借地権の相続に遺言はどう影響する?登記手続きと注意点を解説
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借地権の相続に遺言はどう影響する?登記手続きと注意点を解説

借地権の相続に遺言はどう影響する?登記手続きと注意点を解説

遺言書にしたがって借地権を相続する場合、どのように手続きを進めればよいのでしょうか。

本記事では、遺言書がある場合の借地権相続の流れや登記、地主への承諾料の有無など、トラブルを防ぐポイントをわかりやすく解説します。

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借地権は財産として相続の対象になる

借地権とは、地主に地代を払って土地を借り、その上に建物を建てて利用するための権利です。

この借地権は財産として相続が可能であるため、遺言書の財産目録にも記されます。

地域によりますが、多くの借地権は更地価格※の50〜70%程度の価値を持つことも多く、所有権ではないとはいえ資産価値は決して無視できません。

そのため、遺言書で借地権の相続人を指定することは、遺産分割トラブルを防ぐ上で有効な手段といえます。

※土地の上に建物などが建っていないと仮定した状態の純粋な土地の市場価格のこと

借地権相続時に遺言書がある場合とない場合の相続手続きの違い

遺言書の有無で、手続きの進め方は以下の通り大きく異なります。

  • 遺言書がある場合
    原則として遺言に従って財産相続するため、相続人全員での遺産分割協議が不要。手続きの時間や精神的負担を軽減できる。
  • 遺言書がない場合
    相続人全員で「遺産分割協議」を行い、誰が取得するかを決めなければならない。意見が対立し、トラブルに発展するリスクあり。

ただし、相続人全員の同意がある場合は、遺言書の内容通り相続を行わずに遺産分割協議を開く場合もあります。

特に、下でご紹介する「共有名義での相続」は、あえて遺言書の内容に沿わず協議した方がよい代表例です。

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【重要】借地権は特定の1人が相続するようにする

借地権を含む不動産は、現金のようにきっちりと分割することが難しいため、複数人で相続する場合は「共有名義」という形で各々が不動産に対する権利の割合(持分)を持つことになります。

しかし、複数人で借地権を相続した場合、建物の建て替えやリフォーム、賃貸物件化、さらに売却など、大規模な変更・処分には共有者全員(あるいは過半数)の同意が必要になります。

もし一人でも反対すれば手続きが進まないため、共有者間で意見が対立し、親族間トラブルに発展するケースが後を絶ちません。

こうした活用・処分の要望は共有者同士で対立することが多く、高確率で将来のトラブルの火種になります。

遺言書の3つの種類

借地権の相続時には、次の3つのうちどの種類の遺言書であるかにより、必要な手続きが異なります。

  • 自筆証書遺言による相続(検認が必要)
  • 公正証書遺言による相続(検認不要でスムーズ)
  • 秘密証書遺言による相続(検認が必要)

自筆証書遺言による相続(検認が必要)

自筆証書遺言は、自筆証書遺言は、被相続人が原則として全文を自筆した遺言書です(財産目録はPC作成も可)

遺言者(遺言書を遺す人)が任意の場所(自宅・銀行の貸金庫・司法書士に預けるなど)に保管する場合と、法務局に申請して保管している場合があります。

そのため、遺言書が法務局にない場合は自宅を探したり知人・銀行などに所在を尋ねる必要があります。

自筆証書遺言を発見しても、そのまま勝手に開封することは許されず、家庭裁判所で「検認(内容の確認手続き)」を受けなければなりません
検認をしないと、相続の手続きを進めることができないためです。

ただし、法務局で保管されていた場合は検認不要となっています。

公正証書遺言による相続(検認不要)

公正証書遺言は、公証人という法律の専門家が2名以上の証人の立ち会いのもと作成する遺言書です。

相続人は公証役場の検索システムを利用して、遺言書の有無を確認することができます。

原本が公証役場で厳重に保管されるため、紛失や内容改ざんのリスクがなく、家庭裁判所での検認手続きが不要となっています。

相続発生後は、検認を待たずにすぐ不動産の名義変更や地主への連絡に着手できるため、手続きの迅速さが求められる借地権などの相続において非常に利便性の高い形式です。

秘密証書遺言による相続(検認が必要)

秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしたまま封印し、公証役場で「その遺言書が存在すること」のみを証明してもらう形式です。

自筆証書遺言と同様に遺言者が自分で保管するため、相続発生時には相続人が自宅や貸金庫などを探してみる必要があります。

実務上利用されるケースは極めて稀ですが、発見された場合は自筆証書遺言と同じく家庭裁判所での検認手続きが必要となります。

遺言書がある場合の借地権相続の流れ【5ステップ】

遺言書に基づいて借地権を相続する一般的な流れを、次の5つのステップに沿ってご紹介します。

  1. 遺言書の確認・検認
  2. 地主への連絡・通知
  3. 相続登記に必要な書類の収集
  4. 法務局での建物名義変更(相続登記)
  5. 地主との契約関係の確認

なお、遺言者の確認や書類収集、登記手続きなどは専門的な知識が必要になる場面が多いため、司法書士に依頼するのが一般的です。

Step1.遺言書の確認・検認

まずは、遺言書の有無とその種類を確認します。

公正証書遺言なら即手続き可能ですが、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は家庭裁判所で検認を受けます。

検認には時間がかかることがあるため、被相続人が亡くなったらすぐに対応することが重要です。

なお、借地権を共有名義で相続する旨が記載されている場合は、遺言書に従わず後述の「遺産分割協議」を開くことをおすすめします。

Step2.地主への連絡・通知

遺言書の確認と並行して、借地権を相続する旨を速やかに地主へ連絡します。

相続時に地主の承諾は法的に不要ですが、無断で名義を変えると相手方の心証を害してしまい、後々のトラブルの元にもなりかねません。

今後の地代支払いの確認も含め、必ず一報を入れるようにしましょう。

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Step3.相続登記(建物)に必要な書類の収集

借地上の建物の名義変更(相続登記)に必要な書類を集めます。

遺言書がある場合は、遺産分割協議を行うケースに比べ、戸籍謄本などの収集範囲が少なくて済むという特徴があります。

とはいえ、知識がないと書類収集は難しい場面が多いため、先述の通り司法書士に依頼するのが一般的です。

Step4.法務局での建物名義変更(相続登記)

書類が揃ったら、管轄の法務局で建物の相続登記を申請します。

これにより、第三者に借地上の建物の所有者(借地権者)であることを主張できるようになります。

なお、現在は相続登記が義務化されており、理由なく怠ると10万円以下の過料を課される可能性があるため注意してください。

Step5.地主との契約関係の確認

相続登記が終わったら、地主と契約内容を確認します。

契約書の名義書き換えを求められることがありますが、新規契約を結び直す必要はなく、従来の内容が引き継がれるのが原則です。

センチュリー21中央プロパティーでは、社内弁護士が常駐しており、契約書に不利な点がないか法的にチェック可能です。地主様からの無理な要求に対しても、専門家がお客様の権利を守ります。

借地権の相続で地主の承諾や承諾料は必要?

配偶者や子供など、「法定相続人」が借地権を引き継ぐ場合は法律上の相続にあたり、地主の承諾や承諾料の支払いは不要です。

相続時に地主から承諾料や名義変更料などの一時金を要求された場合は、支払い義務がない旨を冷静に伝えましょう。

それでも強硬に支払いを求められるようなことがあれば、安易に受け入れず弁護士や借地権専門の不動産会社などの専門家に相談することが大切です。

また、繰り返しになりますが、承諾を得なくて良いからといって「相続した旨の連絡」をしないのは推奨できません。
地主の心証を損ねてしまうと、将来的な建て替えや売却の承諾を得るのに苦労することもあるため、挨拶を兼ねた連絡は必ず入れるようにしましょう。

なお、法定相続人以外(孫や知人など)へ譲る場合は相続ではなく「遺贈」となり、この場合は地主の承諾と承諾料の支払いが必要になります。

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借地権の相続と遺言書を巡る注意点

借地権の相続と遺言書を巡る注意点として、次の2点をご紹介します。

  1. 遺言書の内容に納得できない(遺留分侵害額請求)
  2. 遺言書がない場合は遺産分割協議が必要

注意点①:遺言書の内容に納得できない(遺留分侵害額請求)

相続の際、遺言書による指定があればそれに従うのが原則ですが、最低限の取り分(遺留分)を侵害された相続人は、相続後に「遺留分侵害額請求」という法的手段で金銭的な清算を求めることが可能です。

例:「全財産を長男に遺す」など極端な遺言だった場合は相続後に遺留分侵害額請求が可能

相続財産が借地権を含む不動産のみだった場合も、遺留分侵害請求をするときは不動産の持分ではなく相当額の金銭を受け取るという形になります。

注意点②遺言書がない場合は遺産分割協議が必要

そもそも遺言書がない場合は、借地権を含む遺産は相続人が共有する状態となるため、これを各々の財産として分けるための「遺産分割協議」を開く必要があります。

これは、相続人全員が参加して「誰がどの財産をどのくらいの割合で相続するか」を決める協議です。

先述のように、遺言書の中で借地権を共有名義で相続する旨が記載されている場合などは、遺産分割協議によって誰か1人が単独で相続することを決めるのが重要です。

協議成立後は、「遺産分割協議書」を作成し、全員が署名・捺印を行います。
遺産分割協議書は後の相続登記でも必要になるため、司法書士に作成を依頼することを推奨します。

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まとめ

借地権を含む財産相続には、遺言書の内容が大きく関わってきます。

被相続人が亡くなった、すぐに遺言書の有無を確認し、司法書士などの専門家に相談しながら迅速に手続きを進めることが大切です。

ただし、遺言書の中で「借地権を複数人の共有名義で相続する旨」が記載されていた場合は、将来的なトラブルを避けるため、遺言書通りではなく遺産分割協議によって誰か1人の単独名義で相続することを強く推奨します。

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借地権と相続・遺言に関するよくある質問

Q1.遺言書で借地権を相続しましたが、地代の支払いはどうなりますか?

被相続人の死亡時点から義務は承継されるため、早急に地主へ連絡し、支払方法の確認や変更手続きを行ってください。

Q2.借地権の相続手続きを専門家に依頼する場合の費用相場は?

なお、センチュリー21中央プロパティーで借地権のご売却を進める場合、相続登記費用や残置物処分費用などは全て無料です。

買主側が諸費用を負担する仕組みで手取り額を最大化できますので、相続の際はぜひご検討ください。

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この記事の監修者

永田 泰伸ナガタ ヤスノブ

司法書士

司法書士・司法書士ALBA総合事務所 代表
平成16年に司法書士試験合格以来、一貫して司法書士業界で研鑽を積む。東京司法書士会新宿支部所属。

特に借地権に関する登記手続き(借地権設定登記、名義変更、解除など)において、豊富な実績と深い知見を持つ。複雑な借地権の権利関係を整理し、スムーズな登記を実現する専門家。

また、不動産登記全般(共有持分、権利変更など)や、会社設立などの商業(法人)登記にも精通。相続手続きや債務整理の経験も活かし、多岐にわたる法的ニーズに対応可能。

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