
本記事では、借地権を相続した際の判断基準や更新する場合の注意点、また更新しない場合の売却方法を解説していきます。
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相続時に実家が借地だと知るケースは多い
相続のタイミングで初めて、「実家が借地権(建物は所有、土地は借り物)だった」と知るケースは決して珍しくありません。
実家を出るまで一度も借地契約の更新がなかった場合など、「今住んでいる家は借地に建っているものだ」と知る機会は意外にも少なく、古くからある住宅地や都心部では特によく見られる話といえます。
もちろん、借地権であっても相続後にそのまま住み続けることは可能ですが、実際に契約を更新し続けるか、あるいは手放すかを判断するためには、借地権の概要を把握しておくことが重要です。
まずは次の2つの視点から、借地権の基本を掴んでおきましょう。
- そもそも借地権とは?
- 借地権は契約時期で分類が異なる
そもそも借地権とは?
借地権とは、「建物を建てて利用するために地主から土地を借りる権利」のことです。
借地人(借地権を持つ人)は、地主(土地の貸主)に毎月の地代を支払うことで、その土地に家を建てて利用することができます。
また、契約時に定められた期間ごとに更新料を支払うことで、何十年にも渡って安定的に土地を借り続けることが可能です。
※借地契約の内容や過去の支払状況によっては更新料を支払わなくてよいケースもある
ただし、土地は地主の所有物・建物は借地人の所有物と権利が分かれているため、相続時には相続登記だけでなく、地主とのやり取りや借地契約の確認といったさまざまな手続きが必要になります。
借地権は借地契約の時期によって分類が異なる
借地権は、「その契約がいつ結ばれたものか」によって大きく次の3つに分類され、それぞれ契約期間が異なります。
次回更新までの期間に関わる重要なポイントですので、借地権を相続したら契約書でご自身の借地権がどれにあてはまるものであるかを確認しておきましょう。
| 借地権の分類 | 借地契約の時期 | 特徴 | 契約期間(更新後) |
| 旧法借地権 | 1992年7月31日以前 | ・借地人の権利が強く、正当事由がない限り半永久的に更新可能。 ・一般的な戸建て住宅に多い。 ・現在最もよく見られるタイプの借地権。 | ・最低20年 |
| 普通借地権 | 1992年8月1日以降 | ・旧法に近いが、更新拒絶の要件が明確化し、期間は短くなる傾向。 ・一般的な戸建て住宅に多い。 | ・初回更新まで:最低20年 ・更新2回目以降:最低10年 |
| 定期借地権 | ・期間満了で借地権が消滅。更新はなく、更地返還が必須。 ・マンションや建売住宅に多い。 | ・最低50年 |
稀なケースではありますが、もしご自身が相続した借地権がマンション等の定期借地権である場合、原則的に契約更新ができません。
そのため、将来訪れる契約終了時の解体費用やその後の住まいなど、今のうちに準備しておくことを強くおすすめします。
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相続した借地権を更新するべきケース・しないほうが良いケース
相続した借地権を更新したほうがいいかどうかは、相続した人のライフスタイルや経済状況次第で全く異なります。
ここでは、借地権を更新すべきか否かの判断基準をご紹介してきいます。
借地権を更新するべきケース
借地権を更新するべきケースとして、次の3点をご紹介します。
- 今後も借地上の建物に居住する予定がある
- 借地上の建物を賃貸物件として活用する予定がある
- 地主との関係が良好
なお、借地権の更新時には、更地価格※1の3%程度、または借地権価格※2の5%程度と高額な更新料が必要になることが一般的です。
※1. 土地の上に建物などがないと仮定した状態の純粋な土地の市場価格
※2. 更地価格に借地権割合(土地に占める借地権の権利の割合)を掛けた価格
ケース①:今後も借地上の建物に居住する予定がある
相続した借地上の建物にこれまでも住んでおり、また今後も変わらず住み続けたい場合は、借地権を更新するべき代表的なケースといえます。
新たに土地を購入するより低コストで、住み慣れた場所での生活を維持していくことが可能です。
また、残った親と同居するなどの目的で借地上の建物に引っ越す予定がある場合も同様で、こちらのケースでも借地権の更新は必須となります。
ケース②:借地上の建物を賃貸物件として活用する予定がある
借地上の建物を賃貸に出して家賃収入を得たい場合も、借地権を更新すべきケースの1つです。
家賃で地代や将来の更新料を賄えるかを入念にシミュレーションし、収支計画を立てましょう。
ただし、後々地主とのトラブルにならないよう、賃貸物件として活用する際は念のため地主に前もって通知しておくことが大切です。
また、賃貸物件として活用するために大規模なリフォームやリノベーションが必要な場合は、地主の承諾と承諾金の支払いが必要になります。
ケース③:地主との関係が良好
借地権を維持し続ける上で、地主との信頼関係は非常に重要です。
借地権を相続した時点で地主との良好な関係が築けているのであれば、今後も安心して住み続けられる可能性が高いため、前向きに更新を考えても良いでしょう。
もし自身が住まない場合でも、残った親や親族が引き続きその借地に住み続ける場合などは、地主との関係は大きな判断材料になります。
借地権を更新しないほうが良いケース
借地権を更新すべきでないケースとして、次の3点をご紹介します。
- 相続後に誰も借地上の建物を利用する予定がない
- 地代や更新料・維持管理費の負担が大きい
- 地主との関係が良好でない、または希薄
なお、更新しない場合は契約満了時に建物を解体し、更地にして地主に土地を返還するのが原則です。
その際の解体費用も考慮した上で、以下のような場合は手放すことを検討しましょう。
ケース①:相続後に誰も借地上の建物を利用する予定がない
相続した借地上の建物に引っ越す予定がなく、また住んでいた親も亡くなって空き家になってしまうような場合は、更新のメリットが薄いケースの典型例です。
空き家になっても毎月の地代の支払いがなくなることはなく、それどころか建物の劣化や防犯上のリスク等の余計な負担を背負うことにもなりかねません。
特に、相続した人が遠方に住んでいる場合は空き家を維持する手間も大きいため、借地権を更新しないメリットは大きいといえるでしょう。
ケース②:地代や更新料・維持管理費の負担が大きい
毎月の地代や建物の修繕費が家計を圧迫する場合も、借地権を更新すべきでないケースの1つです。
特に、都心部では都市開発などによって地価の高騰が続いており、それに伴って地代の値上げを要求されるケースも少なくありません。
もし、「借地権は手放したいけど建物の解体費が払えない」という場合、後述する「売却」が有効な選択肢になります(当社センチュリー21中央プロパティーは、売却時の仲介手数料や残置物処分費用が無料です)。
ケース③:地主との関係が良好でない
相続時点ですでに地主との関係が悪いと、その後さまざまな場面でトラブルに発展する可能性があります。
引き続き借地に住む場合は特にこのリスクが大きく、日頃から地主との関係でストレスを抱えることにもなってしまうため、無理に借地権を更新すると心理的な負担が長引くことになります。
契約の更新時に法外な一時金や地代の値上げを要求をされる恐れもあるため、地主とのコミュニケーションの改善が難しい場合は相続を機に手放すことも検討しましょう。
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借地権を更新する場合の注意点
更新を決めた場合は、トラブル回避のために次の3点に注意しましょう。
- 借地契約書の内容を把握しておく
- 借地上の建物の登記を確認しておく
- 地主との関係性の構築・維持に努める
注意点①:借地契約書の内容を把握しておく
1つ目は、借地契約書の確認です。
借地契約書は、正式な名称を「土地賃貸借契約書」といい、先述の借地権の分類や契約期間、更新料や地代などの金額などの重要事項が明記された書類です。
借地を利用する上で必ず把握しておくべき内容となっているため、もし契約書が見つからない場合は、地主に相談して写しをもらう、もしくはこれまでの支払い記録から契約状況を把握するようにしましょう。
注意点②:借地上の建物の登記を確認しておく
2つ目は、「借地上の建物が登記されているかどうか」の確認です。
借地上の建物が未登記だと、もし地主が変わった場合などに、「自分が利用する権利がある」と第三者に対して主張できなくなってしまいます。
分かりやすく言えば、地主が代わった際に家を追い出されるリスクがあるということです。
そのため、借地権の相続時には必ず登記の状況を確認し、未登記の場合は相続した人の名義で登記しましょう。
注意点③:地主との良好な関係性を維持・構築する
3つ目は、地主との良好な関係性の維持・構築です。
借地権を更新した後は、毎月の地代の支払いや契約更新ごとのやり取りなど、地主とのさまざまなコミュニケーションを避けることはできません。
そのため、地主との関係が良好でない場合、精神面での負担は非常に大きなものとなってしまいます。
親世代から地主との関係性が築けている場合はその維持を、あまり関係が良くなかったり希薄だったりした場合は新たな関係性の構築を心がけ、日頃の挨拶などの何気ないやり取りから意識していきましょう。
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更新しない場合は借地権の売却を検討しよう
借地権を更新しない場合、ただ土地を返すのではなく、借地権を「売却」することでまとまったお金を得ることも可能です。
借地権の売却について、次の3つの項目から解説していきます。
- 借地権は地主の許可を得られれば売却可能
- 借地権の売却方法
- 第三者に売却する
借地権は地主の許可を得られれば売却可能
原則として、借地権の売却には地主の承諾が必須となっており、無断で売却した場合は契約解除の対象になります。
また、承諾を得る際は借地権価格の10%程度の「譲渡承諾料」を支払うのが一般的です。
ただし、後述しますが「地主自身に借地権を売却する」場合は承諾と譲渡承諾料は必要ありません。
借地権の売却方法
借地権を売却する際は、方法として次の2つが挙げられます。
- 地主に売却する
- 第三者に売却する
地主に売却する
地主への売却は、最もスムーズな借地権の売却方法といえます。
先述の通り、土地の貸主である地主自身に売却することから、承諾を得る手間や承諾料が不要になるのは大きなメリットです。
地主からしても、「自分の所有物でありながら自由に利用できなかった土地を取り戻せる」という構図になるため、前向きに検討してくれる場合も少なくありません。
ただし、地主に借地権を買い取る意思と資金力があることが条件であるため、売買が成立しない場合も多いという点には注意しましょう。
なお、この方法は実質的に土地を地主に返還する形になるため、売買契約書ではなく「土地変換に関する合意書」を締結するケースもあります。
第三者に売却する
地主に承諾を得た上で、借地権を取り扱う買取業者に買い取ってもらう、もしくは専門の仲介業者に借地権の買主となる第三者を仲介してもらうという方法も存在します。
▼借地権売却における買取業者と仲介業者の比較
| 売却方法 | メリット | デメリット | 売却金額の相場 |
| 買取業者への売却 | 借地権をスピーディーに現金化できる。 | 市場価格に比べて売却金額は大幅に下がる。 | 更地価格の50%以下 |
| 仲介業者を通じた 第三者への売却 | 借地権を高額・好条件で売却できる。 | 契約までに2~4週間程度の時間が必要になる。 | 更地価格の60%~70%程度 |
上記を参照し、現金化のスピードを重視したい方は買取業者、できる限り高額・好条件で借地権を売却したい方は仲介業者と、優先したい目的に応じた業者を選びましょう。
地主の許可が得られない場合は「借地非訟」を検討する
借地権の売却に関して、どうしても地主の承諾が得られない場合、「借地非訟」という法的手段を利用できます。
借地非訟は、借地借家法第19条に基づき、「借地人が裁判所に対して地主の承諾に代わる許可を求める手続き」のことです。
地主側に正当な理由がない限り、申し立てが却下されるのは非常に稀で、多くの場合裁判所は最終的に地主に代わる借地権売却の許可を出します。
ただし、借地非訟が終わるまでには半年~1年程度の時間が必要で、相応のお金も必要になります。
そのため、借地非訟はあくまで最終手段と考え、検討する場合は事前に弁護士や不動産会社に相談しましょう。
まとめ
借地権を相続したら、ご自身のライフプランや経済状況・地主との関係を踏まえ、契約を更新するかしないかを慎重に決定しましょう。
そして、更新する場合は契約や登記状況の確認や地主との関係構築を抜かりなく行い、また更新しない場合は速やかに売却の検討を進めることをおすすめします。
センチュリー21中央プロパティーは、借地権の売却専門業者です。
社内弁護士と経験豊富な借地権の専門家が常駐しており、これまで多くの借地権売却をサポートしてまいりました。
仲介手数料や弁護士費用は無料です。
相続した借地権でお悩みの方は、ぜひお気軽にお声がけください。

地主とのトラブル、借地権の売却にお悩みの方は、ぜひ当社の無料相談窓口をご利用ください!「借地権のトラブル解決マニュアル」では、トラブルの対処法や当社のサポート内容を紹介しています。ぜひご覧ください。
この記事の監修者
代表取締役 /
宅地建物取引士
CENTURY21 中央プロパティー 代表取締役/宅地建物取引士
都内金融機関、不動産会社での経験を経て、2011年に株式会社中央プロパティーを設立。長年にわたり不動産業界の最前線で活躍するプロフェッショナル。
借地権の売買に精通しており、これまでに1,000件以上の借地権取引や関連する不動産トラブル解決をサポート。底地や借地権付き建物の売却、名義変更料や更新料の交渉など、複雑な借地権問題に従事。
著書に「地主と借地人のための借地権トラブル入門書」など多数の書籍を出版。メディア出演やセミナー登壇実績も豊富で、難解な相続不動産問題も「わかりやすい」と説明力に定評がある。